往年の名作RPG『バテン・カイトス』シリーズ2作品にHDリマスターを施した『バテン・カイトス I & II HD Remaster』が2023年9月14日にNintendo Switch向けに発売されました。
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本シリーズは2003年にナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)よりリリースされたゲームキューブ(GC)向けタイトル『バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海』を始まりとし、カードを使用した戦闘、空に浮かぶ大陸を舞台とする世界設定、登場キャラクターと物語の間にプレイヤーが介在したシナリオなど、数々のユニークな点がプレイヤーから高い評価を得ました。
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長らく「ゲームキューブでしか遊べない名作」だった本シリーズですが、今回のリマスターによって、グラフィック・UIの調整やサポート機能を追加して2作セットで現代でも楽しめるようになりました。
第一作の発売からちょうど20年。当時遊んだプレイヤーだけでなく、『バテン・カイトス』シリーズの評判を聞いて今回のリマスターが気になっているという方も多いのではないでしょうか。
本稿では、元となったGC版のグラフィックとの比較を交えつつ、新機能について言及し、シリーズ2作品の魅力をお伝えするプレイレポートをお届けします。
◆まずはシリーズ共通の設定を紹介!
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『バテン・カイトス』シリーズは、過去の戦乱によって荒廃しきった海と大地から離れた人々が、空高く浮かぶ大陸に移り住んだ世界を舞台としています。また、長い時を空で過ごしてきたこの世界の人々は「こころの翼」という羽が背中に生えていることが一般的になっています。
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プレイヤーは『バテン・カイトス』の世界において「精霊」という立ち位置にあり、精霊=プレイヤーの声を聞ける主人公は「精霊憑き」と呼ばれています。これがシリーズに踏襲された大きな特徴で、主人公たちは時に画面の向こうにいる私たちに向かって意見を求め、彼らと対話することで物語が紐解かれていきます。
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この世界では、物の本質を抽出しカードに封じ込める「マグナス」という技術が発達しており、日常生活から戦闘に至るまで人々にとって欠かせない存在となっています。数々の国が大陸ごとに存在する世界の中で、「帝国アルファルド」はマグナス精製技術の独占や強い軍事力で他国を圧倒しており、支配的な地位にあります。人々が俗に「帝国」という場合、このアルファルドのことを指し、ストーリー上でも大きな存在感を示しています。
◆第一作『バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海』
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2003年にリリースされた第一作『バテン・カイトス 終わらない翼と失われた海』は、家族を帝国軍に殺され、その仇を追う少年・カラスが主人公。物語の冒頭、旅の途中でカラスは気を失い、それをきっかけとして彼に憑いていた精霊(=プレイヤー)は記憶を失います。カラスは自身の目的を果たすべく旅を続けてきましたが、世界を危機から救おうとする少女・シェラや仲間たちと出会い、やがて大きなうねりの中に巻き込まれていきます。
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上述した主人公たちの因縁や世界情勢といった設定はファンタジーRPGとしてはよく耳にするものですが、どことなく中南米や東南アジアを思わせるような本作のビジュアルは、西洋中世ファンタジーとは異なる独特の雰囲気を醸し出しています。主人公のカラスはややひねくれ者で、世間ずれしたずる賢さを持っています。一方で親しみを持って他者と接する面もあり、必ずしも近寄りがたい人物でもありません。プレイヤーは彼の相棒として旅に同行し、対話をしながらその行く末を見守っていきます。
◆コンボを狙え! コマンド選択をカード化した「マグナスバトル」
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戦闘はマグナスを駆使して行われるターン性のコマンド型カードバトル「マグナスバトル」。これはRPGの戦闘シーンにおけるコマンド入力やアイテムがそれぞれカードになったものといえます。たとえば自分のターンに手札の剣のカードを選択すれば敵にダメージを与え、敵のターンに盾のカードを選択すればダメージを軽減するといった具合です。
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コマンド選択後は制限時間内に次のマグナスを繋げることでコンボが発生し、連続攻撃や追加効果を得ることもできます。また、マグナス右上の数字「精霊数」を同じもので揃えたり、ひとつずつ増加させていくことでより大きな効果となる「プライズ」を得られます。さらにコンボには特定のパターンで「SPコンボ」が発生する場合があります。例を挙げると「チーズ」と「ハチミツ」のコンボで「栗」が発生する…といったもので、こうしたユニークなSPコンボを見るためについ色々なコンボを試してみたくなるのが、このバトルシステムの魅力です。
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マグナスは戦闘やマップ中の宝箱などから入手でき、メニュー画面から自分好みのデッキ構築にアレンジできます。食べ物や植物のマグナスは回復アイテムとして戦闘外で消費できるほか、ゲームの時間経過によって腐ったり成長したりすることがあり、バトル中に思いもよらない結果を招くことがあります。また戦闘中に「カメラ」のマグナスを使用することで敵や自分の写真撮影ができるといったユニークな要素もあり、現像された写真はお店で売却することができます。このようにゲーム世界の設定とバトルの両面で活かされるマグナスは、『バテン・カイトス』の根幹を成す興味深い要素です。
◆GC版『バテン・カイトス』とリマスター内容を比較!
