【TGS2017】開発に訊く『初音ミク Project DIVA FT DX』こだわりポイント―遊びやすさ、リボン、つま先…など

初音ミク生誕10周年という記念すべき年に発売されるPS4『初音ミク Project DIVA Future Tone DX』。今回は、本作および『FT』シリーズについて、9月21日より行われた「TGS2017」にて、プロデューサー兼ディレクターを務める豊田氏とデザイナーの菅田氏にお話を伺いました。

ソニー PS4
【TGS2017】開発に訊く『初音ミク Project DIVA FT DX』こだわりポイント―遊びやすさ、リボン、つま先…など
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初音ミク生誕10周年という記念すべき年に発売されるPS4『初音ミク Project DIVA Future Tone DX(以下、『FT DX』)』。DL専売という形で2016年に発売された『Project DIVA Future Tone(以下、『FT』)』のパッケージ版という立ち位置ながら、『初音ミク「マジカルミライ 2017」』テーマ曲「砂の惑星 feat.初音ミク」や、2016年を代表する1曲「ゴーストルール」を収録し、メモリアルかつ『DIVA』シリーズの集大成たる一本となっています。

今回は、そんな本作および『FT』シリーズについて、9月21日より行われた「東京ゲームショウ2017」にて、プロデューサー兼ディレクターを務める豊田氏とデザイナーの菅田氏にお話を伺いました。

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――まずはじめに、自己紹介をお願いします。

豊田勝氏(以下、豊田氏):『FT』と『FT DX』でプロデューサー兼ディレクターをしている豊田と申します。全体的な進行管理や、ゲームに方向性や仕様をどうするかなどを決定する部分を担当しています。

菅田紗代子氏(以下、菅田氏):デザイナーの菅田と申します。UIやPVのエフェクト、コンテ、販促物の一部など、2D全般を担当しています。

――今回の『FT DX』はパッケージとして発売されますが、パッケージ化に至った経緯を教えていただけますか?

豊田氏:ダウンロード版の『FT』を作る段階で、パッケージも発売するという話はありました。しかし、諸般の事情でパッケージ版はが難しくなりDL専売にしたのですが、予想以上の方に購入していただけました。(※2017年6月現在、国内で16万DLを記録。)

そこで、改めてパッケージ版を検討したところ、さまざまな懸念もクリアできる見込みが立ち、実現に至りました。パッケージ版を作るタイミングで、当然クリプトン・フューチャー・メディアさんともお話をさせていただいているのですが、その段階で「せっかく10周年なので、華やかに行こう」ということでシリーズを網羅するような限定版も制作することになりました。

――確かに限定版はとても豪華ですね。僕も限定版を予約しました。

豊田氏:もう出すものがないほどです(笑)。ちなみに、予約特典のミニサントラCDや販売店舗別予約特典はほとんど菅田が手を入れています。

菅田氏:やっぱり、10周年ということもありますし、より良いものを届けたいので頑張りました(笑)。


――これは『FT』にも共通するのですが、アーケード版から家庭用版を開発するにあたり、変更した部分はありますか?

豊田氏:アーケード版からは様々な部分を変えていますね。まずは画面の解像度が違います。アーケード版は720pで動かしていたのですが、PS4のハード性能があったので、フルHD(1080p)で動かしているというところが大きな違いですね。

ただ、根本的にきれいにしてそのまま移植、ではもったいないですよね。なので、『FT』で手直しするにあたっては“遊びやすさ”を意識しました。リズムゲームって、画面を見ると難しく見えるじゃないですか。

仮にその方たちが家庭用をきっかけに遊んでくれるのであれば、「いかに遊びやすくするか」が肝になると思います。「プラクティス」の搭載や、キーコンフィグもその“遊びやすさ”を意識したものです。また、『FT』では一番難しいのが「同時押し」なんです。そこをいかに楽にさせるかというところでサポート機能なども搭載しました。

