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岡部啓一氏(写真左)と齊藤陽介氏(写真右)
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――今回のgamescomに合わせてテーマソングが2バージョン公開された訳ですが、それはどのような意図があってのことなのかお話し頂けますか?
岡部氏:先ずは何か新しいエッセンスでもって、『NieR』を表現したいというところですね。前作ではエミ・エヴァンスさんに歌って頂きました。皆さん『NieR』と言えばエミさんの印象が強いかと思うんですが、そこは今回、楽しみに待って頂いている皆さんに何かサプライズを届けたい、という思いがありました。そこでジュニーク・ニコールさんのバージョンが先行リリースとなりました。
そして今回エミさんのバージョンを聴いてもらうことで、同じ曲でエミさんが歌うと、今までと変わらない、思っていた通りの『NieR』があると認識頂いて。そうやって順を追って聴いてもらうことで、世界観の広がりを強く感じてもらえればと。エミさんの『NieR』も、ジュニーク・ニコールさんの『NieR』も聴いてもらうことで、よりインパクトを与えられればと思いました。
――今回のgamescomでは海外メディアからも多くインタビューを受けられてると思うんですが、どのような質問が多かったですか?
岡部氏:とにかくドイツでの『NieR』熱を凄く感じましたね。
齊藤氏:反応が熱くて、本当に音楽だけに関して言えば、直ぐにでもこっちでコンサート出来るんじゃないかというくらいの期待感を感じられました。実際にコンサートをしてくれってお話が来てたりもしますしね。本当世界共通どこへ行っても岡部さんは褒められるっていうね(笑)。
岡部氏:ドイツの人達にまで気を使わせてるなってところですね(笑)。まあでもそういった気持ちはありがたく受け止めさせて頂こうかと。
――確かに『NieR』の楽曲は海外のコンサートホールにばっちり似合いそうな感じはありますよね。
齊藤氏:似合いますね。それで本当にやろうやろうなんて動き出しちゃったら、それはそれで絶対大変な作業になるってのが目に見えてますけどね(笑)。
岡部氏:本当大変でしょうねえ。春に日本でコンサートをやらせて頂いた時も大変だったんですが、自分よりもさらに周りの方、スタッフの方の作業を見ていて「ああ、こんなに大変なのか」とリアルに感じましたね。それが海外でのコンサートとなると、機材から何から全部運んでやらないといけないし、そりゃ半端ない大変さだろうなって思いもありますから、なかなか難しいかもしれないです。まあ夢だけは勝手に持っておきたいなと思ってます(笑)。
齊藤氏:先ずはね、『NieR:Automata』が沢山売れればってところですよね(笑)。
――E3でお話しを伺ったときに、gamescomまでには楽曲の製作を全部終わらせないといけないといったお話しでしたが、実際はいかがですか?終わりましたか?
岡部氏:一応ね、一通りは終わりました。本当ドイツに発つ日の朝ギリギリまでやってました。で、何とかここまでってやって、スタッフに投げてきました(笑)。まあそうやってひとまず終了はした感じなんですが、ドイツに来てみると日本のスタッフから「このデータはこんな具合になってますが、これはこれで大丈夫なんですか?」ってメールが押し寄せてます(笑)。まあでもレコーディングは一通り終わって、あとは歌を入れて完成ってところまではきています。
――進捗としては予定通りと言ったところでしょうか?来年頭の発売予定と言うことですが、納期的には大体こういった感じなんでしょうか?
齊藤氏:どうかなあ?私の知る限りではまあ順当じゃないかな。早くもないし、遅くもないと(笑)。ただ『NieR』の場合ですと、ゲーム内で鳴らしてみてからの調整が大きいので。ただトリミングかけて鳴らしてループさせるっていうようなもんじゃないんですね。予定としてはもうちょっと前に調整に入ってたはずなんですけど、それからしたら、まあ2ヶ月押しているという感じでしょうか。普通に楽曲だけ発注してナンバーだけ振ってもらって、それをゲーム内で鳴らすだけってことなら時間的にも全然余裕なんでしょうけど、『NieR』に関してはやっぱり、音楽の使い方から見てもそんな簡単じゃないんじゃないかなと。
岡部氏:まあスケジュール的に、本当ヨコオさんが大変な思いをする流れになっちゃってるんじゃないかと。申し訳ないですね。
齊藤氏:まあ最後はクオリティのチェックですからね。
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――ビジュアル面についての質問なのですが、今回はメインキャラクターのデザインを『FF12』等で知られる吉田明彦氏が担当されている訳ですが、そこに至った経緯を教えて頂けますか?
齊藤氏:はい。単純に企画が上がった時にキャラクターデザイナーを探していて、実は前作のキャラクターデザインを担当した人に連絡を取ったところ肘を壊していましてね。で、転職して今は開発側になっていたんです。3Dモデリングとかもやっていて。で、困ったな、まあ話としては新しい『NieR』だし、新しいデザイナーさんにお願いしようかな、となっていました。その時に、吉田さんがスクウェア・エニックスに在籍してた時には、一緒に仕事をしたことなかったので、仕事をしてみたいなと。じゃあ駄目元で吉田明彦さんにお願いしてみようかなってなったんです。
――それは何か根拠があってのご依頼ですか?
