■『ぼくなつ』とはちょっと違う『なつもん!』の“夏”
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共通する体験が多い一方で、『なつもん!』と『ぼくなつ』で明確に異なる点もいくつかあります。まず主人公ですが、『ぼくなつ』シリーズでは「ボク」でした。しかし『なつもん!』の場合、「サトル」が主人公を務めます。
「ボク」も家庭の事情や周囲との関係性が明確に描かれており、その点では「サトル」と大きな違いはありませんが、名前があることで没入感が削がれるタイプのプレイヤーは注意が必要かもしれません。
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そして、最も大きな違いはその見た目でしょう。登場人物のグラフィックも方向性が変わり、『なつもん!』はアニメ調なデザインに。また世界の描写も、『ぼくなつ』はリアルなテイストでしたが、『なつもん!』はキャラと同様にアニメチックなビジュアルに統一されています。
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また、フィールドのあり方も一変しており、『なつもん!』は舞台をオープンワールドで表現。『ぼくなつ』のようなカメラ視点が固定されるタイプではなく、360度自由に見渡し、そして移動することが可能です。
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移動が可能というのは、平地に限った話ではありません。主人公は、家の壁やテント、柵に崖まで、ほぼあらゆる場所を登ることができます。民家の屋根や商店街の屋上なども、主人公の行動範囲です。
スタミナに限りがあるので、序盤はすぐに力尽きてしまうものの、色々な冒険を達成するとスタミナも向上。ジャンプ力も強化されるので、ひと夏の体験を積めば積むほど、オープンワールドの世界を縦横無尽に存分に駆け巡れます。
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カメラ固定型の『ぼくなつ』は、プレイヤーの視点を固定できるので、演出しやすい利点があります。また、プレイヤー同士も同じ景色を共有しやすくなります。ですが、オープンワールドの『なつもん!』は、見渡せる全てが冒険の舞台。そのワクワク感は、本作ならではの魅力と言ってもいいほどです。
オープンワールドになったため、ゲーム内時間の経過もリアルタイムに進行。秘密基地はありませんが、子どもたちが集まる「探偵事務所」があり、この町に起きる不思議な出来事を調査できます。
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また、花火大会や夏祭りといった定番の夏要素に加え、サーカスも開催されます。しかも、主人公の父親が団長を務めている関係から、その興行の一部に関わることも。こうした部分も、『なつもん!』ならではの体験でしょう。
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オープンワールドなので、ロード時間や画面の切り替えなどを挟まず、シームレスな移動を実現。しかも屋外の簡易トイレを使うと、明日葉荘にワープするといったユニークな要素もあります。
ですが、“小学生の立場で楽しむ、懐かしいひと夏”という体験や、そこから生まれる思い出の数々は、『なつもん!』と『ぼくなつ』に共通する大事な核。「明日は何をして遊ぼうかな」「あそこまで行ってみよう」と考えながら眠るひとときは、当時も今も変わりません。
『ぼくなつ』で、ひと夏の体験に想いを馳せた経験を持つ方は、この『なつもん!』を試す価値も十分あり! 本作を一足先にプレイしたいちファンとして、お勧めさせていただきます。
なお綾部氏は、「『ぼくなつシリーズ』を作ることを、もうやめたわけではありません。なので数年後に、仕返しをするかもしれません(笑」と、自身のTwitterアカウントにて発言しています。
実際に動き出すのかどうかはまだ未定ながら、『ぼくなつ』の火はまだ途絶えていません。まずは発売された『なつもん!』を楽しみながら、『ぼくなつ』の続報を心待ちにしてはいかがでしょうか。
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