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あの『スペースチャンネル5』がVRで体験できる――突如として発表された同タイトルの新展開に驚いたファンも多いことでしょう。記事への反響も大きく、インサイド編集部でもいち早くデモ版をプレイしレポートをお届けしました。
今後に期待が高まる同タイトルですが、新展開をVRにした理由、「ショー観覧」スタイルにした理由など、疑問は尽きません。そこでインサイドでは『スペースチャンネル5』のアシスタントプロデューサーで現グランディング代表取締役の岡村峰子氏と、同タイトルの担当ゲームディレクター吉永匠氏にインタビューを行いました。新展開までの経緯やVRに対するお二人の思い、そして今だから語れる開発当時の裏話など、盛りだくさんの内容でお届けします。
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――まずは、今改めて感じる『SC5』の魅力についてお聞かせください。
岡村峰子氏(以後岡村):あらかた15年経っているコンテンツですが、今ゲームショウで見ても古さを感じないなと。発売当時も「セガさん早すぎる」と言われていましたし(笑)
吉永匠氏(以後吉永):作っていた側が狙っていたわけではないんですけれどね。あとから動画だったり、作品とのコラボで知った世代がそう思ってくれるようです。
岡村:『SC5』自体はパート2以降新作を出していませんが、定期的に露出はしていて。『初音ミク』や『PSO2』等で知った方も多いみたいですね。
吉永:『ソニック&オールスターレーシング』ではボイスも撮り直しています。地味に露出が続いているのはありがたいことですね。先日、うららのfigma(販売元:MaxFactory)も発表になりました。そうそう、モロ星人のソフビが出たんですよ(販売元:ソフビ団)。ソフビの制作は独立した元『SC5』のアートディレクターを担当していた宮部が担当しているんです。
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お題の通りに並べたい!TGS2016では試遊のノベルティとして配布されました。
――Twitter(@Space_Channel5)もありますね
吉永:「キャラの露出やグッズ制作はしているけどトータルで情報出す場がないね」ということでおととしくらいから始めました。
――せっかくの機会なので、今だから言える『スペースチャンネル 5』の裏話もぜひ聞かせてください。
吉永:成り立ちの話からすると、『スペースチャンネル 5』(以後、SC5)の前にムービーを背景にしたアドベンチャーゲームを作ろうという企画が2つあったんです。パート1のディレクターの湯田さんとササキトモコさん(現在「東京ハイジ」として活躍、「ROOMMANIA#203」等を手がけた作曲家)と組んでいて。それの3つ目の時で「ミュージカルでやろう」という話になりました。体験ムービーのミュージカルアドベンチャーで、主人公は男性(すぐに女性になりましたが)。敵も硬そうなロボットだったんです。そのプレゼンが無事通過して、部署を転々としながらサンプルを作っていたんですが、ある日水口さん(水口哲也氏。『SC5』のプロデューサー)がやってきて「渋谷に部署を作るから来ないか」と誘われて。渋谷に惹かれて合流したんです(笑) そこでゲーム性も含めみんなで一回見直して、現在の形になってゆきました。
岡村:私も水口さんに「セガ来ない?」ってスカウトされて、「よくわからないけど行きます!」って(笑)不思議な縁とタイミングがうまく繋がって今の『SC5』になったという感じですね。チーム水口のミッションは新しいセガファンを獲得できるゲームをつくるというもので、私は元々音楽業界にいたんですが、そのタイミングでスカウトされました。いろんな業界から『SC5』を作るために人が集まったというか。そういう空気があの独特の世界観へと繋がったと思います。
――チームの狙い通りのヒット作が生み出せたということですね。
岡村:そうですね。でも当時は遊びながら作っていましたね(笑)
吉永:そんなことはないよ!(笑)
岡村:振り返ってみると時間をかけて開発できたこととか、遊びか仕事かわからない中でゲームを作らせてもらった経験は、今の自分の肥やしになっていると思います。
吉永:『SC5』の1曲ってすごくコストが高いんですよ。今の音楽ゲームは曲があって入力パターンを入れるんですけど、『SC5』はまずゲームデザインをしてそれに合わせて曲をカスタマイズするんです。音は全部後付けなので量産がきかなくて。
岡村:そうやってしっかり作った楽曲だから今聞いても新しいというか、古さを感じないですよね。
吉永:曲がしっかりしているから、曲があって、セリフがあって、踊りがあって、それだけでも成立するんです。見るだけでも楽しんでいる方達もいるわけで。
――観ていて気持ちいいですものね。パート2のギターのパートとか!
