『Horizon Forbidden West』は、SIEワールドワイド・スタジオのひとつ、ゲリラゲームズの最新作であり、前作『Horizon Zero Dawn』の正統続編だ。これまで踏み入ることのなかった西部へと舞台を広げ、脅威を増した機械獣との戦いや、果ては民族同士の争いなど、『Horizon』が持つアイデンティティとスケールを数段アップグレードした作品になっている。2022年2月18日の発売に先駆けて、先行プレイする機会に恵まれたので、本稿ではそのインプレッションをお届けする。物語の核心に触れるつもりはないので、安心して読み進めてほしい。

終わらないアーロイの物語
はじめに、本作は前作の続編であることを強調したい。前作で邪悪なAI「ハデス」の脅威から世界を救ったアーロイだったが、地の腐食は進み、世界の終わりは刻一刻と迫っていた。散り散りになったガイアの副次機能を取り戻すため、西部へ進む。というのが本作の導入だ。アーロイの旅を手助けするのは、ノラのヴァールやオセラムのエレンドなど、前作から引き継ぎの登場人物も多い。ゲーム冒頭で振り返りのムービーが挿入されているが、前作をプレイしておくことを強くおすすめする。

フォトモードが止まらない
本作の主な舞台となるアメリカ西部は、メインアートでも描かれるゴールデンゲートブリッジを有するサンフランシスコや、荒野が続くネバダ州などが含まれる。広大な面積を舞台としていることもあり、ロケーションの数と美しさは、本作で一番最初に目にするわかりやすい注目ポイントだ。特に物語の導入では、本作の世界がどこまでも続くことを想わせる絶景が広がり、冒険の始まりを演出している。

前作に続きフォトモードも実装されており、新しい場所へ着いたらまずはフォトモードを起動したくなるほど。誇張でなく、プレイ時間の3割程度はフォトモードで過ごした気分だ。

そんなフォトモードを際立たせるのは景色だけでなく、機械獣や人間の作り込みだ。動物のような形状ながら、全身が機械で構成された機械獣が持つ独特の美しさはもちろん、アーロイを含む人々の造形も見事だ。フォトモードでドアップにしても、肌の質感や細かい毛などもしっかりと表現されている。

世界への“リスペクト”
また、本シリーズは近未来SFの更に未来を舞台とし、現代のクルマやハイウェイ、建物の残骸などが散見される。その上で原始的な民族たちが独自のコミュニティを形成している様も、本作の大きな魅力である。とりわけ、登場する民族は丁寧に描かれている印象だ。誕生と同時に植物の種を与えられ、死を迎えるとその種を植える文化を持つウタル族や、戦いに生きるテナークス族など、彼らの文化は世界観設定に留まらず、ビジュアルや音楽、ストーリー的にも主張してくる。特にウタル族の拠点である「歌の平原」は、オンボーカルの賛美歌のような音楽が響き渡り、彼らの死生観が感じられる。アーロイが彼らの文化を尊重しているかは別問題だが、この世界で生きる人々に対し、大きなリスペクトと愛を持って創られたゲームであることをひしひしと感じる。

オープンワールドゲームで描かれる本作だが、そのデザインにも触れておきたい。物語はメインクエストを通じて紡がれていくが、それらの距離は大きく離れている。メインクエストで訪れる拠点や野営地などでサイド/サブクエストを得て、次のメインクエストまでの道中でそれをこなしつつ、アーロイが成長し、物語を進めるようデザインされている。世界がそこにあることを上手く活かしたデザインは、オープンワールドゲームである意味を感じさせる。前作に続き、周囲のマップ情報を得る「トールネック」も健在だ。ただ登るだけではないギミックの数々も用意され、作業になりにくい工夫も見られる。

また、サイドクエストの密度はかなり濃い。単純な機械獣との戦いに頼らない、しっかりとした物語が描かれるサイドクエストは、民族内の対立や、民族の価値観との出会いなど、世界観を深堀りするものが多く、これらをプレイすることで、この世界がもっと好きになるだろう。

