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一方で、クオリティーの高いコスプレをするには経験は不可欠。その中で高校2年生のKAPIさんは、身体能力の高さを活かしたポージングに期待が寄せられています。
日本とインドネシアのハーフである彼女の強みは、幼い頃から学んできたインドネシア伝統演武「シラット 」。 “シラットJr.世界大会”「PENCAK SILAT PAKUBUMI」演武部門において、2017年・2018年金メダリストの実力者です。
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日本人には馴染みが少ない「シラット」ですが、「週刊ヤングマガジン」(講談社)で連載中の格闘技マンガ『喧嘩稼業』において、最強の格闘技候補として登場しています。流派も数百あるなど、気になる点が多くあるので、KAPIさんに訊いてみました。彼女のコスプレ写真と合わせて詳細をお届けします。
◆◆
――シラットは演武でもあり、格闘技なのでしょうか?
KAPI:私はどちらも当てはまると思っています。シラットは舞踊を取り入れて始まった武術なので、流派によっては舞踊に近かったり、格闘技に寄っていたり、多様性があります。現在は大きな大会も頻繁に開催されているので、競技としても注目されています。

――シラットはインドネシア発祥なのですか?国技としての側面もあるのですか?
KAPI :インドネシア発祥と言いたいところですが、「日本プンチャック・シラット協会(※)」に確認したところ、言い切ることはできないらしいです。
インドネシアの国技としてはバトミントンが有名なので、シラットを国技と言うのは難しいです。それでも、インドネシアが最も盛んなのは間違いありません。学校教育にも取り入れられているので、日本で例えるなら国技・相撲に対しての剣道や柔道にあたると思います。
2018年にインドネシアで開催された「第18回アジア競技大会」シラット部門の金メダルは、インドネシアナショナルチームが独占したほどの実力です!
(※)インドネシアの「シラット協会」に対して、こちらは日本の流派が合同で活動する会。海外に選手を派遣したり、海外からの遠征組の対応をしたり、イベント(舞台など)に参加す手配などが主な役割です。

――シラットの流派はどれくらいあるのですか?
KAPI :インドネシアでは800以上と言われています。マレーシアなど、インドネシア以外での発祥の流派もあるそうなので総数は不明です。
――どういった訓練をするのですか?
KAPI :まずは基礎的な運動をして体を鍛える所から始まります。その上で流派ごとの訓練法に則りまます。私の場合は幼少期から伝統流派「ムルパティ・プティ」の訓練を受けています。
流派独特の訓練としては、肺なども鍛える呼吸法が多いかなと感じます。基準となる昇段試験通過してからは、鉄を折ったり、氷を割ったり、さらに裸足で町中を走ることもあります。インドネシアであれば砂浜を走ったりするそうですが……。
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――鉄を折れるんですね……。KAPIさんが参加した“シラット Jr.世界大会”「PENCAK SILAT PAKUBUMI」はどれくらいの規模で、どんな競い方をするのですか?
KAPI :こちらの大会はインドネシアでほぼ開催されるだけに、参加する選手の年齢層も幅広く、数も多いです。部門としては対人戦と演武に分かれることが多いです。ちなみに大人の大会になるとさらに部門が増えます。
対人戦ではプロテクターを着けて戦い、相手の体の決められた箇所に攻撃が入れば得点になります。
1ラウンド中ノンストップで戦うのではなく、レフェリーによる指導や採点、また攻撃の有効性協議の際にストップウォッチを止めています。
対人戦の試合時間は、プレJr.(10~12歳)が1ラウンド1分半。Jr.(12~14歳)・青年(14~17歳)・成人(17~35歳)は1ラウンド2分です。小学生(6~10歳以下)だと1ラウンド1分半で、レフェリーの指導や採点中もストップウォッチは一度も止めずに続けられます。
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演武では型の完成度を競うのですが、この大会では一人演武の「ジュルス・トゥンガル」が主流です。この型は素手、短刀(ゴロック)、自分の身長と同じ長さのラタンで作られた棒(トヤ)を使用した、100の動きを3分間で披露します。ただし、3分ピッタリに終わることが出来ないと減点対象になり、3分を目安にした前後の秒数の間隔が大きいと失格になることもあります。
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私もこの部門に挑戦していますが、過去の大会自己ベストは2分56秒でした。3分ピッタリに終わらせるにはかなりの訓練が必要だと感じています。
――シラット はコスプレする際に役立っていますか?
KAPI :はい!ポージングで活きていると感じます。
二次元キャラクターのポーズは、現実で実行するにはかなり無理な体勢であることが多いです。柔軟さや体幹を鍛えることで近づけると思っていますから……まだ難しいですが(笑)。
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あとは、アクション系キャラクターのコスプレをする事が多いので、作中で見せる動きにどんな意味があるのか、体のどこを使っているのかを読み解くのにも役立っています!大好きなキャラクターの動きを、武術の知識を活かして再現するのはとても楽しいです。
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取材協力:日本プンチャック・シラット協会
画像提供:KAPI(@KAPI_827MP)