
2月5日、中野サンプラザにて音楽ライブ『モンスターハンターライズ&サンブレイク~百竜ノ響宴~』が開催されました。
このイベントではカプコンのアクションゲーム『モンスターハンターライズ』及び『モンスターハンターライズ:サンブレイク』の使用曲が披露され、モンハン語を自在に操るボーカリストも勢揃いしました。
今回は筆者が中野サンプラザに足を運びましたので、その様子をお伝えします。
◆薩摩琵琶の音色

現在は2020年や2021年の緊急事態宣言の頃とは違い、マスクを着用すれば「観客を伴うイベント」の開催ができるようになっています。
それも相成ってか、中野サンプラザホールは見たところ満員に近い状態。開場後しばらくはチケット確認窓口の前に行列ができたほどです。筆者にとって、このような光景を目の当たりにするのはまさに3年ぶり。アフターコロナの時代を実感する一幕でした。
5分ほど押して始まったライブの先鋒は、薩摩琵琶奏者の友吉鶴心さんの演奏。『モンハンライズ』にて非常に高い人気を得ている琵琶法師が実際に登場しました!

薩摩琵琶は、戦前までは若い奏者にも恵まれて日本ではポピュラーな楽器でした。心得のある海軍士官が軍艦の上で水兵たちに琵琶の語りを聴かせる、ということもよくあったほど。しかし太平洋戦争により奏者が大勢落命し、戦後は継承の危機に陥りました。
従って、現代日本人にとって剛健な薩摩琵琶の音色はむしろ新鮮に映ります。『モンハンライズ』の雰囲気にこれほど合致している楽器があったとは!
◆夢の頂点
ゲストボーカルは登場順に加藤いづみさん、宮崎カナエさん、鈴木このみさん、ナノさん、サラ・オレインさん。それぞれ演奏前に、カプコンからオファーが来た時のエピソードを語ってくれました。

「オファーが来た時、実は“どのゲームか”ということは伏せられていました。ゲーム業界はこうした秘密事項が多いんですけど、歌詞をよく見るとモンハン語。マネージャーと“これ、モンハンだよね?”と話し合ってました」(加藤いづみさん)

「カプコンからこの件に関するオファーをもらった時は、“一刻も早く周囲の人に伝えたい!”という気持ちが湧いてきました」(サラ・オレインさん)
その上でボーカル陣全員が異口同音に述べたのは、「子供の頃遊んでいたゲームからオファーが来て、光栄に感じた」ということ。

『モンスターハンター』第1作の日本発売は、2004年3月11日。来年は20周年を迎える一大シリーズですが、それ故に「子供の頃遊んでいたモンハンに関わるのが夢だった」という制作スタッフ・関係者もいます。
野球少年が巨人への入団を夢見るように、将棋教室に通っている小学生が藤井聡太五冠との対局を夢見るように、画面の前の子供たちは「このゲームの住人になりたい」という夢を繰り広げます。

此度のライブは、かつての少年少女たちにとっての「夢の頂点」とも表現できます。
◆命は清き焔
優美勇大な楽曲が要にもなっている『モンスターハンターライズ』の発売日は、2021年3月26日。東京都では2回目の緊急事態宣言が解除された直後でした。
この後、苦難と忍耐を強いられる自粛生活はまだまだ続きます。パンデミックは巣ごもり需要を生み出し、結果としてゲーム市場を活性化させたと言われていますが、2019年までは何ら特別なことではなかった「ゲーム内楽曲を実地で披露する音楽イベント」は一切できなくなってしまいました。
ボーカルがモンハン語で歌っている場面を実際に見てみたい、『カムラ祓え歌』を生で聴いてみたい、薩摩琵琶を弾く場面をこの目で確認したい。そうしたことができない日々が、あまりに長過ぎたようにも思えます。だからこそ、この時期に行う音楽イベントは極めて特殊な意味合いを帯びています。
それは今回のライブでも披露された、加藤いづみさんの「つなぐ花篝」日本語バージョンの歌詞に通じるものがあります。
命は清き焔
汚れなき燈明
焔焚いて繋いでゆく
灯火に変えて大切な人へと
何があろうと、たとえ100年に一度の災禍が起ころうと、命は清く汚れのない焔。そして焔は絶対に途絶えることなく、手から手を渡って誰かに繋がれていきます。

現地の写真をご覧ください。2020年、2021年には絶対に実現し得なかった「密」な光景です。しかし、我々が焔を消さずに1日1日確実にそれを繋いできたからこそ、こうした素晴らしい一場面が戻ってきました。
『モンスターハンターライズ&サンブレイク~百竜ノ響宴~』は、ひたすら耐えるしかなかった冬から再び立ち上がって花を咲かせる春へと移り変わる、きっかけと言うべきイベントでした。