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3月18日に福岡市天神のエルガーラホールにて、福岡ゲーム産業振興機構(GFF、九州大学、福岡市)主催のもと行われた第11回福岡ゲームコンテスト「GFF AWARD 2018」。
未来のゲームクリエイターの育成を目的とした同コンテストにて、過去最大となる全国1,492ものエントリーの中から1次2次審査を通過した優秀作品の表彰式とプレゼンテーション、最終審査が実施されました。その他にもゲスト審査員として参加したコーエーテクモゲームスのシブサワ・コウ氏と、レベルファイブの日野晃博氏の二人によるトークショーなど、大いに盛り上がった「GFF AWARD 2018」の様子をレポートでお届けします。
◆全国1,492の作品から選ばれた6つの優秀作品を発表。公開プレゼンテーションも
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「このコンテストは福岡の地でクリエイターを育てて、エンターテインメントの都市を作りたいという思いからできたものなので、“福岡でモノを作ることの象徴”だと思っています」との、レベルファイブ・代表取締役社長/CEO 日野晃博氏の挨拶から幕を開けた「GFF AWARD 2018」。なお今回のコンテスト審査員は、福岡ゲーム産業振興機構の委員長である同氏のほか、ガンバリオン・代表取締役社長 山倉千賀子氏、サイバーコネクトツー・取締役副社長 宮崎太一郎氏、九州大学大学院・芸術工学研究院准教授 松隈浩之氏、そしてゲストのコーエーテクモゲームス・ゼネラルプロデューサー シブサワ・コウ氏といった錚々たる顔ぶれでした。
コンテストの部門は「ゲームソフト部門」「ゲームグラフィック・アート部門」、そして新しく設けられた「ゲーム企画部門」の3つ。今回発表された優秀作品は、ゲームソフト部門では292作品から4作品、ゲームグラフィック・アート部門では968作品から1作品、ゲーム企画部門では232作品から1作品と、そのどれもが厳しい審査を勝ち抜いてきたものとなります。うちゲームソフト部門4作品においては、今回の場での公開プレゼンテーションをもとに大賞作品が選ばれるというプログラムになっていました。
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「ゲーム企画部門」で優秀賞を獲得したのは、伊神央人さん制作による『ダンメン』。この『ダンメン』はその名の通り“モノの断面をズバッと切って、中に入って冒険する”をコンセプトとしており、伊神央人さんは「船のステージや地下基地のようなステージなど、普段あまり見られないようなモノの断面を切って中に入って冒険し、それが謎解きにも繋がっているという面白さを出していきたい」と語りました。このアイデアは、普段仕事で工業デザインをしていることから考え付いたそうです。
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「ゲームグラフィック・アート部門」では、伊藤ひかるさん制作による『FAKE』が優秀賞を獲得しました。“アンドロイドに支配された世界を人間が取り返していく”という近未来RPGをテーマにした同作品は、「スタイリッシュなイメージで統一していますが、キャラクターの個性が目立つように性別や種族、質感などで差を付けています」と伊藤ひかるさん。また最近は『刀剣乱舞』や『アズールレーン』など何かを擬人化したキャラクターが登場するゲームが支持を集めやすいと分析した上で、敵キャラクターのデザインは“昆虫”をモチーフにしていると解説しました。
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そして「ゲームソフト部門」で優秀賞を獲得し、大賞を争うこととなったのは、クレヨン制作『INVERSE』、Team.SC制作『SACRED FOUR』、Mr.SuperSaiyan制作『Quantum』、KYMI.COME制作『Buzz Hammer』の4作品。世界観・技術・コンセプト・ゲーム性の全く違うゲームを引っ提げて、それぞれの代表者が熱のこもったプレゼンテーションを行いました。どの作品もアイデアに富んでいると審査員一同が称賛を送りつつも、大賞を獲得できるのは1作品だけ。あとは最終審査に託されることとなります。
