かつての名作が新たな装いをまとい、現行のゲームハードやPCに蘇る──こういった流れが昨今のゲーム業界において、確固たる支持を集めています。
オリジナル版のファンからすれば、思い入れのある作品と再会できる機会となりますし、未経験のユーザーにとっては、当時の名作を最新の環境で楽しめる絶好のチャンス。いずれにとっても、喜ばしい展開と言えるでしょう。
6月24日に発売される『聖剣伝説 Legend of Mana(レジェンド オブ マナ)』(以下、聖剣伝説 LoM)も、HDリマスター化を果たして登場する、かつての名作のひとつ。オリジナル版が初代プレイステーションソフトとしてリリースされてから20年以上の時を経て、今回ニンテンドースイッチ/PS4/PC(Steam)向けに登場します。
当時のPSユーザーを虜にしたアクションRPGは、果たしてどのような形となって復活を果たすのか。発売に先駆けて本作をプレイする機会に恵まれたので、本作のプレイ感や魅力に迫るレポートを今回お届けします。
独創的な本作の特徴や追加された新要素など、それぞれポイントを絞ってピックアップ。発売迫る話題作の魅力を、こちらでチェックしてみてください。なお、ストーリーの詳細については触れませんが、まっさらの状態で楽しみたいという方は、記事の閲覧を避けていただければと思います。
■『聖剣伝説 LoM』で創る、“あなただけの世界”
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本作を初めて起動した時、ゲーム内世界には何もありません。オリジナル版が出た当時、前情報なしにプレイした方は、この出だしに驚く方が多くいました。もちろんその形は、本作にもしっかりと受け継がれています。
作中の表現を借りて補足すると、世界の見え方は個々人で異なっており、それは主人公(=プレイヤー)にとっても同様。拠点となる「マイホーム」がこの世界のどこにあるのか、それすらもプレイヤー自身が決めなければいけませんし、自由に決めていいのです。
世界を創造していく「ランドメイク」システムにより、この世界の形は無数の可能性を秘めています。といっても、実際のプレイにおいて複雑な手順はありません。「アーティファクト」と呼ばれるオブジェクト(マイホームもそのひとつ)を、好きな場所に設置するだけ。あなただけの世界の形を、手軽に創造することができます。
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物語が進行すると、ほかの町やダンジョンも「アーティファクト」として手に入るので、マイホームの周りを町だらけにするもよし、ダンジョンに囲まれるもよし。もちろん、利便性を重視した作りにするのもアリです。
ゲーム性を突き詰めていくと、「アーティファクト」の置き方は攻略や育成に関わる要素となります。ですが、置き方によって行き詰まることはまずないので、少なくとも最初のプレイは、事前に情報などを調べずに直感で楽しむのがオススメです。
「完璧にプレイしないと気が済まない」という方もいるかと思いますが、どうかご安心を。この『聖剣伝説 LoM』は、育成状況などを引き継いだ上での2周目、3周目が可能なので、繰り返すたびに世界を何度でも作り直せます。
■この世界を彩るのは、“あなただけの物語”
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「ランドメイク」システムで作り上げた町やダンジョンに入ったり、特定の人物に話しかけると、イベントが発生します。発生条件は様々ですが、いわゆるフリーシナリオのような形に近く、どのイベントが発生するかはプレイによって大きく変わります。
イベントの中には、単発ではなく一つの物語を複数のイベントで描いているものもあり、その順番が前後することはありません。ですが、個々のイベントがいつ発生するかは、プレイの内容次第。発生条件が分かっていれば、任意のタイミングで進行させることも可能なほど、自由度が高く設定されています。
また、登場するキャラクターたちも非常に特徴的な面々ばかり。振る舞いや考え方、台詞などが印象深く、その個性が物語に深みを加えてくれます。
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例えば、商人の「ニキータ」はあくどい商売も辞さないため、このままではただの嫌われキャラになりかねません。ですが、価格の高さに尻込みした相手に向けて「お金はまっ先に出て行って、最後にもどってくるモノにゃ。お金の使い方、おぼえるにゃ」と切り返す場面などは、思わず納得してしまうほど。
こういった個性の厚みは、特にはコミカル、時にはシリアスな形をとりながら、物語の全般にわたって感じさせてくれます。また、登場するキャラクターの多くがイベントに関わっているため、個々のキャラだけでなく、この世界全体に自然と愛着が湧いてきます。
ちなみに、プレイ状況によって特定のイベントが発生しない場合もあります。が、こちらも2周目以降のプレイでやり直しが出来るので、焦る必要はなし。どのイベントに出会い、そして出会えないのも、あなただけの巡り合わせです。周回で取り返しが利くので、安心して世界を放浪できるのも、『聖剣伝説 LoM』が持つ魅力のひとつです。
■強敵に立ち向かう助けとなるのは、“あなただけの戦力”
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アクションRPGと一口に言っても様々あり、カメラの視点だけでも一人称・三人称・俯瞰と大きく異なります。昨今だと、一人称・三人称の3Dアクションゲームも数多く、シリーズでは前作に当たるリメイク作『聖剣伝説3 TRIALS of MANA』も、三人称視点の3Dアクションゲームとして生まれ変わりました。
本作『聖剣伝説 LoM』のアクション性は、俯瞰視点の2Dアクションです。奥行きがあり、ジャンプも可能なので立体的な空間でのバトルではありますが、奥方向や手前方向に攻撃することができず、攻撃方向は左右のみ。この部分だけ切り取るならば、ベルトスクロールアクションを連想してもらえれば分かりやすいかと思います。
