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巨大なヒーローやロボ、そして怪獣が、襲いくる怪獣軍団と戦うマルチプレイ対応のベルトスクロールアクション『Dawn of the Monsters(ドーン・オブ・ザ・モンスターズ)』。
3月16日にPS5/PS4/ニンテンドースイッチで発売が迫る本作は、日本の特撮作品やアニメに多大な影響を受けて開発されています。海外のゲームでありながら、日本の特撮マニアならニヤリとしてしまう小ネタがそこかしこに散りばめられており、ゲームファンだけでなく特撮ファンも目を離せないタイトルとなっています。
今回、本作の主要キャラ「村雨英二」の声優を務める濱野大輝さんと、ボス怪獣「アグニトル」をデザインした西川伸司さんとの対談が実現!最近も同じアニメ作品で一緒に仕事をしていたお二人に、本作の魅力や怪獣デザインの難しさや、そのコツ、そしてモチーフとなった日本の特撮作品について、世界最大級の屋内型ミニチュア・テーマパーク「SMALL WORLDS TOKYO」の中で語ってもらいました。
濱野さん、西川さんに怪獣デザインの秘訣を訊く!
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濱野大輝(以下、濱野):『Dawn of the Monsters』で「エイジス・プライム」というヒーローに変身して、怪獣たちと戦っていく村雨英二という役をやらせていただいています濱野大輝です。この英二は、”ザ・ヒーロー”というような立ち位置とは違うキャラクターで、自分の責任などに疑問を持ちながら戦地に出ているような、葛藤するキャラクターです。
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キャラクターデザインを見てもわかるように、 キリッと若くて筋骨隆々でエネルギーに溢れている、というよりも、もう10年15年ぐらいはヒーローやっているような人物です。
本作の怪獣デザインを手掛けている西川さんとは、2021年に放送された特撮モチーフのアニメ作品で仕事はご一緒しているのですが、コロナ禍だったこともあり、直接お話しする機会は今までありませんでした。作品展にチラッとお邪魔させていただいたことはありましたが、その時もお会いはできませんでした。
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西川:そうですね。濱野さんとは作品を通しての繋がりはあったんですが、今回初めて直接お話させていただいています。私は漫画家でもあるのですが、漫画家デビューと時期同じくして、東宝の怪獣映画に関わるようになりました。1989年に植物のバイオ怪獣をデザインして以降、2004年にそのシリーズが一旦お休みするまでの15年間、怪獣のデザインをやっていました。その後も、テレビのヒーローシリーズのデザインとか、特撮作品のコミカライズや絵コンテなどを手掛けていました。最近では、アニメというフィールドで新しい形で怪獣のデザインをさせてもらうなど、ずっと怪獣と縁が切れずに付き合っています。
濱野:アニメや今回のようなゲームの怪獣のデザインは、実写と異なる部分ってあるんでしょうか。
西川:結局はどう演出するか次第ですよね。例えばアニメの場合は実写の特撮とは違う感じでデザインしなきゃいけないんだろうなという頭で入りましたが、基本的に3Dで表現すると言われたので、着ぐるみ怪獣の感じを動きの面でも表現したいと思いデザインしています。特撮をやってきた人間からすると、一見特撮っぽいけど実写の特撮ではできない要素を入れたいなというのは考えていましたね。あのアニメ作品では、毎回自分自身が楽しんでデザインしていました。もちろん、ちゃんと監督に喜んでもらわないといけないんですけど。
濱野:西川さんは僕が小さい時に見ていた作品などにも関わられていたレジェンド級の人だと思っています。
西川:いやいやいや(笑)。
濱野:そんな方の前で僕の好きな特撮の話をするのがちょっと不思議な感じです。自分が幼稚園とか 小学生の時に主に触れていた特撮作品は、コンピューター世界を題材にした特撮ヒーローとか、戦隊ヒーローとか、夏休みや冬休みにやっていた怪獣映画です。一番記憶に残っているのは、1994年の福岡を舞台にした宇宙怪獣が出てくる映画ですね。そのシリーズが終わった後の三部作も好きで。
西川:その三作目に登場する鎧のやつは私がデザインしたんですよ。
濱野:そうなんですか!その作品の展示会を親と見に行ったんですが、撮影に使われた造形物の口の中にギアみたいなものが見えて、「生きている本物じゃないんだ!」って思った記憶があります。純粋にそういう生き物がいるんだと信じていたので、そこで初めて裏を知ってしまったみたいな(笑)。ちなみに西川さんはどういうところからインスピレーションを得て、怪獣のデザインを毎回生み出しているんでしょうか。
