デベロッパーコメントシート
――クローヴを開発する際に目標としたことや、インスピレーションの元となったものついて教えてください。
エージェントゲームプレイデザイナー、Dan Hardison:開発プロセスの初期段階で、よりアグレッシブなプレイスタイルが可能なコントローラーを生み出す時がやってきたと判断して、それを目標にしました。これまで対戦相手に真っ向から挑みたいプレイヤーにとって、オーメン以外の選択肢は限られていると感じていましたから。また、ゲームプレイを通してプレイヤーに教訓を授けてくれるようなMOBAのキャラクターからもインスピレーションを受けています。例えばLoLのアニーは一か所に固まるべきでないことを、ツイステッド・フェイトはマップ上での位置取りの重要さをプレイヤーに教えてくれます。クローヴからは、ラウンドにおける命の価値をどう判断するかについて、プレイヤーが学べるようにしたいと考えました。開発期間中、何人かのライアターたちから(プロプレイヤーの)ANGE1について訊ねられ、このキャラクターは彼のために作っているのかと質問されたこともありました。
――クローヴというキャラクターを作る際、どのようにしてリアリティーを持たせましたか?
シニアナラティブライター、Ryan Clements/ナラティブライター、Antoinette Chable:リアリティーは、エージェントを開発する上で最も重要な柱の1つです。これはチームメンバー全員にとってのスローガンでもあり、エージェントの出身国を決める前からその取り組みは始まっています。
クローヴの場合、取り組みは多岐に渡りました。ナラティブチームは、キャラクターおよびアビリティーにおけるクリエイティブな全体的目標と合致した接点を見つけるため、スコットランドの土地と文化について事前調査を行いました。共鳴し合う音楽や芸術、文学を見つけること──すべてがプロセスの一環でした。
その後はプロのコンサルタントの力を借りました。私たちがどれだけ研究を重ねたとしても、コンサルタントのような生きた専門知識を手に入れることはできませんから。クローヴに関しては多方面の知識を求めて、(特に、アクセントや地域のリアリティーに関して細かな調整を行うため)学術コンサルタントや言語学コンサルタントなどの協力を得ました。
また、キャスティングと収録は現地エディンバラで行ったので、ナラティブチームは都市や文化に直接触れることができました。もちろん、声を演じる役者が独自の解釈をキャラクターに取り入れる機会についてはいつも歓迎しています。
――クローヴをデザインした際の、予期せぬ課題や特筆すべきエピソードはありますか?
エージェントゲームプレイデザイナー、Dan Hardison:私たちのお気に入りのアイデアの中から明らかに実用的ではなかったものを1つ挙げると、「幽体離脱状態」があります。移動速度が非常に遅くなる一方で、敵のターゲットの対象にはならず、全アビリティーを使用できるのですが、プロトタイプの域を出ませんでした。プレイヤーラボでは、敵プレイヤーの進路からどくように、クローヴを操作するプレイヤーに頼まなければなりませんでした。クローヴのデス後に、他プレイヤーに向かって飛んでいって移動を妨害できたためです。これは、私たちが目指すコントローラーのプレイスタイルとは言えませんでした。対戦相手を邪魔しないようにノロノロとよけていく姿は微笑ましく、ランクのレーティングを懸けた場面では決して見られないものだったでしょう。
デス後の状態に関して直面したデザインの課題の1つは、それによって他のアビリティーに課された制約の多さでした。デス後のアビリティー使用は非常に多くな影響力を持ちますので。私たちが指針としたデザイン原則は、「ほとんどの場合において、クローヴを撃つことが間違ったプレイであってはならない」というものです。この原則によって、現在のタクティカルシューターの範囲から逸脱せず、影響力が大きすぎるアルティメットの採用を避けることができました。例えば、デス後にのみ使用可能になる、マップの広範囲に影響を与えるアルティメットもいくつか試してみましたが、クローヴがアルティメットを使うために自らキルされに行くような状況は絶対に作りたくありませんでした。それがまかり通れば、試合は恐ろしく間の抜けたものになってしまうからです。
――クローヴのプレイスタイルを言い表すと?
エージェントゲームプレイデザイナー、Dan Hardison:リスクを冒すことこそがクローヴに最適なゲームプレイです。敵を倒してユーティリティーを排除し、成功を収めるためには、あえてリスクを冒し、より大きな目的の達成のために自分の命を引き換えにする必要があるのです。他のコントローラーとは異なり、実行できるユーティリティーそのものは平均的に弱いものの、デス後に貢献できる能力を有していることで、敵から逃げるのではなくデスするまで戦うことができるのです。味方の命を救えるならば、突っ込んで倒されるのが正解ということもクローヴの場合はあり得ます。1対1のトレードになったとしても、敵がクローヴでない場合はこちらが有利を得られます。クローヴをプレイするには、チームのために命を捧げる覚悟が必要なのです。
――「クローヴ」は現在のメタにどのような変化をもたらすと思いますか?
エージェントゲームプレイデザイナー、Dan Hardison:VALORANTの現在のメタではリテイクが非常に重視されており、コントローラープレイヤーはしばしばユーティリティーを使って単に時間を稼ぎ、チームメイトが来るまでサイトを離れることを余儀なくされています。クローヴは、ルースを使う前に倒されたとしても他のエージェントほど価値が損なわれないため、サイト周辺でのよりリスキーなソロプレイを促進する存在になると考えています。このタイプのエージェントは、プロシーンよりもランク戦に与える影響の方が大きいでしょうが、プロシーンでも反響があれば嬉しいですね!
――クローヴの性自認についてはどのようにアプローチしましたか?
エージェントリード、John Goscicki:エージェントを開発する際には、グローバルなプレイヤー層を反映した多様なキャラクターをしっかりと表現するよう努めています。これは地域や文化だけにとどまる話ではありません。クローヴの性自認は、キャラクターの性格やユニークなゲームプレイスタイルと同様に、クローヴがVALORANTのエージェントとしてどのような存在になるのかを形作る重要な要素となっています。