【インタビュー】荒木哲郎監督が語る「甲鉄城のカバネリ」…2016年春ノイタミナ大注目作品の魅力とは

TVアニメ『甲鉄城のカバネリ』は荒木哲郎監督とWIT STUDIOが再びタッグを組んだオリジナルアニメーション作品だ。荒木監督に単独インタビューを敢行し、意気込みや見どころを語っていただいた。

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産業革命直後。蒸気機関の発達した世界で、極東の島国、日ノ本(ひのもと)の人々は「駅」と呼ぶ砦を作り不死の怪物“カバネ”に対抗していた。駅を行き交うことができるのは「駿城(はやじろ)」と呼ばれる蒸気機関車のみ。ある日、主人公・生駒(いこま)が暮らす顕金駅に、駿城のひとつ「甲鉄城」が到着するーー。

フジテレビ・ノイタミナで放送されたTVアニメ『ギルティクラウン』から5年。一大ムーブメントを巻き起こしたTVアニメ『進撃の巨人』の大ヒットも記憶に新しい荒木哲郎監督とWIT STUDIOが再びオリジナルアニメーション作品を手がける。
TVアニメ『甲鉄城のカバネリ』は荒木監督をはじめ、シリーズ構成に『コードギアス 反逆のルルーシュ』『革命機ヴァルヴレイヴ』の大河内一楼、キャラクター原案に『超時空要塞マクロス』の美樹本晴彦が参加する和製スチームパンク・アクション作品だ。
アニメ!アニメ!ではこの度、荒木監督に単独インタビューを敢行。企画の成り立ちから本作品にかける荒木監督の意気込みや見どころなどを語っていただいた。
[取材・構成:細川洋平]

『甲鉄城のカバネリ』
http://kabaneri.com/

■ アクションもので時代もの、“和製スチームパンク”はこう誕生した

ーまずは本作の企画に至った経緯を教えてください。

荒木哲郎監督(以下、荒木) 
ずっと一緒にやってきたWIT STUDIOの中武哲也、和田丈嗣とオリジナルをやりましょうと。その時の条件は“アクションアニメーターを主体にした作品”ということ。あとは自由にやらせていただきました。シナリオライターは『ギルティクラウン』の時にお互い満足できたという実感もあったので、大河内さんにお願いしようと決めていました。

ーまずは4人が集まったと。

荒木 
そうです。そこから女性キャラクターが活躍するアクションものをイメージしました。小山ゆうさんの『あずみ』のような少女剣士ものが、念頭にありました。さらに主人公は過去にトラウマを抱えた男子にしました。負け犬がリベンジする話と決めました。
自分の得意なものを混ぜるなかで、今のかたちになっていきました。俺やWIT STUDIOには最先端な目新しいものでなく、王道が向いているだろうというのもあります。王道のよさが見える企画です。


ーたしかに時代物というジャンルはオリジナル企画としてかなり珍しいですね。

荒木 
時代物のファンタジーにすると、リアルな世界では「そんな人間いないよ」と突っ込んでしまう話も自然に見ることができるんです。それに同じクールで放送される作品に競合がいない場所まで行かなければと思い、王道で普遍的なものという大きなスローガンを掲げました。

ー“和製スチームパンク”という言葉も目新しいですね。これは早い段階で決まったのでしょうか。

荒木 
戦闘するヒロインが次々と敵をなぎ倒す話がまずありました。次に敵を考えました。ヒロインが倒しても殺人にならずに、かつ倒すことに爽快感がある存在。それで、ゾンビに。それが決まるのと同じタイミングで産業革命という時代も決まり、“時代物でゾンビもの”という枠ができました。
その時に俺が「移動要塞で逃げる話にしよう」と言ったんです。例えばトレーラーで逃げるのはゾンビものの定番です。ファーストガンダムのホワイトベースみたいな雰囲気も頭にありました。その中での人間関係や葛藤が、徐々に育まれていく話です。
時代設定から移動要塞は蒸気機関車ということになって、その瞬間に“和製スチームパンク”という呼び名が降ってきました(笑)。“和製スチームパンク”は、俺が決めたわけじゃなくて、結果としてそういうレッテルが貼りやすくなった。

ー移動要塞ということはロードムービー的な、主人公たちがいろいろな駅(都市)を訪れていくという物語になるのでしょうか。

荒木 
物語の大きい輪郭としては“金剛閣”という終着駅に行く話ですね。その中に鬱憤を抱えている主人公の男の子がいて、少女との出会いをきっかけにして運命的な選択をする。


■ 当たり前には乗らない選択

ー荒木監督にとって『ギルティクラウン』以来のオリジナル作品です。相当な力を入れておられると思います。

荒木 
勿論力は入っていますね。『ギルティクラウン』とほぼ同じチームでやっていますが、『ギルティクラウン』で予想以上にうまく行ったところを取り入れています。一方でそうではなく、自分なりに反省があったとこともありました。「もっとうまく行けた」と思ってきたところは、もう一回やってみせようよと。『甲鉄城のカバネリ』では明らかにそれができている。

ー手応えは、かなりあると。

荒木 
ありますね。おもしろいですよ。

ー1話からかなりこだわった画面になっていますね。

荒木 
そこはどんなものでも真面目に描いてしまう人が身の回りにたくさんいるものですから(笑)。どんな破天荒な設定もすごいクオリティーの絵で描かれると、まるで本物みたいな説得力を持つんですよ。

ースタッフの布陣もかなり豪華ですね。

荒木 
狙って豪華にしているわけではないんです。今までご一緒して自分と気が合ったかたにお願いした感じです。ただ美樹本晴彦さんは、今回の企画に重要な存在として特別にお願いしました。美樹本さんは時代の変化に負けない普遍的な魅力の絵で、確固たる世界観をお持ちである。ぜひにとお願いしました。結果は、狙った通りのビジュアルが実現できたと思っています。


ー美樹本さんに何か特別なオーダーはされましたか?

荒木 
「今、描かれている美樹本さんの絵が僕は好きなんです」って話をしました。イラスト集や美樹本さんのマンガでイメージを伝えたりしました。

ー美樹本さんのキャラクターが躍動している画面は感動させますね。

荒木 
魅力的なことは勿論、「絵柄が他の作品に似ないこと」も大切です。いま、みんなが当たり前のように乗っている船には乗らない方がいいんですよ。まあヒットしないと説得力のない話ですが(笑)

ーヒットするかしないか、気にされていますか?

荒木 
めっちゃしますよ。それは金をガッポガッポ儲けたいとかじゃなくて、僕たちは人の心を掴むにはどうすればいいのかをずっと考えているわけですから。その証拠としてのヒットは心底求めます。自分なりの答えを「こうだ!」と出して結果を待つ。はらはらします。

ー「みんなが当たり前のように乗っかっている船には乗らない方がいい」、という話は、本編1話で主人公の生駒が世の中の価値観に疑問を持っているのとも重なりますね。

荒木 
2話以降でもっとグッと来ると思うんですよ。本当に破壊力があるのは2話だと僕は思っているので、早く見てほしいです。

「甲鉄城のカバネリ」を荒木哲郎監督が語る 2016年春ノイタミナ大注目作品インタビュー

《細川洋平》

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