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本作で施されたリマスター、追加内容は以下の通り。
ゲーム全体のアスペクト比を4:3から16:9に変更
メインキャラクター・ボスキャラクターのグラフィックの一新
メニュー画面のレイアウト変更・マグナス画面でのソート機能の追加
サポート機能の追加(エンカウントキャンセル、インスタントKO、ゲームスピード・バトルスピードの3段階調整、バトルリザルト簡易表示、オートバトル)
オートセーブ機能の実装
「ヘルプ」機能の実装
「NEW GAME+」「NEW GAME-」モードの追加
まずは今回のリマスターでどれほどグラフィックが変わったのか、GC版とHD版のスクリーンショットで比較してみましょう。なお、GC版の映像出力はプログレッシブ出力を使用しています。
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比べてみてすぐにわかるのが、メインキャラクターのモデリングの変更。GC版の3Dモデルはもともと出来が良いのですが、リマスター版では基となる設定イラストにより近いものに仕上がっています。また、テキストウィンドウは小さめに変更され、キャラクターイラストの向きが変更されました。
次に戦闘シーンを見てみましょう。
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戦闘シーンのUIには変更が施されています。HD版ではダメージリザルトなどが全体的に大きくはっきりとしたものに変更されており、パッと見た際の視認性が向上しています。また、手札のマグナスの効果がテキストとして詳細に表示されるようになりました。
最後にメニュー画面を比較してみます。
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メニュー画面のレイアウト・項目はガラッと変更されています。GC版からは各項目の名称が変わり、4項目にまとめられました。また、各項目を選択して開くプルダウンメニューが画面切り替え方式へと変更。デッキ構築メニューはデッキとストックが左右反転したレイアウトになりました。マグナスのテキスト表示についてはもう少し大きくてもいいのではないか? と筆者は感じましたが、解像度や画面サイズの変更に伴って、全体的に情報がすっきりとまとめられた印象を受けます。
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もともと高い完成度を誇っていた本作ですが、HD版では追加機能の充実によって現代のゲームと比較しても遜色なくプレイできるようになっています。「かつてクリアしたけれどまた物語を楽しみたい」ーーそんなプレイヤーにとって、エンカウントキャンセルやインスタントKOは非常に役立つ機能になることでしょう。筆者としては特にオートセーブ機能の追加が嬉しいところで、原典をプレイしていた時の記憶を甦らせつつ、現代的なRPGと同様の下支えがあることで安心してプレイすることができました。
◆第二作『バテン・カイトスII 始まりの翼と神々の嗣子』
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2006年にリリースされた『バテン・カイトスII 始まりの翼と神々の嗣子』(『バテン・カイトスII』)は発売元が前作と異なり、任天堂から発売されました。
第一作の20年前、帝国アルファルドを舞台に物語は幕を開けます。帝国の精鋭である暗黒部隊に新入りとして入隊した、精霊付きの主人公・サギ。彼はパートナーの機械人形ギロとともに初任務に臨むも、皇帝暗殺の濡れ衣を着せられ、追われる身となります。策謀が渦巻き、世界に異変が起こるなか、サギたちの真実を追う旅が始まります。
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軍隊による暗殺任務という物々しい状況から始まる本作は、「マキナ」と呼ばれる機械が登場するなど、風光明媚でファンタジックな印象だった前作とは対象的に近代的な雰囲気を持った作風となっています。序盤から連続してイベントが発生し、ストーリー主導で事態が動いていくという点も前作とは趣を異にする点です。
前作とはひと味違う!?新たなマグナスバトル!