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西川: 怪獣って本当に幅広いので、こうだっていう決まったものがあるわけじゃないんですよ。いろんなテーマであったりイメージの具現化だったり。それに対して、どうアプローチするのが今回は正解なんだろうといつも考えています。ただやっぱり怪獣は生き物なので、生物に対する知識や興味はある程度必要になりますね。
濱野:役者の場合だと、小さな時から見てきたものや読んだものから演技の引き出しを増やして新しいキャラクターに還元していくような作業をしていくんですが、西川さんも幼い頃に見てすごく影響を受けたものはあったのでしょうか。
西川:僕らの世代っていうのは、アニメとか特撮のジャンルが一気に花開いた時期で、いろんなものの洗礼を浴びています。
濱野:なるほど。一気にいろいろなジャンルに触れたからこそ、1つのジャンルに食い込むっていうよりも、いろんなものから得るものがあったと。
西川:私はそもそも怪獣デザインの専門家ではなくて、漫画家もしていますし。デザインにおいては、何を選んだりとか、何と何を組み合わせるかっていうところに、個人の特徴が出てくるんだと思います。
ゲームと映像作品の怪獣デザインの違い
濱野:怪獣をデザインをされる時に、例えば、着ぐるみになるものだとこう、アニメーションやCGだとこう、といったようなことは考慮されたりされるのでしょうか。
西川:ありますね。例えば、初めてデザインした頃は全然ノウハウがないので好きに描いて、造形する人とか、撮る人を困らせたりもしましたが、やってくうちにだんだんわかってきました。でも考慮しすぎると、今度はどんどんつまらないデザインになっていくこともあります。そこは造形の担当者を信じて、着ぐるみをどう作るかはお任せしますね。自分はとりあえず絵の上ではいいと思う形を出すという、背負い込みすぎないスタンスも、集団作業では大事なんだというのを 10年ぐらいやって感じました。
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濱野:今回、『Dawn of the Monsters』で怪獣「アグニトル」のデザインを担当することになったのはどういった経緯なのでしょう。
西川:私は10年前くらい前から海外のコンベンションに呼ばれることが増えて、海外のファンやアーティストと親交もあるんですが、 本作の怪獣デザインにも参加しているマット・フランクという日本の怪獣が大好きなアメコミ作家が2019年の国内イベントに参加していた時に、ゲームの怪獣のデザインを担当するんだけど、西川さんもやってくれない?みたいな感じでお話がありました。
濱野:4年くらい前にそういう話があったんですね。その時はこういうイメージで描いてくださいみたいな要望はあったのでしょうか。
西川:火の属性ということだったので、最初にいくつかデザインのパターンを出しました。自分の中ではこれだなっていうイメージがあるんですけど、 向こうの意図が必ずしも同じとも限らないので。
濱野:最終的に採用されたデザインではないものも見てみたいですね。
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西川:最初は、向こうが日本の怪獣が好きだっていうことが伝わったので、自分が普段描いているような怪獣をデザインすれば日本的だねって思ってもらえるのかなと考えていたら、企画書にすでに日本的な怪獣が描かれていて……。そのデザインがすごく日本の怪獣をわかってる感があったんですよね。
濱野:あー、なるほど。
西川:なので、日本代表としてもう一癖加えたいなと考えて。最初は、火のイメージなので火山を背負ってるみたいな形で、火口から首に沿って火が流れてきて、それを口から吐く、みたいな、実写の特撮では難しいゲームならではのデザインを考えて、縄文式土器の火焔土器の要素も加えました。
濱野:そこは西川さんが土偶に詳しいからということでしょうか。
西川:漫画家としてのデビュー作がね、土偶の漫画の『土偶ファミリー』でしたから(笑)
濱野:『土偶ファミリー』の単行本は大英博物館に展示されたこともあるとか。
西川:あれは何の間違いだったんでしょうね(笑)。土偶が日本人にとってどれだけ身近なものか、みたいなことの紹介だったんだと思います。
濱野:つまり、最新の『Dawn of the Monsters』は、ある意味西川さんのオリジンも混ざっているということですね。
西川:本当に怪獣のデザイナーになりたかったら、怪獣以外のことも知っておかないといけないということですね。なんでもそうですが。世の自然界には沢山のまだ知らない要素が転がっていますし。
濱野:スポーツでも確かに1つのスポーツばかりやるより、他のスポーツもやっていろいろな筋肉をつけた方がいいとも言いますからね。
濱野さんと西川さんはどちらもゲーマー?