アクションRPGと言えば、スピーディ&スタイリッシュな作品もありますが、本作はひとつひとつの攻撃を丁寧に積み上げつつ、相手の動きを見て立ち回るタイプのアクション。そのため、一見した時に派手さには欠けますが、瞬間的な反射神経よりも判断力に重きを置くアクション性なので、スピーディなバトルが苦手な方でも楽しめる間口の広さは嬉しいポイントでしょう。
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また、アクション自体は非常に豊富で、攻撃の軸となる「弱攻撃」「強攻撃」に加え、「アクションアビリティ」「コマンド技」「必殺技」「魔法」など、戦闘中に行動できる選択肢は実に豊富。「弱攻撃」「強攻撃」は武器(全11種類)ごとに異なるモーションがありますし、アビリティや必殺技は戦闘を通して新しいものをどんどん取得できます。
そして「楽器」を作成すれば、戦闘中に魔法が使えるようになります。作成する時の素材によって効果が変わるので、自分の戦い方に合わせた魔法を作り出すのも可能です。
ちなみに、楽器(魔法)に加え武器や防具も作成できます。当時、武器をとことん鍛え上げる楽しさに没頭したユーザーも少なくありません。励めば励むほど結果に反映されるので、ハマってしまうのも無理のない話でしょう。
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強敵が待つ冒険を助けてくれるのは、武具や魔法に限った話ではありません。モンスターのヒナを育成する「ペット」や、その手で作り上げる戦闘用魔法生物「ゴーレム」なども重要な存在です。いずれも、育成や作成に手間がかかりますが、その労力以上の恩恵を返してくれますし、手塩にかけて育てたペットやゴーレムは、我が子のように自慢したくなること間違いなし。
的確な判断で、丁寧に積み上げる2Dアクション。その助けとなるのが、武具や魔法の作成、ペットやゴーレムなどの存在です。鍛えれば鍛えるほど、プレイヤーの戦いを大いに支えてくれます。戦力の強化方法が豊富に用意されているため、どんな戦力で挑むのかも、プレイヤーによって千差万別。あなただけの戦い方が追求できるのも、『聖剣伝説 LoM』の醍醐味です。
そしてもうひとつ、大事なポイントとして伝えておきたいのが、「作成・育成は必須ではない」という点です。前述の通り、戦力の強化手段は多岐にわたりますが、仮に武具を作らず店売りやバトル終了時のドロップ報酬などで手に入る武器・防具だけも、クリアは十分できます。
もちろん、その分厳しさは増しますが、「武具の作成とか面倒そう……」と感じる方でも楽しめるのが『聖剣伝説 LoM』です。「用意したコンテンツを活用しなくてもいい」という包容力の高さも、見逃せません。
■様々な形で描かれる“あなただけの冒険”に、どんな要素が加わった?
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HDリマスター版『聖剣伝説 LoM』をプレイし、その特徴や魅力に改めてご紹介しました。ですが、ここまでについては、(遊びやすさや操作感の違いはあっても)オリジナル版にも備わっていた要素。そこで本稿の締めくくりとして、リマスター版で追加された要素につい触れたいと思います。
まず一見して分かるのは、その見た目でしょう。背景データやUIの一部が描き直されてHD化。暖かみのある絵作りはそのままに、『聖剣伝説 LoM』の世界がより鮮明で美しく描かれています。また、画面比も4:3から16:9になり、見やすさも大きくアップしました。
また、画像を見るだけでは分かりませんが、ほとんどのBGMもアレンジされ、冒険を新たな楽曲が支えてくれます。しかも、設定画面でアレンジ版とオリジナル版の切り替えが出来るため、オリジナル版のBGMに愛着がある方は、当時の楽曲で楽しむことが可能です。
さらに、曲だけをじっくり楽しみたい時には、新たに実装されたミュージックモードがオススメです。オリジナル版の発売時のイラストなどを収録したギャラリーモードもあるので、気分に合わせてお楽しみください。
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そして、ゲームプレイに大きく関わる追加要素もあります。まずは、「エンカウントOFF機能」。本作は敵と出会うと逃げられませんが、この機能を使えばそもそも敵と出会わずに済みます。LVを上げたい時はこの機能を使わず、探索重視や2周目以降の時に活用するなど、使い分けるのがオススメです。
オリジナル版では、決まった場所/タイミングでしかセーブできませんでしたが、リマスター版はオプションメニューからのセーブが可能に。一部の状態を除き、いつでもセーブできるようになりました。加えて、オートセーブにも対応しているので、万が一の事態もフォローしてくれます。
最後に紹介するのは、「リング・りんぐ・ランド」のゲーム内実装です。当時、携帯型ゲームハード「ポケットステーション」でしかプレイできなかったこのミニゲームも、本作ならばゲーム内でプレイが可能に。作成や育成に使えるレアアイテムが手に入る貴重な手段なので、プレイする際は存分にご活用ください!
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オリジナル版の時点で、独自の魅力が満載だった『聖剣伝説 LoM』。その特徴的なポイントは、リマスター版になっても健在でした。上下の軸移動で攻撃をかわし、判断力で攻撃を積み上げる戦闘や、やり込み要素の域に達する作成・育成の奥深さ、自由度の高いイベントと個性的なキャラクターが織りなす物語、いずれも変わらぬ輝きを放っています。
その魅力を継承し、ビジュアル・利便性をパワーアップさせ、プレイ環境も大きく広がったリマスター版『聖剣伝説 LoM』は、時代を経ても変わらない個性が、遊びやすくなって帰ってきた1作と言えます。「おかえり」のファンはもちろん、「はじめまして」の方にとっても、本作のプレイ体験は印象深いものとなることでしょう。