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架空の舞台「蘭空町」に登場する6人の少年少女が、夢の実現を目指してバンド活動を続けていくリズムゲーム『VOEZ(ヴォイズ)』。2016年5月にスマートフォンアプリとして配信された本作は、その美しい世界観と、これまでのリズムゲームの常識を覆す斬新なシステムで大きな評判を呼び、2017年3月にはニンテンドースイッチのダウンロード版が発売されるほどの人気となりました。また、2018年1月25日には、同じくニンテンドースイッチ用のパッケージ版が発売となりました。
それほどまでに注目を集める『VOEZ』とは、いったいどんなゲームなのか。インサイド編集部は、開発を行っている台湾のゲームメーカー「Rayark」にメールインタビューを実行。『VOEZ』プロデューサー・張翔(GuluJam Chang)氏と、シナリオ担当の張廷浩(Marshall Chang)氏が応えてくれました。『VOEZ』の魅力に迫る、注目のインタビューをご覧ください。
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『VOEZ』はRayarkのリズムゲームの集大成
――音楽リズムゲーム『VOEZ』ついて、改めて教えてください。
張翔氏:『VOEZ』はダウンロード数が1,000万(※)を超えた音楽リズムゲームです。アクティブレーンによるユニークなゲームプレイ、台湾ローカル文化のシーン設定、青春時代を背景にしたストーリーなど、Rayarkの音楽ゲーム開発の集大成と言える作品です。
※2017年12月時点、全プラットフォーム上での数字
――OPでもある「Colorful Voice」はとても心地よい音楽で、声も美しく、この世界観にぴったりだと思ったのですが、プレイし始めてみると、やわらかい曲調のものだけでなく、様々な曲がありました。これらの曲はどのような基準で集められたものなのですか?
張翔氏:“どんな音楽ジャンルの曲でも収録できる音楽ゲームプラットフォーム”にしたかったというのが、『VOEZ』のデザインコンセプトに於ける最初の発想でした。ゲーム内には、異なる国や作曲家、スタイルの作品を収録していますし、さらにレーンがアクティブに動くという『VOEZ』特有のプレイ画面で豊富な変化を加えることで、それぞれのビジュアルデザインが違うという、楽曲スタイルを表現しております。
――『VOEZ』のひし形で統一されたデザインがとても素敵だと思っているのですが、これは何をヒントに考えられたのですか?
張翔氏:チームのUIデザイナーLDTさんが初期段階のUI設計の時、既にひし形をUIに取り入れてテストしておりました。そうしたらレイアウトとプレイヤー習性の面においても、ひし形がデザインセンスと理想的な操作体験を兼ねていることに気付き、そのままこの要素を正式に取り入れました。
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――『VOEZ』の中で、一番ここを見てほしいという要素はどこでしょうか?
張翔氏:定番の落下式プレイをアクティブレーンと融合して音楽リズムゲームをプレイするのは『VOEZ』の最大の特徴です。その中、楽曲ごとに譜面を丁寧にアレンジし、様々なアイデアとチャレンジを取り入れておりますので、プレイヤーの皆様に楽曲ごとの特徴をご理解して頂けると嬉しいです。
――スイッチ版ならではの魅力や長所はありますか?
張翔氏:スイッチ版『VOEZ』の一番の特徴は、一度のご購入で全ての楽曲を楽しんで頂けることです。プレイ中にネット環境に接続する必要もございません。ネット環境の縛りなく、ご購入して頂いたら全楽曲が遊べることはユーザーにとって喜ばしいことだと思います。もうすぐ発売されるパッケージ版はコントローラーを使うと、これまでのタッチ操作と全く違うプレイを楽しんで頂けます(※)。
※:配信版はパッチによりコントローラー対応になる
Rayarkが過去に手掛けたリズムゲームとの違いは?
――『Cytus』、『DEEMO』に引き続き、リズムゲームでは3作目となりますが、違いはどういったところでしょうか?
張翔氏:『Cytus』と『DEEMO』のゲームのプレイ体験は『VOEZ』とかなり違います。『Cytus』は画面全体の位置に注目する必要があり、スキャンラインの動きに従って手を大きく動かしていく操作プレイです。それに対し、『DEEMO』はノーツの落ちてくる位置に注目してピアノの演奏の感覚を実現しております。『VOEZ』の場合、様々なアクティブレーンの演出によりプレイヤーに視覚と聴覚のプレイ体験を同時に提供しております。レーンの大きさの変化によって、違う操作方法にチャレンジして頂いています。レーンの演出はライトショーを楽しんで頂くような作りとなっております。
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――『Cytus』はノーツではなく軸となる線が動くという独特なリズムゲームでした。『DEEMO』は操作の仕方がタッチとスライドのみの2パターンで、軸となる線は動かないので、よりプレイしやすかったです。『VOEZ』は軸の線は動きませんが、レーンは自由に動くという形になっています。どのような経緯で、この形になったのでしょうか?