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本作でもマグナスバトルは健在ですが、そのバトルシステムは前作から様変わりしています。前作の戦闘は基本的にターンベースで一部リアルタイム形式でしたが、本作ではリアルタイム形式で戦闘が進行していきます。
またコンボのシステムも異なり、マグナスの精霊数をカウントアップ(0→1→2→3→4のように)させることでのみコンボを重ねていくことが可能となっています。この結果、本作の戦闘では一度に多くのコンボを繋げることに重きが置かれ、手札のマグナスを使うタイミングやアドリブが重要だった前作以上に、よりカードゲームに近い、戦略性がものを言うシステムに変貌を遂げています。
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戦闘画面右端にあるゲージは「MP」を表し、マグナスの使用に応じてMPのレベルが上がっていきます。必殺技や特殊なマグナスの使用にはこのMPを消費する必要があるため、MPの上昇は重要なポイント。最大のレベル5に到達させることができれば、一定時間必殺技などの使用に制限がかからなくなる「バースト」を発動させることもできます。
この他にも、『バテン・カイトスII』のマグナスバトルには仲間とコンボを連携させる「リレーコンボ」などの複数のシステムが盛り込まれており、ゲームが進行するにつれてその奥深さを味わうことができるでしょう。
◆GC版『バテン・カイトスII』とリマスター内容を比較!
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もちろん『バテン・カイトスII』も前作と同様のリマスター、追加機能が施されています。こちらも順を追って見ていきましょう。
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メインキャラクターのグラフィックが一新されているのは前作と同様。画面表示が広くなったことは1枚目の画像を見るとわかりやすく、GC版の画面内に写っていなかった宝箱がHD版の画面では収まっています。
続いて戦闘シーンを比較します。
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前作と比較するとUIに大きな変更は見られませんが、キャラクターのステータス表示位置が変更されたことで、画面中央が広く見て取れるようになったことがわかります。
続いてメニュー画面を比較します。
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こちらも前作ほどUIに変更された点は少なく、GC版『バテン・カイトス』から『バテン・カイトスII』の時点でメニュー画面に大きく手を加えられていたことが窺い知れます。HD版ではメニュー右のキャラクターステータスが簡略化された表示に変更されました。
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本作は序盤からマグナスを使用したイベントや謎解きが幾つかあるため、前作以上にサポート機能が役立ちます。たとえばダンジョンの進行上で必要なマグナスを手に入れるといった少々手間のかかる場面ではエンカウントキャンセルで戦闘を回避し、ゲームスピードを早めることで、必要以上に戦闘を行わずに目の前の謎解きに集中することができました。
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また、細かい部分で嬉しかったのがゲームをロードした際に「あらすじ」を表示する機能が追加されていることで、プレイを再開した時にこれまでの進行状況や目的を思い出せます。これも『バテン・カイトス』を現代的な環境で快適にプレイするために必要な要素といえるでしょう。
◆原典の雰囲気はそのままに、現代に甦った『バテン・カイトス』
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20年の時を経て、グラフィックはより精細になり、遊びやすくなった『バテン・カイトス I & II HD Remaster』。シリーズがもともと備えていた独特の雰囲気やマグナスバトルの面白みは損なわず、細部に調整を施すことで現代的なゲームプレイに耐えうる優れたリマスターとなっていました。
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これまで紹介した通り、『バテン・カイトス』と『バテン・カイトスII』は同じシリーズ、同じ世界観ながら雰囲気や戦闘システムが大きく異なっています。筆者は今回のプレイレポートにあたって両作とも同時にプレイしましたが、それぞれに違った魅力があるからこそ、一方をプレイし終えてからでもまた新鮮な気持ちで遊ぶことができると感じました。
本作にふたたび出会うプレイヤー、そしてこれからはじめて出会うプレイヤー、どちらにもこの機会にぜひプレイしてもらいたい一作です。
BATEN KAITOS (TM) Series & ©Bandai Namco Entertainment Inc.
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