
現在大きく注目を集めるVTuber・バーチャルタレントシーンにおいて、強烈な存在感でシーンを牽引している事務所・ホロライブ。
日本・海外合わせて54名のメンバーが活動しており、生配信での活気ある活動を中心に、音楽活動・ライブ出演・テレビ出演・企業PRなどにも積極的で、その強いタレント力でシーンに新しい道を作り続けてきました。
そんな「生配信での活気ある活動」のお供になるのが、多種多彩なゲーム作品。プロと見まがうほどに上手な方もいれば、「どうしてそんなプレイを?」と思えるほどに苦手な方もいたりと、所属タレントによってさまざま。
なにより彼女らの配信を通じてゲーム作品に触れる人も大多数いるので、「ゲームを楽しむ入口」として確かに機能しています。そこでインサイドのバーチャルタレント連載では、今後はホロライブ所属タレントにもフィーチャーし、多彩な魅力について記していきます。
今回紹介するのは、星街すいせいさんと『テトリス』です。
◆星街すいせい 抜群に輝き始めた歌唱力とスター街道の始まり
彼女の活動スタートは2018年3月18日、YouTubeに初めて動画を投稿したのは3月22日。「日本武道館でライブを開催すること」を目標に掲げ、歌動画を中心に地道な活動を続けていました。
その後ホロライブのイノナカミュージックに所属するようになると、徐々にその知名度をあげ、2020年3月22日にデビュー2周年記念ソング「NEXT COLOR PLANET」などのオリジナル曲をリリース。2021年9月29日には表題曲「Stellar Stellar」を引っ提げた1stアルバム『Still Still Stellar』をリリース、2021年10月21日には豊洲ピットでファーストソロライブ『STELLAR into the GALAXY』開催にこぎつけました。
他にも、「Stellar Stellar」や「3時12分」などでタッグを組んだトラックメイカーTAKU INOUEと、2022年からMidnight Grand Orchestra(略称:ミドグラ)という2人組ユニットとして活動をスタート。2022年7月27日にミドグラとしてのファーストミニアルバム『Overture』をリリース、2022年8月20日にはファーストライブを敢行しました。
その他にも客演としてボーカルを務めていることも含めれば、この2年ほどでもっともその才覚を知らしめたVSingerのひとりといっても過言ではなく、彼女の高品位な音楽・歌声がシーン内外へと伝わっている真っ只中にあると言えます。8月19日には音楽番組「バズリズム02」にゲスト出演、今後インターネットを飛び越えて彼女が活躍する場面が増えそうです。
そんな彼女は現在ホロライブに所属しており、他メンバーと同様にゲーム配信をしているわけですが、彼女とゲーム配信を繋ぐタイトルとして真っ先に挙がるのが『テトリス』です。
◆星街すいせい×テトリス 活動初期からみせていたテトリス愛
1984年にソビエト連邦(現:ロシア連邦)内で制作された教育用ソフトウェアだった『テトリス』は、現在では落ち物パズルゲームの元祖として名を馳せ、世界的にも知られる大定番ゲームとして広まっています。
そんなテトリスを星街さんはデビュー当初から愛好していることを公言していました。当時にもYouTubeの生配信でテトリスをプレイしていたようですが、残念ながら非公開となっている事が多く、いま現在からしっかりとした確認を取ることがしづらい状態です。
そこで今回の記事では、Twitterでのツイートなどから遡ってみましょう。
Twitter上で初めてテトリスについて言及したのは、2018年4月14日のこと。その後に何度となくテトリスについて言及しています。
自身のチャンネルで初めてテトリス配信をしたのは、2018年11月9日のこと。VTuberのルピナス・ナイトリーさんと共に、視聴者参加型企画として生配信したのが始まりです。視聴者に向けてルームの参加方法をツイートするなどしています。
