2022年10月28日に発売される『バイオハザード ヴィレッジ』用ダウンロードコンテンツ『ウィンターズ エクスパンション』、そして本編とのセット版『バイオハザード ヴィレッジ ゴールドエディション』。Game*Sparkは東京ゲームショウ2022を通して、このコンテンツで追加される新規シナリオ「シャドウ オブ ローズ」を試遊しました。
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本記事ではそのインプレッションを交えつつ、「サードパーソンビュー」「シャドウ オブ ローズ」に焦点を当てた開発者インタビューをお届け。プロデューサーの川田将央氏、ディレクターの木下研人氏に質問を投げかけました。
――「ウィンターズ エクスパンション」に収録される「サードパーソンモード」について詳しくお聞かせください。三人称視点でのプレイはゲームジャンルを大きく変えることになりますが、開発時ではどのようなことを強く意識していましたか?
木下:実は、最初はやるべきとは思っていなかったんです。やはりジャンルを大きく変えますし、開発にも慎重さが求められました。前作『バイオハザード7 レジデント イービル』では“サバイバルホラー”を突き詰めるためにファーストパーソンビューを採用しましたが、それまでのシリーズ作品と大きく操作感が変わったことで「自分にはちょっと……」というお客様の声も聞こえてはいたんですよね。『バイオハザード ヴィレッジ』も同様のシステムを採用しましたけど、『バイオハザード RE:2』や『バイオハザード RE:3』のようなサードパーソンビューで遊びたいという声が聞こえたので、今回はぜひチャレンジしていこうと考えてつくりました。
川田:ファーストパーソンビューのために作り込んできた「プレイアブルキャラクターの手」以外の全身も、このサードパーソンビューで見ることになりますよね。そして『ヴィレッジ』はプレイヤーの行動数が多く、ガードやしゃがみ、ステージギミックもいろいろ用意していました。とにかくユニークアニメーションが多かったので、そこの演出的な繋ぎや遊んだときのおもしろさには力を注いでいます。『RE』シリーズと同じ品質まで高めていこうと考えて作っていたので、かなりの時間を要しました。「次もまたやってね!」と言われたら、「どうしようっかな……」と思ってしまうくらい。
――そこまでですか!かなりの作業量だったのですね。
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川田:でも、それだけ時間を注いだので、既に本編をプレイされた方にとって改めて遊ぶ価値があるものになったと思っています。すごく新鮮な気持ちで『ヴィレッジ』に再訪できるのではないかなと。
――なるほど。『バイオハザード』シリーズはタイムアタックで記録更新を狙うプレイも魅力的ですし、繰り返し遊ばれる方も多いとは思いますが、それでも大きく受け止め方が変わるモードになると。
川田:そうですね。ファーストパーソンビューと比べて周囲を見回せるので、どこから敵が来るか、またはどこにオブジェクトがあるかというのも、感じ方が変わります。タイムアタックプレイヤーにおいても、「次はどこから進むか……」と考えていくための捉え方が変わると思います。
――『ヴィレッジ』はとにかくキャラのアクションが多いということでしたが、「特にこのアクションはサードパーソンビューでの見どころ」というものがあれば教えてください。
木下:ガンアクションはひとつの見どころですね。
川田:ガンアクションだけでなく、噛みつかれたときの反撃モーションも見ていただきたいです。特に死にもの狂いで動いていたような場面は、サードパーソンビューではかなり「新しい!」と感じてもらえると思います。客観的に見ると印象も大きく変わってきますからね。
――なるほど。一人称視点と三人称視点では、キャラクターへの没入感も違うものに変わりそうですね。
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川田:感じ方で言うと、TPSのほうが「自分のキャラが画面に映っている」というところから思い入れが強くなるかもしれませんね。
木下:“自分の分身”を後ろから見ることになるので、「どのように襲われるか」「どのように進んでいくか」というのも感じ方や考え方が違ってくると思います。
――ちなみに、サードパーソンビューで「イーサンの顔」は見えるのでしょうか?これまでの作品では「絶対に顔を見せないぞ」という強いこだわりを感じましたが。
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川田:「イーサンの顔」は、ものすごく頑張って見えないように調整しました。『7』の主人公であるイーサンは「プレイヤーの分身」なのでなるべく顔を出さないようにしていまして、もちろん『ヴィレッジ』でも今回のサードパーソンビューでも同じように考えています。
木下:カメラ操作で顔の方に回り込もうとしても、きちんと背けたり角度を変えたりするようになっています。
