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日本のインターネットカルチャーを牽引するVTuber/バーチャルタレントシーン。そのなかでもコアとなっているのがホロライブ・にじさんじの二大事務所です。
ホロライブは2017年9月に、にじさんじは2018年2月にそれぞれスタートし、両事務所合わせた所属タレント数は200人を超えており、当然これまでに何度となくコラボ配信してきました。
そんな両社タレントのコラボ配信でも、いまとなっては珍しい組み合わせ・ファンならば当然ご存知の黄金コンビまで、数週・数回に分けて記していきます。
これまで3回にわたって紹介してきました。椎名唯華さんと猫又おかゆさんの「神岡家」、戌亥とこさんと星街すいせいさんの「とこまち」、星川サラさんと赤井はあとさん・夏色まつりさんの関係性について、先週は早瀬走さんと宝鐘マリンさんの数年ぶりのコラボ配信について書いてきました。
今回書かせていただくのは、ホロライブ・天音かなたさんとにじさんじ・空星きらめさんの両名について。彼女らのファンならばご存知・お察しいただけるであろう2人の、そのユニークな関係について書いていきます。
◆天音かなたと空星きらめ イラストレーター・おしおしおがビジュアルを手掛けた2人
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ホロライブの天音かなたさんは、2019年12月27日に初めて配信し、ホロライブ4期生として活躍を続けています。トーク中やイベント中でワッ!と騒いでしまうメンバーが多いホロライブのなかで、彼女らに対してつぎつぎとツッコミをいれ、話をまとめることのできるタイプです。同期である4期生のなかでは、常闇トワさん・角巻わためさんらにバシっとツッコミを入れていく姿が印象的です。
そんな彼女がホロライブの門を叩いたのは、小さなころからアイドルに憧れていたから。とはいっても家庭が非常に厳しく、ときには生活に余裕がないこともあって色々なものを禁止されて育っていたといいます。
「アイドルになる」という夢を叶えるために、親元を離れてひとり暮らしをスタートさせますが、耳の病気を患ってしまい、アイドルや音楽の道を諦めそうになったタイミングで、ホロライブのオーディションを受けて見事合格、現在まで活動を続けています。
僕は音楽がマジで大好きでさ。物心ついたときから歌を唄っていたし、悲しい時も、辛いときも、楽しい時も、嬉しい時もずっと音楽を聴いてきたの。それが耳の病気で難しいってなったとき、気持ち的に諦めちゃったんだよね
何だよこの人生、頑張っても意味なくね!?って思ったんだけど、いやでも…諦めたく無くね?って思った。ここでもしホロライブに受かったら諦めないでいろんなこと頑張りたい!って思ってた。
活動2年目を迎えていた2021年2月には、納得できないクオリティで歌ってしまうことや、耳を含めて負担が大きいことからストップがかかり、定期的に催していた歌枠を大幅に減らすことになりました。
「片耳が聞こえない」とSNS上でハッキリと明言しつつ、ボイストレーナーからは「以前のように歌えるかは難しい」「でも着実に近づいていっている」と声をかけてもらって徐々に歌に対するモチベーションを取り戻していくと、同年8月19日にはUnion Square Gardenの田淵智也が作詞・作曲を務めた初オリジナル楽曲「特者生存ワンダラダー!!」を発表、現在まで複数のオリジナル楽曲をファンに届けています。
パンチ力あるサウンドに負けず発せられるボーカルは、線の細い歌声だからこその鋭利さとなって表現されます。そのボーカルは楽曲上ではなくライブでももちろん披露され、彼女のボーカルがいかに特徴的か分かります。
ちなみにご家族との仲は良く、雑談中には家族の話題だけでなく、阪神タイガース、近鉄鉄道、奈良県など関西地方の生まれにしか分からないようなネタを度々出しています。
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にじさんじの空星きらめさんは2020年7月11日に初配信してデビューしました。
中性的な声色であり、リスナーや同僚(おもに先輩)からイケメンやショタボイスをしてくれないか?と言われる頻度が高め。初配信から2回目の配信ですでに「少年声って出せますか?」と話題にあがり、お母さん・おばあさんなどの声でリスナーを喜ばせることもあります。
彼女の得意ゲームといえば麻雀。にじさんじのなかでもトップクラスの実力を誇っており、麻雀を本格的に学び始めたのはデビュー後ですが、メキメキと頭角を現していきました。好打点を狙うのではなく堅実に、場況を読んで守備に回っていく流れは強者の打ちまわしといっても過言ではないでしょう。
2023年1月に開催された「新春!にじさんじ麻雀杯2023」では、3度目の出場にしてついに初優勝を果たしました。
女性メンバーの優勝は同大会初めて、しかも他の対戦相手に自分から振り込んで点数を与えてしまう、いわゆる「放銃」を一度もしないで優勝をするという鉄壁な守備力を見せつけての優勝でした。
彼女が麻雀を得意としていた理由は、家族と麻雀を楽しんでいたから。家族との仲は良好で、オーディションを受けた際のエピソードは特に顕著に現れています。
にじさんじのオーディションを受けようと思ったとき、親に言わなきゃダメだと思ったんだよね。「じつはVTuber事務所のにじさんじっていうところの一次オーディションに通ったから頑張りたいんだけど」といったら、おとん(お父さん)が「どんなところだ?」と言われて、「VTuberで一番稼いでるところだよ!」って手をグッと握って言ったの。空星家、貧乏なんだけどさ、おとんが「よし、おまえそこ入って一千万稼いで来い!」って言われたんだよね。
