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依然として続く自粛生活で“ゲームに費やす時間が増えた”という人も多いのでは?
ゲームは長く遊ぶほど、思うようにいかない場面と巡り合ってしまうもの。ストレス解消目的で始めたはずなのに、気付けばかえってイライラしてしまっていた……なんて経験は誰しもありますよね。
かくいう筆者も、ふとマウスやコントローラーを握る手についつい力が……なんてことは数知れず。「熱中している証拠だし、仕方ないのかな?」と諦めつつさえいたのですが、当然ながらポジティブな気分でプレイした方が、自分にとっても周辺機器にとっても健全なのは間違いありません。ある調査ではパフォーマンスにも影響が出てしまうという報告も。
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何とか平常心を維持し続けられないものか……。そんなことを考えていると、ある人物が筆者の目に飛び込んできました。それは「にじさんじ」所属のバーチャルライバーで、ゲーム実況者界隈でも屈指の長時間配信を持ち味とする「鈴原るる」さんです。
彼女は、数々の実況者を苦しめてきた“壺おじさん”こと『Getting Over It』を約28時間の挑戦の末にクリアしたかと思えば、2020年の大晦日からスタートした『Jump King』は30時間オーバーの長丁場を乗り越え、見事エンディングに辿り着きました。そう、彼女の長時間配信は決して“のらりくらり”の産物ではありません。多くの人が途中で挫折した高難度ゲームばかりを“不屈の精神”でプレイしているが故に、必然的に長時間配信へと転じてしまっているのです。
そして、そんな鈴原さんの最大の特徴は、どれだけ長時間になろうが同じエリアで停滞しようが振り出しに戻ろうが、明るく楽しい一定のテンションを常に保ち続けていること。これだけ穏やかにゲームを続けられる姿にはいちゲーマーとして驚きと尊敬を禁じ得ません。
そこで今回は鈴原さんからゲームをプレイする上での心構えを学び、ゲームに役立つアンガーマネジメントとしてご紹介しましょう。
STEP1:とりあえずぶつかってみるる!“ハードルを高くしすぎない”思考術
本題の前に心理学的なお話からスタートすると、「アンガーマネジメント」――つまり怒りの感情をコントロールは「イライラの原因を理解する」ことから始まります。これはゲームに限った話ではありませんが、日常で頻繁にストレスを感じる原因のひとつとして「理想と現実のギャップ」に惑わされていることがよく挙げられます。
対戦格闘ゲームや一人で遊ぶRPGなどジャンルは様々ありますが、思い通りの操作ができないときに、ついイライラしてしまうのはどのゲームにも共通することですよね。それは「自分のやりたい操作(=理想)に対して、相手や難易度というハードル(=現実)が高すぎる」というギャップに苦しんでいると言えます。
とはいえ世の中には、プレイヤーに試練を課すことを目的とした高難度ゲームも数多く存在します。そんなゲームの代表格と言えば、ハンマーを振り回しながら山を登っていく『Getting Over It』。このゲームの操作法は「マウスを動かしてハンマーを振る」だけですが、思い通りに動かすことが非常に難しく、僅かでも操作を誤れば、壺おじさんは時間をかけてのぼってきた道のりを滑り落ちてしまいます。
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このゲーム性には筆者を含む世界中のゲーマーが「攻略法は分かっているのに思い通り動かせない!」と悲鳴をあげ、既にクリアしたエリアをやり直す作業にイライラを募らせたものでした。しかし、お手本となる鈴原さんの「壺おじさん」配信を見返してみると、数えきれないほどの落下に、残念がることはあってもテンションが乱れる気配は全くありません。
筆者なりにこの要因を分析しましたが、どうにも「プレイした分だけ進む・上達するはず」という理想に縛られていないことが理由なのではないでしょうか。
繰り返しのプレイが求められるゲームでは、誰もが「これだけ時間をかけたら上手くなるだろう」と、かけた時間に応じて自分に課すハードルを上げてしまいがちです。しかし、どれだけ時間がかけても鈴原さんは、決してそのハードルを上げないのです。
かつ鈴原さんはあまり、配信前にゲーム情報についてリサーチするようなことをしません。同配信も「すごく難しいゲームらしい」という前情報のみでチャレンジしており、ゲーム性や攻略法はプレイしながら学んでいくスタイルをモットーとしています。