吉永:よくできてると思います。自分達でいうなというのもありますが、
一同爆笑
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岡村:きっかけはオーケストラコンサート(GAME SYMPHONY JAPAN)ですね。セガのゲーム音楽によるコンサートで、2年連続『スペースチャンネル5 (以後SC5)』を取り上げていただきまして……。
吉永:『SC5』のパートは笑い担当というか、現場に宇宙人がやってきて合唱団の人が踊らされて、それをうららがリポートして救出する流れがあるんです。
岡村:それに対するファンの皆様の反響がとても多くてですね。これだけ多くのファンが『SC5』を好きでいてくれて、新しい動きを待ってくれているのだという事を知り、制作に関わってきた責任としてそこに何か届けたいと思いました。ちょうど『SC5』も15周年を迎えましたし、吉永さんに「せっかくだから何かやろう」と相談し、VRでコンテンツ展開しようということになりました。
――新展開にVR を選んだ理由は何でしょう?
岡村:ここは『SC5』的なノリというか、「15周年に何かしようよ、じゃあVRがいいよね!」というテンションで(笑)。また、弊社(グランディング)内で今後VRに力を入れていこうという背景もありました。
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――『ウキウキ★ビューイングショー』では「ショー観覧」スタイルにしていますが、その理由は何でしょうか?
岡村:『SC5』について考えた時、「あの世界観がまず楽しいのではないか、まずはそこをしっかり作るべきではないか」という事になり、そこでVRだったら360度見渡せるので自由に作れるのではと思ったわけです。『SC5』のつるんとした質感や、未来っぽい世界観って、VRが持つ”ちょっと先の未来”っぽさと相性がいいんじゃないかなと。
――デモ版をプレイして思ったのですが、あえて現代風にリアルにしないというか、質感の部分を残していると感じました。
岡村:そこは気を遣いました。ずっと『SC5』を好きでいてくれた人が、ハイポリゴンのうららちゃんを見てそれを受け入れてくれるのだろうかと。例えば髪の毛がサラッサラに動くうららちゃんを見たいのかなって。
吉永:でも当時のものをそのまま持ってきたわけではなく、うららのモデルや背景は全部作り直しています。当時の思い出のままアップデートされたものを作ろうと意識しました。
岡村:「これは私の知っているうららじゃない」と思われてしまうと、作り手として間違えたものを届けてしまうことになるので。それにうららはポリゴン数の関係なしに独特の「生っぽさ」があると思うんです。それを大事に再現しなければと思いました。
――デモ版のお話が出たところで、デモ版の内容についてお聞かせください。
岡村:今回のデモ版はau次世代VRマルチコミュニケーションデモ「Linked-door」向けに特別参加させていただいたもので、『ウキウキ★ビューイングショー』を元にした、「Linked-door」スペシャルといった位置付けで考えています。実際に開発を始めている製品版では、『SC5』の世界にどうやって関わったらみんなが楽しくウキウキできるのかを、もっと掘り下げていきたいと思っています。
吉永:今回のデモは入力に関しても自由にしています。よくよく考えたら「宇宙人が来て踊らせている」って、意味がわからないですよね。なので、一応入力指示は入っています。ですが、実は、どんな動作でも反応するようにしてありますので、ゲームと同じにアップライトレフトと踊っても楽しめるようになっています。
吉永:今回初めてVRに触るお客さんも多いと思いますし 、ルールがわからなくても楽しめるものにしようと。コントローラーを渡せば、「これで何かをしなくては」と身構えると思うのですが、VRってコンテンツごとにルールが違うからプレイスタイルを強要できないんです。
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――デモをプレイして、うららと一緒に動くのがあんなに楽しいんだと驚きました。
岡村:ノリノリになりますよね。今回の出展ではHTC VIVEの特徴を活かしてグリーンバックで展示することで、ノリノリになっている生身の人間と『SC5』の世界が一緒になっているというのも、切り口として面白いなと思います。
吉永:グリーンバックの前で謎の機械(VR用ヘッドマウントディスプレイ)を頭につけて謎の棒(コントローラー)を持ってノリノリになっているって、傍からみたら 確かに相当おかしい人ですよね(笑)。でも『SC5』の中に入って一緒に写ると馴染むということを知りました。
――今回のデモはいつから制作に入っていたのでしょうか?
岡村:実はセガと『SC5』のVRの会議を正式にしたのは7月末なんです。オーケストラが7月にあって、そこで話が盛り上がって。
吉永:そろそろ本格的な開発に入ろうとしていたところ、お盆前に「KDDIさんとコラボできるよ」という話がきて。
岡村:TGSに合わせて大慌てで開発して、設営日の前日ギリギリまで調整してました(笑)
吉永:スペースポートは目コピだよね。
岡村:当時のデザインを思い出しながら目コピです。当時はまだ背景全てをポリゴンで作りきれずムービーでしか表現できなくて。なので、今回は「初めてポリゴンでスペースポート全体を表現するぞ!」 という意気込みで作りました。
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――今回のデモで得たものから『ウキウキ★ビューイングショー』製品版へのアイデアが生まれる可能性もありそうですね。
岡村:一般の方々にも体験していただける機会なので、いろんなご意見をいただき、「『SC5』の世界観をVRで切り取るなら何がベストか」を模索しながら作り上げていきたいなと思っています。
――登場キャラクターについては1、パート2の両方から出るのでしょうか?
