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『Ghost of Tsushima』では元軍との激しい戦いと対をなすように、日本の四季から着想を得た美しい自然が描かれています。そんな美しい自然をただ「きれいだな」と流すのは勿体無い事です。
今回は、自然の中から本作こだわりの花々に注目して、Sucker Punch Productions(サッカーパンチ プロダクション) が表現する日本を垣間見ていきましょう!
花は桜木、人は武士
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桜は日本を代表する花として古くから親しまれてきました。美しい薄桃色に咲き誇った後の、潔い散り様は「誉ある死」を重視する武士の価値観とも合致し、国学の大成者、本居宣長は「敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花」と詠み、桜を日本人の精神と同一視しました。
実は桜が薄桃色となったのは江戸末期の品種改良から、それ以前は白色の花を咲かせる大島桜が主でした。もちろん『Ghost of Tsushima』に登場するのもこの白色の桜。こうした細かなところからも、開発者たちの日本文化への深い造詣が感じられます。
別名、曼珠沙華。赤き葬送花
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ヒガンバナ(彼岸花)は名前通り、彼岸の時期(9月下旬)に鮮やかな紅色の花が咲きます。その咲く時期から少し悲しい雰囲気のする花ですが、古くから親しまれており、仏教の代表的な経典で本作にもたびたび言及される法華経では「天上の花」とされています。
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蓮は泥より出でて泥に染まらず
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蓮の原産はインド亜大陸、日本には仏教と共に伝来しました。仏教では蓮を仏の知恵と慈悲の象徴とされ、様々な箇所にその意匠が施されています。
スイレン、清純な心
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スイレンには実は様々な種類が存在し、日本に古来より自生していたのは「ヒツジグサ」と呼ばれるスイレンでした。本作でも美しく白い花は目を引きます。
スパティフィラム属の花
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残念ながら細かな品種名までは分かりませんでしたが、おそらくスパティフィラム属の花かと思われます。
スパティフィラム属はサトイモ属の一つで、アメリカ大陸に多く分布しているもののアジアでも見られます。美しい花ですが、乾燥に弱く、水辺や日陰に多く自生します。
奈良時代から日本に、なじみ深いアサガオ
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アサガオの歴史は深く、奈良時代には遣唐使によって薬として持ち込まれていました。初期のアサガオは比較的小さな花を付けましたが、江戸時代になるとアサガオブームが到来、品種改良によって大きな花びらや、多様な色の現代のアサガオへと変わっていきました。
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現代でも品種改良は続けられ、種子に重イオンビームを照射し突然変異をおこさせる方法も開発されています。本作における少々地味目のアサガオは、歴史に忠実なのかもしれません。
番外編、美しくも恐ろしいススキ
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ススキは古くから日本全国に自生し、日当たりの良い山野に生息する日本を代表する草と言えるでしょう。古くは「茅(カヤ)」と呼ばれ親しまれ、日本の創世記を記した「日本書紀」ではカヤノヒメという草の女神が登場しています。
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一方で、ふわふわとしたススキは恐ろしくもあったようで、とりわけ枯れたススキは恐怖を誘ったようです、「化物の正躰見たり枯れ尾花」という言葉も残されています。
以上、『Ghost of Tsushima』に登場する様々な花の一部をご紹介しました。本作では自然を日本の象徴の一つとして表現しており、そのこだわりは細部にまで及んでいます。厳しい戦いの合間に足を止め、日本の自然に思いをはせるのも充実したゲーム体験となるのではないでしょうか?
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