――お二人は子供のころからビデオゲームはしているのでしょうか。
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濱野:うちは比較的厳しい家庭ではあったんですが、プレイステーションを持っていました。父がたまたまソニー系の映画配給会社にいたので、当時はソニー製品以外は買っちゃダメって言われていて(笑)。僕らの世代はちょうどスーファミから64になって、ゲームボーイも遊んでいた世代だったんですが、買ってもらえませんでした。その代わりにプレイステーションで海外製のゲームをプレイしていましたね。
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西川:私はゲームの黎明期からずっと味わってきた人間なので。 中学、高校だとテレビに繋いで遊べるテニスゲームとかあって。ゲームウォッチでも遊んでいましたが、大学の時にドラクエとか出始めて、ファミコンを買って色々やりました。東京に出てきたタイミングで、PCエンジンやメガドライブ、スーパーファミコンが登場してきてほぼほぼ網羅していました。ゲームの開発会社にも少し関わったこともありましたし。なんでもやる緩いゲーマーでした。昔のシューティングゲームやアクションゲームって、割とマップを頭に入れておかないとクリアできない感じでしたが、ノリで気分転換するだけみたいな感じのプレイをしていました。同じところでいつも死んでいる、みたいな。
濱野:ゲームとしては1番純粋な楽しみ方ですよね。ストレスは溜まらないですし。
西川:そうなんですよね。ただ、今度は進めなくなると少しストレスになってくるんですよね。ちゃんとやっとくべきだったみたいな(笑)。
濱野:うは、それはめちゃめちゃ気持ちがわかります(笑)。僕は中学生ぐらいからはずっとスポーツゲームばっかり。サッカーがすごく好きなので、サッカーゲームをずっと1人でプレイしていたんですけど、コロナ禍に入ってから他の人と一緒にオンラインでゲームをやるようになって。それまではオンライン対戦とかなんか怖くてできなかったんですが、今ではオンラインしかやらないようになっています。1人っ子なのでゲームは1人でやるものだったので、友達とその場で一緒にプレイする体験は今まであまり知らなかったんです。『Dawn of the Monsters』は、まさに家族で一緒に遊べるなと思いました。グラフィックもアニメ風で綺麗ですし、難易度も絶妙ですし。
西川:こういう昔ながらのゲームシステムでフルボイスって新鮮ですね。
濱野:特撮の番組を毎回見ているような感覚で楽しめそうですね。
西川:あとデザイナーとしては、いつも自分がデザインした怪獣たちはヒーローや怪獣王にやられてばかりなので、 せめて俺の手で倒してやるぜ、みたいな気持ちでプレイできますね。
濱野:そういうのいいですね!俺の手で葬ってやるっていうのはデザインした方じゃないと味わえない(笑)。
西川:でも大技とかではなく、小パンチとかで倒しちゃってなんかすいません、みたいなことにもなりそう(笑)。
――今回の収録を行ったSMALL WORLDS TOKYOについて感想を聞かせてください。
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濱野:僕は今回のお話しを頂いて初めて知ったんですが、このミニチュアが置いてあるフロアは夢が全部詰まっているみたいな感じなんですね。すごく精巧に作られていて、宇宙センターエリアの宇宙空港のところだけでも、何時間でも見られますね。 向こうには少女漫画モチーフのミニチュアがあったり、子供が喜ぶような世界の国々のミニチュアがあったり、家族で1日いられますね。ちょっとずつ配置も変わっているみたいなので、何回来ても新しい発見がありそうです。ここでは自分をスキャンしてもらって、自分のミニチュアを作って置いてもらえるサービスもあるみたいで、どんな層の人と来ても、いろんな楽しみ方ができそうです。
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西川:僕はずっと怪獣映画の現場に関わってきたのでここは懐かしい感じです。ただ、ミニチュアセットを使う特撮映画も、21世紀に入ったあたりからデジタルがメインになってくると、だんだん大きいセットを組んで中で怪獣が暴れるみたいな作り方をやらなくなってきたので、これだけ広い範囲に立て込まれたミニチュアを見ると嬉しくなりますよね。でも、人形たちがいるのは撮影用とはやはり違うところです。映画のミニチュアは裏側まで作られていませんから。
濱野:こういうところ見ると怪獣の着ぐるみを置いたり、ヒーロー飛ばしてほしくなりますね!
――最後に読者へのコメントをお願いします。
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濱野:この記事の内容からもわかると思いますが、『Dawn of the Monsters』自体がいろんなこだわりと夢が詰まった盛りだくさんの内容になっています。もちろんキャストとしてはボイスにも注目していただきたいのですが、セリフも特撮愛やリスペクトに溢れたものになっているかもしれませんし、怪獣の動き1つヒーローの動き1つとっても、こうだよね!という動きをしてくれると思います。スカッと爽快なアクションですし、怪獣にフォーカスした作品ですので、好きな方は絶対に買ってプレイしてください。がっかりすることはまずないと思います。買っていただいてからも、いろんな楽しみを見つけていただけるゲームだと思いますので、是非よろしくお願いします!
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西川:なんと言っても怪獣を自分で動かして暴れられるのが魅力です。もちろんヒーローやロボット、怪獣同士でも戦いますし、ビルを投げたり踏み潰したりとか、 それだけで楽しくなってしまうゲームです。私がデザインした怪獣はかなり強い怪獣なので、倒していただくもよし!倒されていただくもよし!本当に懐かしいゲーム性でもありますから、あまり難しいことを考えずにガンガン破壊とバトルを楽しんでください。
『Dawn of the Monsters』は、オーイズミアミュージオよりPS5/PS4/Nintendo Switchにて2023年3月16日発売予定。パッケージ版が4,378円(税込)、ダウンロード版が3,980円(税込)です。
また本作発売を記念したTwitterキャンペーンも開催中ですのでぜひご応募ください!
今回の収録に協力していただいた世界最大級の屋内型ミニチュア・テーマパーク「SMALL WORLDS TOKYO」の情報はこちら。