菅田氏:スライドの操作を検討する際も大変でしたね。ジャイロでやるか、パッドでやるかとか。

豊田氏:今回はアーケードと同じ操作性にこだわるよりも、キーコンフィグで自分のやりやすいように設定してもらって遊んでもらえるようにしてます。すべてアーケードと同じじゃなきゃいけない、という気持ちがあったら、今の形になっていなかったかもしれないです。

菅田氏:デザイン面では、まずUIや操作方法がアーケードとは全然違います。アーケードはタッチパネルと4ボタン&スライドで、PS4はコントローラ。UIは根本的に新しいゲームを作るのと同じぐらい時間をかけて作り直しています。また、PS4ではモジュールの髪型とを別々に設定できるので、そこは楽しんでもらえるのではないかなと思っています。


――“遊びやすさ”の部分で言えば、すべて作り直したと言っても過言ではないですね。

豊田氏:他には、アーケードをプレイされている方からは、6人が登場する楽曲で6人それぞれをカスタマイズできるのが嬉しいと言われますね。アーケードでは最大3人までしかカスタマイズできなかったので。

――プラクティスもずっと欲しいと思っていたので、嬉しいです。

豊田氏:1曲通しでプレイすると3~4分かかるじゃないですか。ゲームの性質上、ミスしやすいポイントは後半にあることが多いんです。その部分の練習をするのに数分待たなきゃならないというのもあるので、好きな部分を繰り返し練習できる「プラクティス」は良い感じになったかなと思います。開発としては“ボタンを押せばすぐ頭出しができる”といったレスポンスにこだわっていました。

――『FT』から『FT DX』で変わっている部分はありますか?

豊田氏:『FT』では楽曲やモジュールを追加ダウンロードコンテンツとして配信してきました。『FT DX』になるにあたって、それらが最初から入っているというところと、新規収録楽曲の「ゴーストルール」「砂の惑星 feat.初音ミク」、新規モジュールの「GHOST」「セレブレーション」の追加があります。あと、アーケードの「フォトスタジオ
にあたる「PVフォト」の新機能を実装しました。また、PS4 Proでは3Dの表現が強化されます。

――今話に出た新規モジュールについて、まずは「セレブレーション」からお話を伺えますか。

菅田氏:「セレブレーション」は見ての通り大きいリボンが特徴です。この存在感はPVで見てもわかる通り、10周年にふさわしい華やかさだと思います。ただ、半透明でありながら鮮やかな虹色をだすのは難しく、作成担当からは納得するまで何度もやり直したと聞いています。また、ゲーム内での最大サイズは決まっているので、リボンの大きさはそこのギリギリを攻める戦いのようでした。


――歴代のモジュールと比べてもかなりボリューミーですね。

菅田氏:そうなんですよ。出ているリボンが奥側に広がっているので、横幅も奥行きも大きくなっています。

豊田氏:3Dなのでどうしても互いの干渉が起こってしまうんですよね。ただ、干渉が全く起こらないレベルまで小さくしてしまうと、モジュールの魅力が半減してしまう。なので繰り返し大きさを調整していました。「リンちゃんなう!」など、キャラの距離が近くなるような楽曲で確認していましたが、2人を並べた時にどれだけ重ならないようにできるかというところでギリギリを探っていました。あとは発色を見る時に、暗いステージできれいなものでも、明るいステージだと全然見えないということもありましたので、調整には気を遣いました。

――キラキラと舞っているエフェクトもモジュールの一部でしょうか?

菅田氏:そうですね。最初設定画を見た時に「どうやって作るんだろう?」って、私は2D担当なので他人事のように思っていました(笑)。

――ミクさん本体だけを見るといつものミクさんなんですね。

菅田氏:そうなんですよ。リボンに目が行きがちなのですが、その他の部分はデフォルトのミクさんを踏襲していて、リスペクトは忘れていません。

――よく見ると、つま先の部分は透けているんですね…!