オーディションのときも聞かれるわけですよ、「にじさんじに入ってからの目標はなに?」って。「親にこちらの説明をする際に、VTuber事務所で一番稼いでいる事務所だよと伝えたら、一千万稼いでこい!と言われましたので、今後の目標としましては一千万稼いで両親を高級介護施設にいれることです」って言ったのは覚えてる。
現在でもたまに父・母・妹との交流が話題に上がることがあり、ユーモアに溢れたご家族なのが伝わってきます。
◆繋がりそうで繋がらない2人 おしおしおのフェチズムと2人の受難
そんなお2人の共通点といえば、2人のビジュアルを手掛けたのがイラストレーター・おしおしおさんということです。
VTuber/バーチャルタレントシーンのなかでは、「ビジュアルを描いたイラストレーター」をママ(母親)とよぶことが習わしとしてあり、この場合「おしおさんは天音さん・空星さんのママ」ということになります。
にじさんじとホロライブ、それぞれに所属するタレントでビジュアルを手掛けたことある方は椎名さんと猫又さんのコンビを筆頭に複数名います。そのなかでも天音かなたさんと空星きらめさんについて書くのは、その繋がり方があまりにも異質かつオリジナリティがあります。
実はこの2人、これまでに一度もコラボ配信などをしておらず、画面上で2人が揃ったことがありません。
歌を中心にした活動内容を志向する天音さん、麻雀やホラーゲームなどを得意とする空星さん、2人の活動フィールド・方向性をみればコラボ配信するキッカケは確かに無く、キッパリと一線引いて活動してきたのが分かります。
そんななか、2022年10月15日からおしおさんが自ら天音かなたさん・空星きらめさんの非公式グッズを販売することが発表されました。
コラボグッズを見てみると、天音さんにだけ「おっぱい(がない)マウスパッド」2種セットがあります。この発表を受けて、空星さんが雑談配信中にグッズの可愛らしさにふれつつ、コメントに答えるかたちでこのように話しました。
マウスパッドがきらめにないのは、きらめに「ある」からですね。やっぱりね、おしお家ではきらめは「ある」ほうなんですよ。別にかなたさんのアレがないというわけではないですけれども、どちらかといえばきらめの方が「ある」ということですよ。
きらめはあるっていうこと。おしおママがこうして証明してくれたっていうことだね。
これをうけて、天音さんも翌日のTwitterスペースのなかで応えます。
え?虚しくないんか?そんな大嘘をついて……まぁ可愛い妹だから許すか
天音さんによれば、空星さんがデビューした際に「おなじイラストレーターから生まれた姉です。おしおさんから生まれた者同士、頑張りましょう!」といった短文メッセージを送ったそうですが、それ以外に彼女らが会話していないとのこと。
そもそも自分から誰かに話しかけることをあまりしない性分であり、別事務所のひとから急に連絡がきたら嫌がられる、「おなじママから生まれたから絶対に仲良くしなきゃいけない」などと思わせたくなかった、活動方針なども含めて無理させたかったとも語っています。
デビューして数年が経過したなか、これまで一切係わりが無かった妹・空星さんからの突然のおっぱいイジリをうけて、天音さんの話し方も驚きと嬉しさが滲んでいます。
この2人が話題にあげた「おっぱい」ネタは、もちろんおしおさんが描いたルックスから生まれたネタです。
天音さんと空星さんのルックスは、おしおさんのフェティッシュさが存分に活かされています。主に青をメインにした色合い・低身長かつ細身・肩に届くか届かない程度のボブカット・星や光をイメージしたヘアピンや髪飾り、そして胸のサイズは小さめ。まさに姉妹というにふさわしいほどにルックスが似通っています。
もちろん2人とも、特に天音さんは「自分のおっぱいがない」という話題を再三再四配信のネタにしてきました。
天音さんによれば、新たにグッズ展開する際に「わたしの胸って大きくなりますか?おっぱい差分があればお支払いします」とおしおさんに尋ねたところ、「なにがあってもおっぱいがおおきくなることは無いよ」とハッキリと告げられたといいます。
SNS上でも何度となく「おっぱい」にまつわるやりとりをしていることもあり、「おしお家の2人は胸がない」というのが2人のリスナー・同僚たちにとっての共通認識となっています。
天音さんが胸についてイジられたり悩むシーンが目立っていますが、逆にきらめさんは低身長な部分が気になるよう。自分がデビューした2020年7月以降、自分よりも身長が低い新人がデビューしてこないことにかなり焦っているようです。
つい先日にじさんじには新たに7人の女性タレントがデビューしましたが、そのなかで最も小さいのは獅子堂あかりさんが149センチ。「今回も負けたね」「新人ちゃん、きらめよりも身長高いね」とコメントで指摘されると、「あーあ!言っちゃったぁー!」と苛立ちを隠せない様子。
あのー!ANYCOLORさんはそろそろロリスタイルなライバーをふやすべきだと思います!小学生ライバーとか増やさないんですかぁー!?
「靴のサイズが違えば絶対に変わってくる!」と声をあげ、公式サイトまで見にいって「みんなヒールが高いよ!ヒール込みの身長なんでしょ!?」と言い詰めていく空星さん。海外ライバーがデビューした際も喜びとともに、「身長は?」と気にするシーンもあるほどです。
天空かなたさん・空星きらめさんともに、おしおさんが描いたビジュアルで生まれてリスペクトと愛を持っているのはもちろんですが、事あるごとに何かと悩まされている(?)という点でかなり似通っているのです。
2人での配信がないにもかかわらず、ここまで話題に事欠かないのは、おしおしおさんのビジュアルがそれだけ秀逸であり、「VTuberにとってママ(イラストレーター)がいかに大事な存在か?」が分かる関係ともいえるでしょう。
VTuber/バーチャルタレントシーンという広大な大宇宙のなか、にじさんじ・ホロライブという巨星にうまれ活動をつづけるお2人がいつか交わったとき、どんな会話をするのでしょうか?