◆夢の対談が実現!-コーエーテクモゲームスのシブサワ・コウ氏×レベルファイブの日野氏
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最終審査の結果発表の前に、特別トークショー「歴史シミュレーションゲームの開拓者 シブサワ・コウの野望」と題し、コーエーテクモゲームスのシブサワ・コウ氏と、レベルファイブの日野晃博氏の対談も実施されました。これまで『信長の野望』『三國志』など数々の歴史ものIPを生み出してきたシブサワ氏。「歴史ものに対してこだわりがあるのか?」という日野氏の質問に対して、「生まれ育ったのが足利市で、足利尊氏はじめ足利一族に関連する史跡がたくさんありまして、歴史に囲まれた所で育てられたというのが影響していると思います」と回答。また、武将の特徴を数値化してパラメーターにするアイデアは「もともとボードゲームから来ているかもしれません」と語りました。
さらに日野氏の「『信長の野望』などは、台詞がなくても武将のイメージが掴めるようになっているのが不思議」というコメントに対しては、「ある程度納得性を得られるような形に(武将の能力を)数値化していますが、時の流行……例えば最近は女性のゲームファンが増えていまして、三國志だと“周瑜”や“趙雲”などが人気あるんですけど、それは数値を高くしないと怒られちゃうかな?とか、顔のグラフィックスをイケメン系にするなどしています」と答えるなど笑いを誘う一幕も。なお『真・三國無双』シリーズも『戦国無双』シリーズも、現在は女性のプレイヤーが半分を占めているとのこと。
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話題はシブサワ氏が『妖怪三国志』に熱中していること、同氏がNHKの大河ドラマに技術提供を行いクレジットされていたこと、三國志が日本でドラマ化したらキャストはどうなるかなどを経て、「コーエーテクモゲームスのコラボタイトル戦略について」という内容に。日野氏が「コーエーテクモゲームスさんはいろんな会社とコラボして、そのタイトルのほとんどが成功しているのが面白い」と語ると、シブサワ氏は「当社はこれまでオリジナルのIPを作っていくという一つの方向性で来たんですけど、他社様のIP、版権やゲームシステムなど大変な価値のあるものとコラボレーションすることによって、新しい面白さが生まれることを期待して始めました」と答えました。さらに「最初に始めた『ガンダム無双』の評価が非常に高くて……」と続けると、「ズルいと思いましたね。発想力がズルい(笑)。しかもそれが一つずつちゃんとした作品になっているのがすごい」と日野氏。
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トークショー中盤ではVRやAIについて日野氏が伺う場面も。「その二つのキーワードがコーエーテクモゲームスさんの次のターゲットになっているとお聞きしています」と話すと、シブサワ氏は「VRについては『VR センス』というアーケード筐体を作りまして、五感を刺激するギミックが体験できるものなのですが、6つのゲームがこちらで遊べるようになっています」と、国内外で展開する新しい試みについて説明しました。
続けて日野氏は『信長の野望・大志』を挙げ、「新しい『信長の野望』でAIを取り入れようとしたきっかけと、AIでどのようにゲーム性が変わると思われたのか教えてください」と質問。シブサワ氏は「今まで使ってきた『信長の野望』や『三國志』などで戦略や戦術を組み立てるシステムが頭打ちになってきまして、AIを導入してビヘイビアツリーというものを作って評価しながら、信長は信長らしさ、信玄は信玄らしさというものを出していこうと、試行錯誤の中で行き着きました」と回答し、「今回は戦略面のみにAIを取り入れたので、次回は戦術面に力を入れて武将の個性を出していきたい」と付け加えました。
最後に日野氏が質問したのは、そもそもの対談テーマである「シブサワ・コウ氏の野望」について。シブサワ氏は「次なる挑戦は現在調整中ですが、まずはAI。ここはもっと深く入っていきたい」と答えた後、「私はゲームを売って得た利益というのは、お客様から『もっと面白いものを次に作ってほしい』という開発資金だと考えているので、次に我々はより面白いものを作っていかなくちゃいけない。一番大きな目標は、新しいエンターテインメントを作ること」とまとめる形で対談が締められました。
次のページで運命の結果発表……!!