齊藤氏:『NieR』の世界観に合う人を探していて、吉田さんの絵って色んなタッチはあるんですけど、ハマるんじゃないかな?ってずっと前から思っていたんです。と言うのも『NieR』のファンの方って、作品に対して思い入れを強く持ってくれている方が多くて、ハマる人とハマらない人へのジャッジが難しいと思うんです。その中でも吉田さんであれば、前作からのファンの方にも喜んで頂けるものを仕上げてくれるんじゃないかと。そう思った時にヨコオさんや製作スタッフに「吉田明彦さんはどうだろうね?」って相談したところ、やっぱり皆が好きで賛成してくれて、じゃあこれはもう頼むしかないかなと。
それで吉田さんに会いに行ったら、現在はCygamesさんの系列のCyDesignationさんに所属されていて、Cygamesさんの渡邊社長に、駄目元で相談に行きました。ところが、渡邊社長が実は『NieR』のファンで、本当に駄目元で、私とヨコオさんと2人で行って話してみたらOKを貰った、というところです。
――吉田明彦氏がデザインされたキャラクターはメインキャラのみでしょうか?
齊藤氏:2Bと9SとA2と言うメイン3体のキャラクターがそうですね。それとサポートメカのポッドも吉田さんのデザインです。その他のキャラクターは吉田さんの監修のもと、吉田さんが在籍しているCyDesignationさんで描いて貰っています。CyDesignationさんの仕事は本当に素晴らしくて、細かなディテールの部分や光の加減までが、まるでイラストそのままでゲームの絵として仕上がってくるという感じで、本当ありがたいなと思っています。
――『NieR:Automata』が出ることで、また前作に対する熱が高まったり、前作未プレイのユーザーの方らの興味が沸いてくると思うのですが、例えば前作のHDリメイクとかは計画ありますか?
齊藤氏:よく話には出るんですけど、HDリメイクをやっている時間があったら『NieR:Automata』をしっかり作れという声の方が多いんじゃないでしょうか(笑)。これが売れたら可能性はないことはないんですが、HDリメイク自体かなり手間がかかる作業ですので、そこは相談が必要なところですね。
――今回のgamescomに合わせてSteam版の発表がされたみたいですが。
齊藤氏:そうなんですよ。日本ではそうでもないかもしれませんが、海外はやはりPCが強い。特にドイツはPCゲームが盛んだと聞いていたので、今回Steam版を発表させて頂きました。
――Steam版は日本でも出すんでしょうか?
齊藤氏:出す予定です。今回は海外向けの発表だったので、日本での正式アナウンスはまだですが。
――4K対応ですか?
齊藤氏:4K対応も検討はしています。ただ60fps動作が前提ですので4Kを60fpsで動かすとなると、対応するマシンスペックの問題が出てくると思います。PCの4K対応は推奨スペックを判断してからの話になりますね。
――オンライン要素などは何か考えていらっしゃいますか?
齊藤氏:色々と話はありますし、例えば共闘出来るモードを作って欲しい、なんてリクエストをもらったりはしているのですが、今のところ搭載の予定はありません。ただネットに繋げることで、間接的に何かの体験が得られるような仕組みは考えています。
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――DLCなどの予定はありますか?
齊藤氏:やりたいという思いはありますね。ただ今のところは具体的にお話し出来るものはないです。今は先ず全世界同時発売という目標があって、それに対して全世界のバージョンを同じクオリティで出すという意識で猛進しているところです。
――全世界同時リリースという事ですが、例えば音声は日本語で字幕はフランス語といったことが可能なのでしょうか?
齊藤氏:そうですね。先ずボイスは日本語と英語の2つを収録しています。そして字幕は各国の言語を収録する予定です。日本語のボイスは、特にフランスのユーザーの皆さんが期待していて、前作でも日本語ボイスは残してほしいなんてリクエストがあったので、今回は是非対応したいという思いがあります。
――Steam版もPS4版に合わせての発売でしょうか?またXbox版の予定はありますか?
齊藤氏:Steam版もPS4版と同時に出したい気持ちはあります。ただ、今はPS4版を最優先で作業している感じですね。現状、Xbox版の予定はないです。今後の市場の様子を見たいと思います。
――今回はセーブ消去とかありませんよね......?
齊藤氏:そこはね、皆さんがそういうことを思えば思うほどそれが現実になっちゃうんで、あまりそう考えない方がいいですよ(笑)。
――『NieR:Automata』はビジュアルも音楽も一段と上がった、前作以上に素晴らしい仕上がりになるよう感じているのですが、意気込みは如何ですか?
齊藤氏:去年のE3で『NieR:Automata』を発表させてもらったんですけど、その時に思った以上の反響を頂きました。正直、私とヨコオタロウ的にはまあそんなに誰もびっくりしないんじゃない?と言う感じだったのが、蓋を開けてみたら全世界中で想像以上の反響を頂いていて、コンサートをやったらそれも凄い評判が良かったんです。なので、それを目の当たりにするにつれ、我々やプラチナゲームズさんも含めて、これは「やらんといかんぞ!」という気持ちで取り組んでおります。ユーザーの皆さんの期待には、100%で応えるべく頑張ってます。
今度の東京ゲームショウではもっと凄い、「これぞRPGだ!」といったトレイラーをお見せ出来るよう、頑張っているところです。東京ゲームショウを楽しみにしていて下さい!
――本日はどうもありがとうございました。
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齊藤陽介氏と岡部啓一氏お二方のお人柄とサービス精神で、ここには書けない際どい?お話も飛び出す楽しいインタビューとなりました。『NieR:Automata』はPS4で2017年初頭の発売予定。Steam版も、日本での正式アナウンスはまだですが、2017年初頭に発売を予定しているそうです。