川田:もしかしたらゲーム実況をされている方などに徹底的に検証されてしまうかもしれませんけどね(笑)。我々もかなり気をつかって調整しましたけれど。
――「シャドウ オブ ローズ」の試遊では、悪夢的な世界観の一部を体験できました。マップ内に配置されているニチャア……とした物体や敵である「フェイスイーター」の造形は、特に強く印象に残っています。聞こえてくるサウンドも、不気味で異質感を覚えるものばかりでした。
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川田:「悪夢のような精神世界」はキーワードですので、ホラー表現としても「高熱にうなされているときに見る夢」のようなものを意識しました。このへんは人にもよるところですが。
木下:フェイスイーターの声は「ゾンビのようなうめき声」でなく、もっと特殊なサウンドになるよう意識しました。現実世界には存在しないクリーチャーならではの、「この生き物ってどこから声が出ているんだろう」と不思議に感じるような音です。「実在する生物にこんな声帯はついていないだろう」という考え方でデザインしていきましたね。
――フェイスイーターの攻撃を食らうローズのダメージ描写は……正直言ってなかなかショッキングでした。当然あの攻撃も現実世界には存在しませんし、イヤな方向に想像力をかき立てられます。「これって、ローズにとってはどれくらいの痛みを感じる攻撃なんだろう……?」と考えるだけでも怖かったです。
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川田:そう言っていただけると嬉しいです(笑)。
木下:作り手としては最高の褒め言葉ですね。我々も、皆さまに公開するスクリーンショットを選ぶ時点から検討していたポイントでした。フェイスイーターに襲われているシーンを初出時に披露するのもどうかな……と思っていたところ、開発チームからも「これは今作で一番の怖い見どころだから!」と言われまして(笑)。まずは小出しにしていこう、という形になりました。
――もしかしたら、ホラー好きな方でも「これは怖過ぎる!」と感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか……?それくらいの恐怖感を覚えました。
川田:試遊範囲の先の物語でも、精神世界ならではのホラー演出は多数用意してます。楽しみにしていてください!
――「シャドウ オブ ローズ」では本編から16年後の物語を描いているとのことですが、その間の空白期間は別のコンテンツや作品で語られるのでしょうか。
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川田:今のところは未定です。今作はローズの成長した姿を描くためにあの時代設定としていて、本編と同じ世界観ではあります。しかし、あくまで「ウィンターズ エクスパンション」のコンテンツのひとつであり、物語の締めくくりとしてこの時間軸を選びました。
木下:あくまでも『ヴィレッジ』の時系列の最後のエピソード、というところですね。『ウィンターズ エクスパンション』を作り始めたのは『ヴィレッジ』発売後のことでしたが、少し前から構想は練り上げていました。それこそクリスに注目したものとかも、企画時点では存在していました。でも、彼がドンパチやる物語を作っていくよりも、ローズのほうにフォーカスしていきたかったのです。か弱い女性が道具を組み合わせたりしながら難局を乗り越えていく……という、“ドンパチ”と対極にある体験ですね。本編のストーリーに感動してくださったユーザーも多かったので、その声に応えたいというところでもありました。
――最後に『ウィンターズ エクスパンション』『ゴールドエディション』のリリースを待ち望んでいるファンに向けてメッセージをお願いします。
川田:一年間お待ちいただくことにはなりましたが、3本のボリュームあるコンテンツがお安い値段でお買い求めいただけますので、ぜひ手にとってください!
木下:『ウィンターズ エクスパンション』ならびに『バイオハザード ヴィレッジ ゴールドエディション』は非常にお買い得となっているので、よろしくお願いします!それに加えて「ヴィレッジ」の世界は横軸に広がっていまして、これからニンテンドースイッチ版やMac版もリリースされます。これまで遊んだことがない方も、機会があったらぜひ手にとって遊んでみてください。もちろんPS VR2版も鋭意開発中です。こちらも、想像以上の凄い世界を感じていただければと思います。
――本日はありがとうございました。
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『バイオハザード ヴィレッジ』はPC(Steam)/PS4/PS5/Xbox One/Xbox Series X|S/Stadia向けに発売中。DLC「ウィンターズ エクスパンション」、DLCと本編がセットになった『バイオハザード ヴィレッジ ゴールドエディション』は10月28日にリリース予定です。