張翔氏:『VOEZ』の遊び方については、半年から一年に近い開発時間を費やして最終仕様まで辿り着きました。開発の唯一の目標として、プレイヤーへのフィードバックを極めるプレイ体験で爽快感を提供したいと思い、画面を左右にスライドする時に華麗な演出を付けるというアイデアが浮かびました。タップ、スライド、長押し、どの操作方法でも豊富なビジュアルフィードバックにより操作の楽しさをプレイヤーに感じて頂けるように、遊び方の最終仕様を決めました。
――『Cytus』はSFストーリー、『DEEMO』はファンタジーな世界観でしたが、今回はなぜこうした青春ストーリーを軸に制作することになったのですか?また、「日記」という形でプレイヤーがしっかりストーリーを読み進められるようにしたのはなぜですか?
張翔氏:『VOEZ』はオンライン運営型のゲーム(※)として、頻繁に楽曲などのゲーム内容を更新するため、プレイヤーには日常生活の感性で構築されたストーリーを通して、よりゲームに没入して頂きたいと思っております。日常生活の時間やペースに近いストーリーで、ゲームキャラクター同士のやり取りの中でゲームを進めて頂ければと考え、リラックスしていてかつプレッシャーがなく、日常生活のような繋ぎ方でレイヤーに遊んで頂きます。これが、日記の形でキャラクター間の関係性を述べる手法を取った理由です。
※アプリ版を指す
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――以前、『Cytus』、『DEEMO』は一般的なプレイヤーを対象としたゲームであるのに対し、『VOEZ』はややコアプレイヤー向けだと語られていましたが、どの点がコアプレイヤー向けだったのでしょうか?またそうなった経緯を教えてください。
張翔氏:もともと音楽リズムゲームはユーザーの皆様が多少なりとも触れたことがあるゲームジャンルだと思います。従いまして、『VOEZ』のステージ(=譜面)のデザインに関しては、一般ユーザーにも音楽リズムゲームのコアユーザーにもなるべくフィットするように制作しました。EASYの譜面なら一般ユーザーにもゲームの面白さを体験して頂くことができますし、HARDやSPECIALの譜面なら音楽リズムゲームが得意なプレイヤーにとっても、より挑戦し甲斐があると感じて頂けます。結果、一般ユーザーにも音楽リズムゲームのコアユーザーにも『VOEZ』を思う存分楽しんで頂けると信じております。
台湾と本作品の関係について
――なぜ台湾を元にした架空の町を舞台にしようと思ったのですか?
張廷浩氏:台湾本土のシーンとストーリーを深掘りしつつ、物語全体を台湾と繋げるため、現実世界を彷彿とさせながらも実在しない「蘭空町」を作ることに致しました。実際に宜蘭と羅東、九份、北海岸などの場所に訪れましたし、絵師のLDTさんやPumpさんなどの匠の技と背景シーンを繊細に描く能力のおかげで、仮想でありながらリアルな蘭空町を作り上げました。
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――日本人だけかもしれませんが、台湾というと「台北」「九份」、「カキ氷」、「小龍包」などがまず頭に浮かびます。なぜ台湾の中でも少しマイナーな宜蘭県を元にしたのでしょうか?
張廷浩氏:実は『VOEZ』の世界では、台北と九份も違う様相として表れております。当初のストーリーのバックグラウンド設定は、田舎から大都市に向かっていく演出をしたく、ちょうど開発部門に宜蘭でバイトしたことがある同僚や宜蘭出身の方がいて、自然風景がとても綺麗な宜蘭を物語の舞台に致しました。
――私自身一度宜蘭に訪れたことがあるのですが、「中山公園」、「宜蘭南機場」、「西郷堤防・西郷橋・西郷菊次郎の記念碑」など、歴史的なところをかいつまんで訪れました。改めて行くとしたら、どんなところがおすすめですか?
張廷浩氏:宜蘭の蜜月湾と烏石港はウォータースポーツにぴったりなところで、夏におすすめです。また、宜蘭の文芸の旅として宜蘭文学館や蘭陽博物館などに訪れるのも良いと思います。もちろん礁溪の温泉の旅も忘れてはいけません。心身ともにリラックスできます。ちなみに、羅東林場のある場所は『VOEZ』のシーンとして登場しておりますので、もし機会があれば、是非探してみてください!
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――台湾の友人に、「宜蘭は、日本で言う箱根のようなところ」と聞きました。実際台湾の人からは、宜蘭はどのような立ち位置なのでしょうか?
張廷浩氏:台湾人からしますと、宜蘭は美食と美景がある非常に気持ち良い場所です。「日本で言う箱根のようなところ」と言われた理由は、宜蘭の礁溪に素晴らしい温泉がたくさんあるからではないでしょうか。台湾人は皆宜蘭に訪れたら大体温泉に行きますね。
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――ゲームの中で、「これは宜蘭を意識している」という部分があれば教えてください
張廷浩氏:ゲームシーンのことなら、ゲーム内で出ているのは殆ど宜蘭と九份の各地になります。一番分かり易いのは、ゲーム主人公達が通う蘭空高校で、実は宜蘭のとある有名な学校です。そしてJessy達が通学の時に通っているあの橋は、宜蘭の利澤簡橋そのものですよ!
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――ありがとうございました!