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2月24日にサービス開始したスマホ向け育成シミュレーション『ウマ娘 プリティーダービー(以下、ウマ娘)』。Cygamesが手掛ける本作は、実在する名競走馬の名前と魂を受け継ぐ美少女たち“ウマ娘”が多数登場。主人公は新米トレーナーとなり、そんな彼女たちと一緒に、国民的スポーツ・エンターテインメント<トゥインクル・シリーズ>での勝利を目指していきます。
ゲームのほかにもアニメ、漫画などメディアミックス展開をする本作ですが、クラシック三冠馬や海外G1優勝馬など、名だたる競走馬を引き継ぐウマ娘が登場するなかで“異質”と言えるキャラクターがいます。それが「ハルウララ」です。
「ハルウララ」の弱小伝説
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ほかのウマ娘がモチーフとする名競走馬達に対して「ハルウララ」は、“重賞”と呼ばれる特別なレースに勝ったことがありません。もっと言うと、実際の競走馬・ハルウララはレースで勝ったことがありません。ただの一度もです。そうして重なった連敗数はなんと“113”。これは日本競馬界歴代2位の連敗記録となっています。
本記事ではそんな“ハルウララ弱小伝説”について、本作と実際の彼女を重ね合わせながら解説していきましょう。
現実でもアニメ、ゲームでも負け続けちゃうけど
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チュートリアルで流れるレースでの人気は最下位。そしていざレースが始まれば他のウマ娘に圧倒的大差をつけられてしまうなど、ハルウララはそのキャラクター性をゲーム開始直後からまざまざと示します。
では実際の彼女のデビュー戦はどうだったかというと、高知競馬場の第1競走で5頭中5位。これは2019年7月~12月に放送されたアニメ版「ウマ娘」第一期でもオマージュされています。そのまま連敗街道を走り続けることには違いないのですが、とはいえ一部誤解があるのは、彼女はなにも最下位続きだったわけではありません。
高知競馬場という地方競馬場を主戦場としていたハルウララは、2着を5回、3着を7回など、幾度か惜しいレースも経験しています。ほかに実力のある出走馬がいないことがあったので、善戦する機会も少なくなかったのです。ただし、1位だけは最後の最後まで掴み取ることができませんでした。
走り続ける姿に、誰もが惹かれていった
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それでもハルウララは負けても負けても走り続けました。一般的な競走馬であれば良くて1年に10回レースで走れるかどうかに対し、彼女は1年間に約20回もレースに出たのです。それほどまで脚が頑丈だったとも言えます。
実は競走馬はレースに出走さえすれば、順位に関係なく一定額の“出走手当”が出ます。それ単体の金額は大したものではありませんが、ハルウララは出走を重ねることで維持費を賄うことに成功します。それが引退の回避につながりました。
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その魂は勿論『ウマ娘』のハルウララにも引き継がれています。ゲームでの彼女は、少し休めばケロッと復活して次のレースへの意気込みを語ってくれます。
そして、彼女がそんな活動を続けていると、高知競馬場が「負け続ける馬」として宣伝するように。その影響でハルウララの噂がジワジワと拡がり、100連敗を達成する頃には全国にその名を轟かせるほどになっていました。筆者も当時のブームを体験しましたが、G1を勝利した馬は知らなくても、ハルウララの名前は知っているという人が非常に多かったことを覚えています。
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ただ、負け続けたことがハルウララブームの要因になったのかと言われれば、間違いなくNOです。その最大の理由は彼女の“レースでの懸命な姿に心惹かれたから”でしょう。
彼女との関わりが深い馬主、調教師が「競走馬ハルウララはレースで手を抜く事はなく、一生懸命勝つ為に走っている」と口を揃えたように、トップをあきらめないでひたむきに走り続ける様子こそが、就職氷河期だった当時の時代背景とも重なり、たくさんの人々の支持を集めたのです。
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そして『ウマ娘』のハルウララも同じく、大敗北を喫しても「次は勝つ!」と前向きな姿勢を見せてくれます。そんな姿に、当時多くの日本人がそうだったようにプレイヤーは元気付けられます。
連戦連敗でも「今日もウララかケセラセラ!」
さて競走馬・ハルウララのその後についてですが、合計113回のレースで1度も勝利を掴むことなく引退に。現在は支援団体「春うららの会」の手により千葉県のファームで余生を過ごしています。
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113回負けても、114回目は勝てるかもしれない。
筆者は、本作を通じて彼女の夢を叶えてあげたいと思っています。かつていっぱいの元気を授けてくれた彼女。その魂を引き継ぐ『ウマ娘』のハルウララを通して恩返しがしたいのです。目指すは八大競争での「うららん一等賞」へ。そんなプレイヤーはきっと少なくないはずです。