ここ1年ほどで彼女やVTuber/バーチャルタレントを知った人には信じられないと思いますが、彼女がデビューした2018年始めの頃は、「VTuberはゲーム配信をしていない」ことのほうが多い状況でした。そこから徐々に1年ほどの時間が経ってシーン全体でゲーム配信が増えていく中で、2019年に彼女はこんなことをツイートしています。
仮に自分がゲーム配信を積極的にやることになるなら、やはり得意ゲームが盛り上がることが一番。当時のプレイングを現在から確認することは先にも述べたように難しいですが、Twitter上でプレイ動画・画像をいくつかツイートしています。
とくに最初の動画では、相手をわずか20秒ほどで倒してしまっています。
読者のなかにはもちろんテトリスをプレイした方はいるかと思いますが、スタートしてから20秒ほどで相手を倒してしまうほどのプレイスキルがある人に出会ったことはあるでしょうか?もちろんプロプレイヤーならば事も無げにやってのけそうですが、あくまで一般プレイヤーに過ぎない女性VTuberでここまで上手いとなると、やはり異質に見えてきます。
2019年5月19日には、ホロライブ内の音楽レーベル「イノナカミュージック」に所属が発表。その後にも、折を見てテトリス配信を実施、VIPルームで1位を何度もゲットしてみたりとその腕前を存分に発揮しています。
Twitterを使って過去にさかのぼって調べてみましたが、事前に「テトリスをプレイする」と予告してゲーム配信をしているのは、2018年3月にデビューしてから2019年末までの1年9か月のなかで約15回ほどしかありません。
むしろ自身の雑談配信において、「テトリスをプレイしながらおしゃべりをしていた」ことも多くあったようで、当時のリスナーにとって「すいちゃん(彼女の愛称)のテトリス愛」はしっかりと伝わっていたと思われます。
歌動画を投稿してVSingerとしての評価を高めつつ、ゲーム配信もしっかりとこなす彼女。2019年12月1日にイノナカミュージックからホロライブへと転籍します。ちなみに現在アーカイブ動画として残っている最古のテトリス配信動画は、ホロライブへ転籍した翌日となる2019年12月2日に生配信されたものです。
それまでにもホロライブのメンバーらを中心に多くのVTuberの方々とテトリス配信を見せていましたが、そのどれもが圧勝・圧巻の連続。ホロライブで1番のテトリスプレイヤーとして、メンバーやファンが認める存在へとなっていきます。
リスナーと他愛のない雑談をしながら相手を倒すのはもちろんのこと、T字ブロックを隙間に差し込んで消す「T-SPIN」を無理なくやってみるのも朝飯前。むしろT-SPINを狙ってブロックを置き、そこにT-SPINでT字ブロックを差し込んで2列・3列消していくこともあるなど、明らかに超上級者のプレイングをみせていきます。
◆星街すいせい、神と邂逅す
そんな「星街すいせい×テトリス」の関係に更なる注目が集まるようになったのは、とある人物が彼女の配信を覗くようになったことが大きく影響しています。それは2020年2月11日の配信のことです。
ニンテンドーSwitchで販売されている『テトリス99』は、98人の対戦者と一斉に対戦して1位を決める、合計99人によるオンライン対戦ゲームです。
『テトリス99』には、ゲーム内で1位を取った経験のある人しか入れない「VIP戦」という限定の高ランク戦があります。その「VIP戦」で1位を取るまでの耐久プレイ配信のなかで起きました。
この日とあるタイミングでスタートした99人対戦であるプレイヤーと1vs1の最終局面に入ります。
最終局面にミスが続くと星街さんが「そりゃ人間ですから。ミスだって誰だってあります。人間辞めてるのは某たいようだけですよ!」と冗談を言います。ここで名前が挙がった「某たいよう」とは、長らく世界トップに君臨している"テトリスの神"ことあめみやたいようさんのこと。
