「ヒロインと仲よくなりたい」が原動力!『7 Days to End with You』で言語学者気分を満喫

「こういう作品に傾ける情熱を実在の言語に傾けていたら、もっと英語をスラスラ読めるようになっていたのでは?」と思ってしまったら負けです(自らへの戒め)

ゲーム コラム
「ヒロインと仲よくなりたい」が原動力!『7 Days to End with You』で言語学者気分を満喫
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さまざまなゲームに登場するヒロインたちの魅力をあらためて掘り下げていく連載企画「僕たちのゲームヒロイン録」。第35回は、インディーゲーム『7 Days to End with You』のヒロインを紹介します。本稿にはネタバレは含まれませんので、未プレイの方もご安心ください。

「言葉を知り、世界を知り、君を知る。」

7 Days to End with You』は、素性も分からぬ謎のヒロインと7日間を過ごすパズル&ノベルゲームです。エンディングは主人公の行動次第で分岐するので、何度も7日間を繰り返して少しずつヒロインや世界、そして記憶もおぼつかない自分への理解を進めるのが基本的な流れ、目的になります。

しかし、主人公ヒロインが話す言葉を理解できず、そこらの本や新聞に書かれている文字がまったく読めません。そして、それはプレイヤーも同じです。なぜなら本作のテキストはほとんど独自の架空言語で表示されるからです。

ノベルゲームのインターフェースらしく、ヒロインが何かを話す際は彼女の名前らしき単語もテキストウィンドウに表示されますが、もちろんそれも読めません。

リアルのエピソードに学びつつ未知の言語を解読

しかし、単語ひとつひとつに「自分が類推した意味」をルビとして表示できるので、言語解読のとっかかりさえ見つけられれば少しずつ物語の輪郭が見えてくるようになります。もちろん、彼女の名前もきちんと読めるようになります。

左下の単語が意味するのは「大丈夫」かな?と入力しておくと……
その単語が出てきた際にルビが付きます。何度でも修正できますので、少しずつ定義を絞り込みましょう

ゲームから少し離れたリアルの話になりますが、アイヌ語の研究で知られる言語学者の金田一京助氏は、1907年に初めて樺太(サハリン)を訪れた際、現地の樺太アイヌ語を理解するためスケッチブックにぐしゃぐちゃとわけの分からない絵を描きました。

そして、それを見た現地の子供たちが「ヘマタ?」「ヘマタ?」と言い合っているのを見て、その単語こそが「」にあたる言葉だと判断。いろいろなものを指さしながら「ヘマタ?」と尋ねることで樺太アイヌ語の単語を習得し、ついにはコミュニケーションを取れるようになったといいます。

7 Days to End with You』にも、そういう「言語理解の決定的な第一歩となるシチュエーション」がいくつか用意されています。それを取っ掛かりに未知の言語を少しずつ理解していくフローはまるで自分が言語学者にでもなったかのようで、それが本作の独特なプレイフィールを生み出しています。

筆者はその決定的瞬間を見つけるまで、ほほえみかけてくれたりはずかしそうに頬を赤らめたりと友好的に接してくれる目の前の女性を理解したい一心で臨みました。ヒロインと仲よくなりたい気持ちが言語理解の助けになった…といえなくもないかもしれません。

意味が分かりそうで分からない…確実にいえるのは「イラストがヘタでかわいい」ということくらいでしょうか

言語学者の気分が味わえる作品はほかにも!

主人公が未知の言語を習得する四苦八苦に焦点を当てた作品」というのは本作以前にもいくつか発表されています。ゲームでは、本作に先駆けて2017年に発売されたノベルゲーム『ことのはアムリラート』が「未知の異世界言語」を取り扱った作品となっており、発売当時におもしろい視点のゲームだと話題になりました。

異世界の言葉をクイズ形式で習得できるモードがあったノベルゲーム『ことのはアムリラート』

また、2018年に出版されたライトノベル「異世界語入門 ~転生したけど日本語が通じなかった~」も、異世界に迷い込んだ日本人の少年が目の前の銀髪美少女ヒロインとコミュニケーションを取るべく未知の異世界言語の習得に乗り出す物語となっていました。

KADOKAWA刊「異世界語入門 ~転生したけど日本語が通じなかった~」書影

これらの作品に共通することは「目の前のヒロインと仲よくなりたい!」という主人公やプレイヤーのピュア(?)な気持ちが未知の言語習得の強力な原動力になっていることです。そういう意味で、本作は美少女ヒロインが持つ魅力のひとつをあらためて感じさせられた一作でした。

7 Days to End with You』はスマートフォン、PC(Steam)、スイッチで配信中です。

7 Days to End with You [Indie World 2022.11.10]

《蚩尤》

汎用性あるザク系ライター(が目標) 蚩尤

1979年生まれのファミコン直撃世代。スマホゲームもインディーズも大型タイトルも遊びますが、自分と組ませてしまって申し訳ないという気持ちやエイミングのドヘタさなどからチーム制のPvPやFPS、バトロワが不得手です。寄る年波…! ゲームの紹介記事に企画記事・ビジネス寄りの記事のほか、アニメなど他業種の記事もやれそうだと判断した案件はなんでも請けています。任天堂『ガールズモード』シリーズの新作待機勢。

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