『FGO』で注目!ゲームによく登場する「クトゥルフ神話」って何?【特集】

最近ツイッターなどのSNSでもよく見かけるようになった「クトゥルフ神話」という言葉。iOS/Androidアプリ『Fate/Grand Order』で登場した”セイレム”が、「クトゥルフ神話」の作品の舞台“アーカム”のモチーフであることから注目を集めました。

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『FGO』で注目!ゲームによく登場する「クトゥルフ神話」って何?【特集】
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◆どうしてここまで有名になったのか



作中には、宇宙や神話が絡む壮大で人類が到底かなわないような恐ろしい“モノ”が登場します。その“モノ”というのは、先程も書いた神性、神話生物、宇宙生物といったものです。原作者自ら作品を「宇宙的恐怖(コズミック・ホラー)」という言葉を使って表現しているのですが、果てしなく巨大で、人間には理解も対話もできないような未知のものに対する孤独感や不安、どうにもならないという恐怖を書いているのです。

それまでのホラーと言えば、吸血鬼や悪魔といったその土地の伝承、伝説、あるいは神話になぞらえたものばかりでした。そんな中、“宇宙”的なホラーというのは斬新で、描かれている生物も今までにないものばかり。そんな経緯で、様々な映画やゲームに出ているモンスターも「クトゥルフ神話」をモチーフにしたものが多いと言われています。特に、タコっぽい軟体生物などのモンスターや半漁人のような人間の特徴をもつ生物は今でこそ定番ですが、「クトゥルフ神話」によって定着されたとも言われています。

作品に魅力があるのはもちろんですが、約100年以上前の作品が今でもこれだけ人気があることには、また理由があります。それは「TRPG(テーブルトークロールプレイングゲーム)」です。TRPGって何?という方は、「【アナログゲーム決死圏】第1回 アナログゲームってなんだ?ボードゲームやTRPGなど、その種類と魅力を解説」をぜひご覧ください。

TRPGはファンタジーな作品から現代を舞台にしたものまで様々ですが、その中でもクトゥルフ神話TRPGは一ジャンルとして確立しているほど人気があります。なぜ人気があるのか?それはクトゥルフならではのルールがあるからです。そのルールとは、プレイヤーに「正気度」パラメーターがあること。「SAN値」と言えば、聞いたことのある人も多いでしょう。この「SAN値」、正気度が何かのアクションによって減ると、プレイヤーが「狂気」状態に陥ります。この「狂気」によって、プレイヤーはゲーム中に大変な事に……こうしたストーリーが描けるのが、宇宙的、神性的なやばい奴が出てくるクトゥルフならではなのです。このルールはクトゥルフ神話TRPGで最も有名な本「CALL of CTHULHU」で記載されているのですが、今では同人作品などを含めて幅広く親しまれています。もちろんSAN値のないクトゥルフTRPGもあります。

そして、近年増えたリプレイ動画によってさらに人気が広がったと言えます。そうした気軽に楽しめる、手に届くコンテンツになったことで、「クトゥルフ神話」は幅広い世代に親しまれるようになりました。

◆いあいあ!謎の言葉や本、神話生物たち


「いあ!いあ!くとぅるふ ふたぐん!」「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん」急に何を書いているんだと思われそうですが、見たこと、聞いたことのある人もいるのではないでしょうか?これはクトゥルフを讃える時の言葉で、ファンにはお馴染みのフレーズなのです。意味ももちろんあるのですが、ニュアンス的には「万歳!」とか「わっしょい!」的なもの。呪文的な言いまわしで、思わず声に出して言ってみたくなる……そんな魅力があると思いませんか?そう思うならSAN値チェックです。

そして聞いたことのある人もいるであろう、有名な「ネクロノミコン」も「クトゥルフ神話」に登場する本なのです。創作に登場する魔道書だというのに、多くの作家たちがその本の再現に挑戦していきました。現代ではネット通販で買うことができる、お手軽魔道書です。

みなさんが気になっていたであろう神性、神話生物、宇宙生物ですが、たくさんいるのでその一部を紹介します。

・クトゥルフ
「クトゥルフ神話」の顔とも言うべき存在で、小説「クトゥルフの呼び声」に登場した邪神。タコのような頭を持つ巨人で、蝙蝠のような羽があり、手には長い爪。体は鱗に覆われていて、肥満体型。普段は海底に沈んでいる石造都市ルルイエに封印されていて、山のように巨大なのだとか。崇拝している邪神教徒の人達が蘇らせようと頑張っているのですが、ルルイエがちょっと海上に出てしまうだけで人々に色々影響が……完全に浮上すると世界が大変なことになります。