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これは捉え方を変えれば、他人の上手いプレイ動画を気にしていないということ。そのため、序盤で躓いてしまったとしても自分への平常心をキープできるのではないでしょうか。ちなみに、あまりに前情報を仕入れていないが故に起こったエピソードもあります。彼女は最初、ゲームパッドでの本作プレイを検討していました。
STEP2:「なんで~?」が生み出す好循環―イライラの衝動をコントロール
ゲームを穏やかに楽しむには“怒らないように意識すること”ではなく、“イライラする気持ちと付き合っていくこと”が肝心。その代表的なコツとして「6秒ルール」というものがあります。
これはざっくり言うと「イライラする気持ちのピークは長く続いても“6秒”なので、いったん心を落ち着かせることが重要」というもの。どれだけカッとなっていても、強い感情というのは一時的なものに過ぎないのです。
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では、“いったん心を落ち着かせる”にはどうすればいいのでしょうか。「深呼吸して一息つく」や「別の好きなモノのことを考える」というのも正しい手段ですが、特に効果的なのは「何故モヤモヤするような結果になってしまったのか」と自己分析することです。
さて、改めて鈴原さんの配信を振り返ってみましょう。彼女は操作ミスやゲームオーバーに遭遇するたび「なんで~?」という独特の、ゆったりとしたリアクションを見せます。
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そして多くのケースで、このタイミングで視聴者コメントを確認。これが天然の「6秒ルール」になっているのです。かつ毎回のように「なんで落ちちゃったんだろう?」「今のダメだったね~」とプレイを振り返っているのも大事なポイントです。
とはいえ、いきなり鈴原さんレベルの失敗に動じなくなるムーブを身に着けるのは簡単ではありません。「大丈夫」や「気にしない気にしない」など、ポジティブなワードを呟くだけでも効果的と言われているので、まずゲーマーの皆さんは、次のプレイへとポジティブに切り替えれるフレーズを口ずさむように心がけ、徐々に鈴原さんの「なんで~?」の境地へと至りましょう。
STEP3:色々紹介したけど“自分なりの楽しみ方”こそが最強
さて、ここまで鈴原さんが“なぜ失敗しても穏やかな心でいられるか”を分析してきましたが、彼女が明るく楽しく長くゲームプレイを続けられるコツは他にもあると、筆者は分析しています。それは、どんな場面でも「自分なりの楽しいポイント」を発見していることです。
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前述した『Getting Over It』の配信では、終盤エリアから一気に振り出しまで戻されてしまっても「ただいま~。ここ懐かしいね」と初期エリアとの再会を懐かしんだり、『Jump King』配信では、無限に続くジャンプ操作を「つったーん」と表現することでオリジナルソングを作りだしたりしました。
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アンガーマネジメントでは「コントロールできない現実を受け入れ、今できることを探す」ことが重要とされています。どんなに理不尽なリセットでもすぐに受け入れ、むしろその出来事を面白おかしく料理してしまう鈴原さんは、その姿勢を体現していると言えるでしょう。
そして、この「自分なりの楽しみ方」こそが鈴原さんの魅力であると筆者は考えます。視聴者が「詰んだ」「無理では?」と思ってしまう状況を、楽しくひたむきなプレイで打開していく様に、多くのファンが惹きつけられました。
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最後に、そんな鈴原るるさんは本日6月30日をもって活動を引退されます。実は本記事は、彼女がチャンネル登録者数50万人を突破するタイミングで掲載を予定していたものですが、彼女の一時活動休止などの事情もあって公開を見送っていました。
どんなに難しくても、どんなに時間がかかっても、ひたむきに“ゲームを楽しむ姿”を見せ続けることで、ファンを楽しませてくれた鈴原るるさん。そんな彼女に敬意を込めて、筆者は「鈴原式アンガーマネジメント」を心掛け続けたいと思います。