■それは、単なる悪夢でなければならなかった
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白昼夢。それは覚醒時に体験する、夢に類似した意識状態を指す。夢や空想よりも直接的で生々しい現実感を持ち、――時には快感や痛覚までも伴う。
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少女たちは、以前から奇妙な白昼夢に悩まされていた。口では説明しようのない、奇怪な夢。あるいは淫靡でおぞましい妄想。悪夢は少しずつ彼女たちの精神を摩耗させ、蝕んでいく。
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いびつで凄惨な光景が広がる白昼夢。煤払涼は4人の少女たちと交流を深めるうちに、それぞれが抱える悪夢や苦しみを共有することになる。生まれて初めて得た理解者に彼女たちの心は救われたかに見えた。
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――しかし、それはこの地に千年続く“呪い”を成就させるのと同義でもあった。
「死ぬことが許されたお前が、羨ましい。無力さを呪いながら、去れ」
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■平和な地方都市「須々田」
本作のストーリーは地方都市「須々田」を舞台に展開していく。そこに暮らす人々は新参者である煤払涼を優しく受け入れるが、彼はやがてこの地に隠された忌まわしい過去を目の当たりにする――
■須々田高校
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涼や椿子たちが通う県立高校。須々田は本作の舞台となる地域一帯の名称。以前は煤田とも呼ばれていたらしい。
■シャチホコ部
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正式名称は「社会地域奉仕貢献部」で、ボランティアや地元の催し物の手伝いが主な活動。部員は鼎、椿子、莉里杏、十重、そして新たに入部した涼と夏也の全6名。雛形と部長の鼎がのんびりとした性格のため、正式名称の硬さに反して部内の雰囲気はゆるい。
■祝元神社
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黒神家が代々宮司を務める神社。歴史は古く、平安時代に建立されたと伝えられている。人形供養でも知られており、人形神社の異名も。
■鹿神比古命の伝承
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須々田に伝わる民話。その昔、土地神の鹿神比古命は飢饉に苦しむ人々を憐れみ、祝福の煤を撒いて「金の鹿」を遣わした。金の鹿がもたらした富のおかげで、この地は大いに栄えたと言われている。
■須々田駅、南口前にて
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『駅ってさ。何気に超メジャーでポピュラーな自殺スポットだと思うんだよね』
雑踏のざわめきの中から、不意にひとつの声だけとチャンネルが合うことがある。その携帯で話しているっぽい、若いOLらしい女性の声も、そんなものの一つだった。
『どんな自殺の名所もさ。結構、行くの大変じゃん? だって思わない? 富士の樹海とかで死ぬ人って、どんだけ頑張ってるわけ?』
『樹海までの行き方調べて。電車乗って、乗り換えて乗り換えて、歩いて歩いて。フツー、死ぬ為だけにそこまでやるかね?』
ガールズトークを楽しむかのようのノリで、イカレた話をしていた。
『駅ってさ。誰もが日常に利用している場所なわけだよね。それで、電車を待っている時間って、自分を顧みるいい時間になるわけじゃん』
電車待ちのささやかな時間に、……ふと、死んでもいいかなと思い至るわけだ。確かに、駅は素晴らしい。死のうと思い立ったなら、死ぬ為の準備は何も必要がない。ただ、ホームの最前列から数歩、歩み出るだけでいい。
『ね? 最高の自殺スポットだと思わない? コンビニやカラオケくらいに身近でお手軽な、カジュアルな自殺スポットだと思うわけ』
自殺って、……もっともっと悲壮で重いものじゃなかったっけ。でも女は、死はもっと気楽に考えてもいいものだと言うのだ。……眠くてぼんやりとしているせいなのか、彼女の言うそれは、ものすごく斬新で新鮮な何かを気付かせてくれたように感じてしまう。
『自殺って言葉が、私は物騒だと思うんだよね。エステで、新陳代謝を改善して、新しいお肌を生まれ変わらせるのと、まったく同じ感じ』
『だから“自分殺し”なんて物騒な言葉じゃなくて、人生のリピュアとかってどうかな。ね、なんかステキな響きになったと思わない?』
その時、私は初めて、……彼女が私に向かって語り掛けていることに気付く。長い髪が印象的な、OL風のお姉さんだった。
『してみると、結構、驚いちゃうよ。何で今まで無駄に怖がってたんだろ、馬鹿みたいって』
「……したことあるんですか、……リピュア」
『うん』
彼女はあっさりと答える。目眩がして、周りの喧騒がボリュームの摘みを間違えたみたいにやかましく聞こえる……。
気付けば、私は満員のホームの最前列に居た。後ろには満員の人々の人垣。押し戻ろうにも、満員電車並のぎゅうぎゅう詰めで、私が押し入ろうとしたのと同じだけ押し返される。
『見てみて。下を』
彼女の声はすぐ近くから聞こえるけれど、姿は見えない。指示に従ったつもりはないが、後ろから押され、つい足元を見てしまう。……するとホームの下は、青空だった………。
「………………………っ……」
砂利とレールのあるべき空間が、……ぽっかりと抜け、眼下に青々とした大空を覗かせているのだ。まるで、空に浮かぶ島から、眼下を見下ろしているみたいに。
『おいでよ』
「……でも……」
『すっごい簡単であっさりだよ。怖くなんかないから』
彼女はいつの間にかそこにいて、手を差し伸べていた。見れば、いるのは彼女だけではない。友人たちか、あるいは同僚たちだろうか。スーツ姿の男女が見える。
「でも、……これって……」
飛び降りろってことだよね……? ホームから。みんな、飛び切りの笑顔で手を差し伸べてる。でもほら、向こうから電車がやってくる音が聞こえる。地鳴りが唸りが、叫びが聞こえる。
『ほら、早く。』
『……怖くないから。痛くもないんだよ』
無理だよ。そこへ飛び降りるってことは、……だって、だって……。
……ら、……じゃないか……。
ら、……ばら……。
みんなみんな、……手も、……足も、……首も、……ばらばらじゃないか……。
青空なんてない。そこは風雨と錆で赤茶色に染まった石が敷き詰められたホームの下。錆色の太いレールがまるで鉄格子のように遮る向こう側から。
ごつごつとした石を掻き分けながら、懸命に私に向かって手を伸ばす、……四肢がばらばらの亡者たちの呻きが、そこにあった。
◆◆◆ ◆◆◆ ◆◆◆
タイトル:祝姫 -祀-(いわいひめ まつり)
ジャンル ホラーアドベンチャー
対応機種:PlayStation 4,PlayStation Vita
プレイ人数:1人
発売予定日:2017年7月20日(木)
PlayStation 4 パッケージ版/ダウンロード版:6,980円(税抜)/7,538円(税込)
PlayStationRVita パッケージ版/ダウンロード版:5,980円(税抜)/6,458円(税込)
シナリオ:竜騎士07
キャラクターデザイン:和遥キナ
プロデューサー:菅沼 元
ディレクター:椎名 建矢
ジャンル ホラーアドベンチャー
対応機種:PlayStation 4,PlayStation Vita
プレイ人数:1人
発売予定日:2017年7月20日(木)
PlayStation 4 パッケージ版/ダウンロード版:6,980円(税抜)/7,538円(税込)
PlayStationRVita パッケージ版/ダウンロード版:5,980円(税抜)/6,458円(税込)
シナリオ:竜騎士07
キャラクターデザイン:和遥キナ
プロデューサー:菅沼 元
ディレクター:椎名 建矢
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