菅田氏:そうなんです、よくお気づきで!

一同:(笑)

菅田氏:ちゃんと爪の先やペディキュアまで見えるという、「その手の方」にはたまらないデザインになっています!水着系のモジュールや「深海少女」「初音ミク アペンド」などでもつま先は出ていますが、ブーツ越しのつま先というのはあたらしい表現です。


――「GHOST」についてはいかがでしょうか。

菅田氏:「GHOST」は装飾も少なく、色数も黒ベースでそんなに多くなくて、シルエットもぴたっとしているのですごくシンプルに見えます。でも、実は背中が大きく空いていたり、首元の前後にゆらゆら揺れるリボンがあったりします。立ち姿だとそこまで感じないかもしれませんが、動いているところを見ると雰囲気があって素晴らしいモジュールです。


――髪色も綺麗ですね。

菅田氏:3色のグラデーション、紫、青、ピンクでかなり珍しい色使いになっています。髪留めも今までにない形で特徴的です。また、お尻のところにあるリボン、小さいので近づかないと見えないんですけど、すごく細かいところまでこだわって作られていて、シンプルだけどつまらなくない、絶妙なラインのデザインだと思います。

豊田氏:結構体のラインも出ていますよね。水着とかとはまた違ったセクシーさみたいなのがあって。ただ、露出は少ないんですよね。長いブーツとグローブで肌は隠れているんですが、それもポイントですね。


――新規楽曲について、『FT DX』に「砂の惑星 feat.初音ミク」と「ゴーストルール」を収録したきっかけは?

豊田氏: 2016年の話題曲というか代表曲として、「ゴーストルール」が入っていないと締まらないのでは?というのをクリプトンさんからいただきまして、まず「ゴーストルール」の収録を決定しました。再生数は当時でも900万再生ほどで、認知度も申し分なかったです。

もう1曲の「砂の惑星 feat.初音ミク」は、『初音ミク「マジカルミライ 2017」』のテーマ曲として入れないかという話が春頃にきたのですが、『FT DX』を制作している時期としては後半の方でかなりギリギリでした(笑)。しかし、10周年ならではの曲が入っていれば、メモリアルなソフトとしても適しているというところもあったので収録を決めました。

――「砂の惑星 feat.初音ミク」は、収録されてもDLCかなと思っていたので驚きました。

豊田氏:一瞬そうすることも頭によぎりました(笑)。でも、「このタイミングで本当に入るの!?」と驚いていただけるかなと。

――『FT DX』の開発で苦労がありましたか?と聞こうかと思ったんですが、やはり…。

豊田氏:それですね(笑)。また、「ゴーストルール」も力をいれています。

菅田氏:大きい作業として、「ゴーストルール」のPVを1から作るというのがありました。私が主導で絵コンテやコンセプトをやらせていただいたんですが、最初のすり合わせを楽曲アーティストのDECO*27さん側としてから、その後も色々な相談をしてついに…!という感じでした。

PVのあらすじがわかるようなビデオコンテというものを作るのですが、完成形を想像しやすいようなエフェクトやカメラワークをあらかじめ入れておいたので、それで開発がスムーズに進んだのかなと思っています。最初はダンスタイプで比較的シンプルなPVを想像していたんですが、最終的にはリッチで見ごたえのあるPVになりました。

ちなみに、年明けぐらいからコンセプトをねり、完成したのが初夏だったので、半年ほどかかっています。


豊田氏:見てもらえばわかると思うのですが、「ゴーストルール」のPVはこれまでにない、大人びたというか、結構ブラックな意味合いを持った作りにもなっているので、早く皆さんに見てもらいたいですね。実際出来上がったPVを初めて鑑賞した際は、後半鳥肌が止まらなくなって、未だに鳥肌が止まってないです。まだ止まってない(笑)。