岡村:15年ぶりのこのスペチャン祭りを盛り上げるためにも今回はそうしたいのですが、そこは吉永さんがいいよと言ってくれれば(笑)
吉永:私は楽しければいいと思います。細かいところだけど今回のデモ版に2のキャラクターのパインがいたり、舞台やうららの衣装は1だけど、2の入力や曲も登場しています。そこは楽しければいいかなって。
――個人的には踊り団にまた会いたいです。同窓会じゃないですけど、1とパート2を合わせた、お祭りゲームみたいな感じになるのかなと。
岡村:スペチャン祭り、いわばスペースフェスティバルとして、いろいろ考えたいですね。『ウキウキ★ビューイングショー』に限らず、この後もいろいろな仕掛けができたらいいなと思っています。
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――『ウキウキ★ビューイングショー』はVRを使い、新しい『SC5』の新しい魅力を伝えるものになりそうですね。
吉永:そうですね。時代が『SC5』に追いついたら、また逃げなきゃならないですし!
――何年か経って「やっぱりセガ早かったな」と言われるようなものになると。
吉永:また言われたいです(笑) でも実はすごいコンプレックスがあって。パート2ってすごくよくできていて。あれに向き合いたくないというか
岡村:向かい合っていきましょうよ(笑) でもパート2で出し切った感は、当時、正直いうとありましたからね。
吉永:今も動画で見返すのですが、あのパート2を踏まえた上で次って何だろうって。新ハードが発表されたなら当然それに合わせて企画書も書くしプレゼンもするのですが、うまくハマらないというか……。
岡村:その中でVRという変化球が来て、道となってくれればという感じです。
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――ここで『SC5』のネタとは少し離れてしまいますが、お二人はVR が持つ魅力や可能性をどのように考えているのでしょうか。
岡村:一瞬で別世界にいける感じがわかりやすいですね。仕事とかで疲れで寝る前にちょっとハッピーなコンテンツを見て癒されて寝たいなあ…みたいな。ゲームというジャンルにこだわらない新しい体験を提供できるツールになるのではないかと感じています。なので『ウキウキ★ビューイングショー』もまずはVR体験の入り口としてハッピーな感じを楽しんでもらいたいなと。
吉永:VRを家庭用として考えた場合、あまり気負わないで体験でき、しかもインタラクションも感じられるツールであればいいなと思います。スマートフォンのゲームのような気軽さというか。コンシューマーのゲームは間違えると0で、正解すると10、20…とスコアがあがっていく設計だけど、スマートフォンのゲームは基本が100、うまくいくと110、120…と上乗せされていくゲームデザインが多いと考えています。VR ではそういうところを楽しむツールになるのかなって。ちょっとポジティブな体験ができて、気負わずに楽しめるコンテンツがあるといいんじゃないかなと思います。
岡村:とてもプライベートなハードですよね。ゲームショウのような会場でやるのはちょっと恥ずかしいと思うのですが、家で気兼ねなしに楽しむという観点で見ればいろいろなコンテンツが作れそうだなと思います。
吉永:あとVRでは「触りたい」という感覚を強く意識しました。持ってみたい感覚ってコントローラーでは感じられないので。
岡村:『SC5』をVRにした場合、うららがリポートをしているという流れは変えず、プレイヤーとしてどういう介入をしたらワクワクできるんだろうって思いますね。触るという行動もその一つ。こちらが『SC5』の世界にあるものに触れると、それに合わせてうららが反応する、みたいな。
吉永:VRではリポートの裏側のドラマが体験もできると面白いかなって。
――VRハードや発売日の続報はいつ頃になるのでしょうか?
岡村:まだ未定です。それぞれのハードの良さが『SC5』の世界観と出会ったならどういった化学反応を起こすか検討しながらつくりたいなと思っています。引き続きの情報は心待ちにしていただければ嬉しいです。
吉永:今回のデモ版の反応で変わってくるかと。
岡村:色々な可能性を模索しながらお祭りを楽しもうというか。『SC5』の世界観に興味をもってくれる方も増やしたいって思います。
―――本日はありがとうございました。
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時代の先を行っていた『スペースチャンネル5』。VRという最先端の技術は『SC5』にふさわしい舞台である一方、安易にハイポリゴンにするのではなく、当時の世界観を第一に考える開発者サイドの想いが伝わるインタビューでした。『SC5』らしい、「やってくれたな!」という展開を期待しつつ、続報を待ちましょう!