立体感が増したアクション
これまで通り、弓やトラップキャスター、スリングを駆使した「狩り」の楽しさは健在だ。フォーカスで機械獣の弱点を見つけ出し、的確な射撃や状態異常で大きなダメージを狙う戦いは、難易度が高いが、戦い甲斐がある。しっかりと弱点を見極めてトライアンドエラーを繰り返す歯ごたえを楽しむため、ノーマル以上でのプレイを勧めたい。

前作に続き槍による近接攻撃と弓を始めとした遠距離武器がメインになるが、本作は「プルキャスター」と呼ばれるグラップルフックのようなガジェットも登場し、高い場所へ簡単にアクセスが可能になった。そこから大きく跳躍することで、より高い場所へ翔ぶこともできる。パラセールのような役割を持つ「シールドウィング」を活用すればどんな高い場所から降下してもダメージを食らわないだけでなく、遠い敵に空中から近づいて攻撃を与えることができる。

このように、戦いが立体的になったことも本作の特徴のひとつだ。また、近接攻撃によって槍にエネルギーが溜まり、敵に対し「レゾネーターブラスト」を放つこともできる。これは攻撃を重ねることでエネルギーを敵に与え、その部位を弓で攻撃することで大きなダメージを与えるというものであり、近接攻撃と遠距離攻撃を上手く組み合わせるメリットが生まれている。それらをしっかりと学ぶことができる訓練場も、世界各地に存在しているため、積極的にこなして、戦いを有利に進めたい。

PS5による恩恵
本稿は冒頭で触れた通り、PS5版でのプレイを元に執筆している。PS5のコントローラーである「DualSense」が持つハプティックフィードバックによる細かな振動表現は、特にカットシーンの臨場感を高めてくれる。カットシーンで気を抜いてコントローラーを机に置くと振動で落ちるほどだ。R2・L2に仕込まれたアダプティブトリガーでは、R2で弓を引き絞る感覚や、槍で扉をこじ開ける際の感触が得られる。また、3Dオーディオの恩恵か、野生生物を狩る際に背後にいる猪の鳴き声で察知するという、実際の狩りのような感覚を味わうことができた。本当にフォーカスから聞こえてくるような無線の声など、音作りにはこだわりが感じられる。
なお、グラフィック設定にはより高いフレームレートでプレイする「パフォーマンス優先」か、より高い解像度でプレイする「解像度優先」の2つから選択できる。本稿に掲載しているスクリーンショットは、解像度優先で撮影している。

設定項目の「アクセシビリティ」では、ゲームを遊びやすくする項目が盛り込まれている。特にクエストの道順を丁寧に表示する「誘導」と、最小限のアイコンのみでプレイヤーが手探りで冒険する「探索」を設定できる「クエストパス」が便利だ。状況に応じて使い分けていきたい。その他、トリガーの強さの強弱やダッシュの自動化など、ゲームを始める前に確認しておきたい。
ウェルメイドなオープンワールドアクションゲーム

本作を数十時間、サイドクエストや収集要素を含め丁寧に遊んでいると、完成度の高さがうかがえる。メインクエストの合間に配置されたサイドクエストや拠点制圧のちょうどよい距離感だけでなく、赴く先々に在る人々の思いや生活、バックグラウンドが克明に描かれた世界は、オープンワールドとしての魅力とその意味をしっかりと持っている。随所に挟まる機械獣との戦いは、ただHPを削りあうだけでなく、しっかりと観察して弱点を突くことが求められる「狩り」である点も、アクションゲームとして独特の楽しさを持っている。なにより、我々が普段目にする生活の一部が古の遺物として描かれている『Horizon』の世界は、歩いているだけでワクワクするだろう。
冒頭でも触れた通り、『Horizon Forbidden West』は前作の正統続編だ。前作のスケールと物語を拡張するだけでなく、オープンワールドゲームとして、アクションゲームとして、その完成度を磨き上げた作品である印象を受けた。弊誌では後日、物語やアクションを深堀りしたレビューを掲載予定だ。そちらも楽しみにして欲しい。
『Horizon Forbidden West』は、PS5/PS4向けに2月18日発売予定だ。
※UPDATE(2022年2月14日 19:55):本文中の誤字を修正しました。コメントでのご指摘ありがとうございます。