菅田氏:言い過ぎですよ!(笑)。エフェクトの面では新しい挑戦もしているので、ぜひ隅々まで見てほしいです。

――「砂の惑星 feat.初音ミク」についてはいかがでしたか。

豊田氏:「砂の惑星 feat.初音ミク」については、南方研究所さんが作られているオリジナルPVをそのまま使用させていただいています。

菅田氏:そのままといっても、色味をPS4で再現するためにかなり試行錯誤はしています。赤味が強いとか色が落ちているとか、色々言いながら。

豊田氏:映像のフレームレートとゲームのフレームレートで違うので、そこをどうするかというのも、結構苦労しました。


――それぞれの譜面について、仕上がりはいかがでしょうか。

豊田氏:「ゴーストルール」は難しめだと思います。曲のテンポも速いですし。ただ、「初見殺し」というわけではなく、そんなに奇抜なこともやっていないです。「砂の惑星 feat.初音ミク」については、簡単とは言いませんが、程よい難易度だと思います。リズムが一定なので、どう変化を出すかというところでは、手を替え品を替え、前半と後半で印象が違う譜面になっています。遊べる人が多い難易度になっていると思います。ちなみに、新規収録曲2曲はどちらもフル尺での収録になります。

TGS2017では「ゴーストルール」の試遊もできました。
HARDで☆7.5、EXTREMEで☆9と結構難しめ

――限定版「メモリアルパック」には歴代PVを収録した特典Blu-rayが付きますが、PVは当時のクオリティで収録されるのでしょうか?

豊田:PSP版3作のPVに関しては、HDになってしまうとサイズが小さくなってしまうので、周りに枠をつけた状態で再生されます。その他に関してはそのままですね。PSP版のものもそのまま見られるということに価値があると思うので、あえて大きく手を入れずに収録しました。

――菅田さんは予約特典CDのデザインをされたとのことですが。

菅田氏:CDジャケットのミクさんがウィンクしているポーズなのですが、あれは予約特典のために作り下ろしたものです。


――ちなみに、新規2曲と新規モジュールは、『FT』にはDLCとして配信されるのでしょうか?

豊田氏:少し遅れますが、有料DLCとして配信する予定です。「PVフォト」の新機能もこのDLCに含まれます。

――楽曲とモジュールはアーケードには配信されますか?

豊田氏:時期はまだ未定ですが出ます。今どれだけ早く出せるかという部分で社内調整をしている段階なので。そう遠くないとは思います。

――『FT』シリーズは、集大成的な形になっていますが、今後アーケードに合わせてアップデートを入れていって欲しいなと思っています。そのあたりはどうでしょうか?

豊田氏:具体的に今何をしようかとは考えてないんですよね。ただ、『FT DX』に関しては追加の譜面を出したいなと思っています。収録曲に対しての追加譜面ですね。アーケードであればEXTRA EXTREMEを配信していますが、それを追加していければいいなと思っていますね。

――集大成とは言えど、開発自体はこれからも進めていくということですね。

豊田氏:そうですね。他にも、例えば「Tokyo Tokyo」とのコラボビジュアルの制作や、ライブの映像提供をしたり、ゲームだけでなく今後も何らかの形でミクさんと関わっていきたいとは思います。

――最後に、読者の方へメッセージをお願いします。

豊田氏:今回、10周年という良いタイミングなので、メモリアルという点では引けを取らない内容になっています。買っていただければ当分遊べるので、是非手に取っていただいて、1度アーケード版でも遊んでみて欲しいなと思います。楽しんでいただけると嬉しいです。

菅田氏:いつもメッセージとなるとただのファンの発言みたいにしかならないのですが(笑)。私が最初に初音ミクを知った時が大学生の時だったのですが、それからまさかミクさんと仕事で関われるとは全然思ってなくて、関われたことも『FT』や『FT DX』が発売されたことも本当に嬉しいので、みんな手にとってください!(笑)。いちファンとしても素晴らしいものになっていると思うので、よろしくお願いします!

――豊田さん、菅田さん、ありがとうございました!


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《編集部》

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