するとちょっと時間をおいて、なんとあめみやたいようさんご本人からコメントが配信中に届きます。コメント欄は大いに盛り上がりますが、星街さんは目の前のバトルに必死。脇目もふらずプレイしていきます。
その後も中々倒しきれないなかで「この人、相当名のあるプレイヤーなんじゃないかな?」と口にしつつ熱戦を繰り広げますが、最後には星街さんが負けてしまいます。相手プレイヤーを見てみると、なんと世界ランク2位の上位ランカーであることがわかり、リスナーもコメント欄で大いに盛り上がります。
「全然相手にならなかった。レベルが違うと思う」と星街さんが話しますが、テトリスの神の御前試合で世界2位とたまたま戦って善戦するという、あまりにも出来過ぎな配信となったのです。ちなみにその後、あめみやさんもこのようなツイートをしています。
また、このような配信もありました。
配信冒頭で彼女が話しているように、ゲーム配信をしている有名ストリーマーを中心にしたスナイパーと呼ばれるプレイヤーが続出したことで、配信中のゲームプレイがかなり難しくなったことを明かしています。
そういった影響があってか、なかなか1位を取ることができず配信開始から6時間ほどになろうとしたところ、とんでもないヘルパーが登場します。
強者によるスナイプもなんのその。ここ一番のプレイ精度で相手を倒していくと、ついに1位をゲット。6時間にも及ぶプレイの影響で、終わった直後に手元をアイシングしはじめるほどでした。
「神ー!(あまみやたいようさんのこと)今度テトリス講座配信をしてくれー!」と星街さんが声に出すと、コメント欄からは「2位が神なのでは?」と突っ込まれます。2位のプレイヤーを見てみると「すいせいさんをしえん」という名前が。星街さんが「2位が神?違うと思うけどな。神ー?2位は神ですかー?」と声をかけると、ツイッターにてあめみやさんがこのようにツイートします。
同じタイミングでテトリス配信していた朝ノ瑠璃さんのところにも現れ、2人の配信をスナイプする人らを一掃したことを明かしました。
厳密にいえば、あめみやたいようさんが行なった行為も同じようにスナイプ行為と言えます。ですが、彼のスナイプ行為には「悪意」はほとんどないでしょう。テトリスを愛好する有名配信者がスナイプ行為で迷惑を被っている、そのなかで助け舟を出した。シーンを代表するプレイヤーにとって愛ある行為だと思えます。
ちなみに極度の負けず嫌いでもある星街さん。「神に支援されての1位」に納得がいかず、午前3時頃に配信を終えたあとに再度VIPランク1位にチャレンジ、見事1位になったことを報告しています。それも配信を終えてわずか1時間もしない内にです。
「配信をしない状況であれば、数戦に1回は1位を取れる」と話す彼女ですが、その言葉に偽りナシといえます。
その後、NHK番組『沼にハマってきいてみた』の2020年12月7日放送回にて2人は共演。実況・解説にもこうさんが呼ばれ、2人のテトリス愛が語られた回となりました。
「テトリス&ぷよぷよ! パズルゲームの神と人気Vチューバー登場」
https://www.nhk.jp/p/hamatta/ts/KNY2YKWLG9/episode/te/N134V284WJ/
小学生のころからゲームボーイカラーを通じて『ポケットモンスター』と『テトリス』をプレイしていた彼女。雑談をしながらのゲームプレイは当たり前、淀みなく会話をし続けたかと思えば、プロレベルに上手い相手となると言葉は少なくなり、スっと集中してプレイしていきます。
そんな彼女のテトリス配信をみて「今日も世界大会か?」といった目線の声があがることもあります。本人も割と冗談めかして話すことが多く、高レベルのアツい戦いが見れるのも楽しい反面、これらはスナイプ行為による影響が強いのもまた事実です。
それに加えて、先述したように最近ではシンガーとしての活動が充実していることもあり、現状彼女のテトリス配信はかなり頻度が低くなっている状態。今後楽しくテトリスをプレイする彼女の姿があれば、ぜひ温かく見届けていきたいところです。