・ナイアーラトテップ
ニャルラトホテプという呼び名の方が知っている人が多いと思いますが、アニメ化もした「這いよれ!ニャル子さん」のニャル子の元ネタです。「クトゥルフ神話」の中でも人気が高い神性。姿を変えることができるので、様々な容姿で作品に登場します。小説「ナイアルラトホテップ」や「無貌の神」などに出るのですが、どちらのタイトルもナイアーラトテップの名称というのがポイントですね。『ペルソナ2』や『ワイルドアームズシリーズ』などのゲームにも登場しています。

・深きもの
ラヴクラフトが唯一生前に出した「インスマウスの影」に登場する生物。カエルのような顔で表面には鱗、手には水かきがあるという半漁人的な存在。インスマウスの街に住んでいて、「父なるダゴン」と、そのダゴンが眷属であるクトゥルフを崇拝しています。この生物たちがまさに「いあ!いあ!」とクトゥルフを讃えているのです。

・グール
この名前はゲームなども含めて、一番聞いたことがあるのではないかと思います。元はアラブの伝承に登場する怪物なのですが、「クトゥルフ神話」にも生物として登場しています。体は人間のようで顔は犬、地下に住みながら死者を食べています。モンスターとしても色々な作品に登場しますね。「クトゥルフ神話」では「ピックマンのモデル」で登場します。

・ショゴス
体は粘液状で黒く巨大な生物。目がたくさんついていて、「テケリ・リ」という特徴的な鳴き声が有名です。粘着状でありながら、移動するときは転がるというバイタリティの持ち主。元々「古のもの(いにしえのもの)」によって創られ、奴隷のように扱われていましたが、その後反抗し……ラヴクラフト作品の中でも傑作と言われている「狂気の山脈にて」に登場しています。

・ミ=ゴ
薄赤色の甲殻類のような体を持ち、頭に触角のある生物。体長は150cmぐらいで二足歩行、羽もついています。生物的には菌類。見たり触ったりはできるのですが、写真には写らず、テレパシーで会話をすることが可能です。冥王星を元にした“ユゴス”という星からやってきていて、小説「闇に囁くもの」に登場。『FGO』のアビゲイルのぬいぐるみの名前の元ネタと思われます。

これはほんの一部です。生物たちには上下関係などもあり、そのあたりを調べるのも面白いので、気になる方はぜひ調べてみてください。

せっかくなので本の紹介も。編集部のクトゥルフ神話大好きマンのおすすめはなんといっても「ラヴクラフト全集」。全巻電子書籍でも買う事ができます。筆者が個人的におすすめなのは、新紀元社から出ている「クトゥルフ神話超入門」。難しいことが分からなくても、会話タッチで「クトゥルフ神話」について優しく教えてくれます。あと「クトゥルフ神話 TRPG (ログインテーブルトークRPGシリーズ)」も情報量がすごいので、どっぷり浸かりたい人はおすすめ。TRPGの本ではありますが、クトゥルフのことも余すことなく書かれています。TRPGも遊べるので一石二シャンタク鳥。

ライトノベルは「這よれ!ニャル子さん」をはじめ、「クトゥルフ神話」をモチーフにしたものはかなりたくさんあります。漫画で読みたい人は、田辺剛氏の「狂気の山脈にて」や「闇に這う者」などが良いのではないでしょうか。
小説と言えば、最近星海社FICTIONSから森瀬繚さん翻訳の「クトゥルーの呼び声」が11月に発売したばかりなので、今がまさに「クトゥルフ神話」のドアを開けるチャンスです。あと海野なまこさんの「ゆるるふ神話」シリーズも、可愛いグッズなどが販売されていておススメです。

今回は基本の“き”ということでしたが、いかがだったでしょうか?「クトゥルフ神話」は知れば知るほどのめり込んでしまう魅力があるので、狂気に陥らないようほどほどにしてくださいね。では最後はクトゥルフを讃える言葉で締めましょう。いあ!い……ああ!窓に!窓に!


※記事内容にいくつか誤りがあったため修正しました。読者の方々へはお詫び申し上げます。また、記事へのご指摘、ありがとうございました。

(C)Getty Images
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《タカロク》

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