■コブラの魅力が溢れ出す、名台詞の数々!
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コブラが人気を集めた大きな理由のひとつは、ルビーの下りでも垣間見せた軽妙な台詞にあります。彼が発した名台詞は今も語り継がれており、中にはコラージュもされるほど、馴染みやすく切れのいい台詞回しが次々と飛び出します。
例えば、以前知り合った女性(美人)から「あなたにあってぜひたのみたい事があるの」と通話で告げられた際、コブラは「どうした 背中のファスナーでもとまらないのか」と切り返します。普通なら用件が先に気になるものですが、小粋なジョークを挟む瞬発力に唸らされます。また、美人の頼み→ファスナーと連想する発想力もさすがです。
また、とあるスポーツの球団に選手として潜入する際、その面談中にオーナーから「身長8フィート4インチ、体重193ポンド、なかなかいい体をしているな」と言われると、「でもバストとヒップには自信がないんだ」と返答。このシチュエーションとタイミングで、これだけの軽口はなかなか言えません。ちなみにコブラのプロポーションは、しなやかで逞しい筋肉に包まれており、バスト=胸囲ひとつとっても見事なものです。
「聖なる騎士伝説」編では、傲慢な教徒の高説に対して、苦しむ人々を余所に教会は何をしていたと言い放ち、「天上で神様の足の爪でも磨いていたのか」と皮肉を口にするコブラ。その態度に「神を侮辱するつもりかっ」と怒りをぶつけられるものの、「神か……最初に罪を考え出したつまらん男さ」と鮮やかに一蹴します。
コブラの在り方としてユニークなのは、彼は神のごとき存在と出会ったこともありますが、崇拝をしない一方で強烈な拒絶も示しません。神も一個の存在として受け止めているに過ぎず、交わす言葉は対等で、見上げも見下してもいないのです。
恐るべき影響力を持ったまま姿を消した古代火星人に対しても、その全能ぶりに「神」と称しながらも、「神は天にいて人を見まもるだけでいい。……手は出すな!」と断言する場面は、“人としての強さ”を示し続けたコブラらしい見事な締めくくりでした。
■特にお勧めしたい切り返しとその顛末
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個人的に特に気に入っているのは、死刑囚が集う星で、その先行きを諦めている人物に向かって放った一言です。不運にしがみつくこと自体が不運、運は力づくで自分の方に向けるものだと口にするコブラに、死刑囚が「その運てえやつに負けた時はどうするんだ」と訊ねると、一コマの間を置いてこう答えます。「笑ってごまかすさあ!」
コブラはジョークを好み、どれだけ危険な時でも笑みを絶やしません。ですが、何かを目指して失敗した時、一度たりとも“笑ってごまかした”ことはありません。常に全力を尽くし、いかなる時も諦めず、タフに生き続けてきたコブラ──そんな彼だからこそ、全く正反対の「笑ってごまかすさあ!」という軽口がビシッと決まります。
それを言われた死刑囚は、この話の最後に見事“運を力づく”で向かせました。笑顔を浮かべるように、口角を上げたまま。笑いごとではない危機的な状況を、笑いながら乗り越えていく……そんな男たちの背中を、眩しくも美しく描いたのが漫画「コブラ」という作品でした。