「犠牲と代償」をVRで味わう奇跡! 『ソルサク』の魂を感じる『ソウル・コヴェナント』は、まさに“これを味わいたかった”の連続

『ソルサク』ファンなら誰もが気になる、しかしVRゲームなので気軽に手が出せない『ソウル・コヴェナント』。そのプレイを味わったファンのひとりから、皆様にその体験をお届けします。

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「犠牲と代償」をVRで味わう奇跡! 『ソルサク』の魂を感じる『ソウル・コヴェナント』は、まさに“これを味わいたかった”の連続
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■『ソウル・コヴェナント』が、『ソルサク』で“シビれた気持ち”をもう一度震えさせる

本作は、『ソルサク』開発陣による完全新作のVRアクションゲーム。そのため、『ソルサク』の直接的な続編ではありません。また世界観もファンタジーをベースとした『ソルサク』とは異なり、こちらは荒廃した近未来が舞台です。

世界観もプレイ体験も異なる『ソウル・コヴェナント』ですが、その根底に潜む本質や、容赦なく踏み込んでくる物語からは、そこはかとなく『ソルサク』に通じる鋭角さを感じました。

果たして『ソルサク』開発陣は、どんな完全新作を作り上げたのか。ここからは、筆者が実際にプレイして味わった『ソウル・コヴェナント』の衝撃と刺激をお伝えします。

■最序盤の設定だけでも濃厚すぎる!

本作の世界観は、ポストアポカリプスな近未来。世界は人工知能「アダム」による機械政府に支配されており、統治という名の人類虐殺が行われています。

この「アダム」の目的は、人類を根絶やしにすること……ではなく、「真の世界平和に導くこと」を目的としています。ただし、その目的を「圧倒的な恐怖」で実現しようと行動しており、その意にそぐわぬ人類を虐殺しているのです。虐殺は目的ではなくただの手段に過ぎず、だからこそ容赦がありません。

無論、“恐怖による支配”が生み出す平和に頷けるわけもなく、生き残った人々は敢然と抵抗を示し、人類最後の砦「東京アーク」に集結。そして、機械兵団に対抗すべく、強化人間部隊「アヴァタール」を組織しました。

……と、最序盤の設定だけで、これだけの濃さを放っています。人工知能による機械政府の支配、平和のための虐殺、多くの屍を超えて抵抗する人類、最後の砦を守る強化人間。いずれも『ソルサク』とは全く違う世界ですが、その過酷さ、そして絶望の切り口など、どこか通じるものを勝手に感じとってしまいます。

■“死を見届ける追体験”を繰り返す先にあるものとは……

主人公の立場も、単なる一兵士に留まりません。プレイヤーは、「アヴァター」と呼ばれるクローン体として目覚めますが、この身体は「輪廻プログラム」と呼ばれる特別なプロジェクトの被検体です。

「輪廻プログラム」の目的は、ある死者の記憶を移植し、その追体験を繰り返すことで「メシアの復活」を成し遂げるというもの。これが、人類にとっての切り札となります。その器が自分の身体であり、“誰かの死を見届ける追体験”をプレイヤーは幾度も味わうことになるのです。

しかも追体験にあたっては、「記憶の移植によるコンフリクトを防ぐため、今の人格は残せません」と、かなり非道な事実を突きつけられます。あくまでゲームの設定とはいえ、臨場感が桁違いのVRなので、得体の知れない恐ろしさや不快感もじんわりと覚えます。

「未来の一部となる全ての死に感謝を」と言われて戦場に送り出される時、それは決して“戦死”だけを意味する言葉ではないのだろう……と考えてしまい、やるせない気持ちが湧き上がります。

ですが、そこまでの犠牲を厭わないほど追い込まれているのが、この世界の人類なのです。

■「骨は、拾ってやる」と約束を交わす兵士たちの、願いと真意

「骨は、拾ってやる」

『ソウル・コヴェナント』をプレイすると、この台詞を幾度も耳にします。本作を象徴する言葉といっても過言ではありません。

「戦争モノの映画や漫画など、どこでも見かけるありふれた台詞では?」と感じる人もいることでしょう。確かに筆者も、本作をプレイする以前から、よく見知っています。ですが、その上でなお、本作を象徴する台詞という認識は揺らぎません。

最初の追体験でプレイヤーが味わうのは、戦死した女性隊長の部下としての記憶です。その隊長・ユリアは、ミスした部下(=追体験上の自分)を庇って、首から上を失ったとのこと。強化人間といってもその状態で生きられるわけはなく、一般的な意味で彼女は「死亡」しています。しかし人間的な死は、本作における“絶対の終わり”とイコールではなく、別の形で再び戦場に舞い戻ります

本作でプレイヤーが手にするのは、対機械兵団専用武器「スケイプゴート」。これは、死んだ仲間の“強化脊椎”を元に造られており、死してなお、その身体は誰かに握られる「武器」として、機械兵団との戦いに駆り出されるのです。

死んだ仲間は、しかしその手の中で生きていて、自分と戦っている……その“事実”が背中を力強く押し、“まだ生きている”という傲慢な希望にすがることで折れそうな心を支えます。

あらかじめ遺言を残していたユリアは、プレイヤーに語りかけます。「仲間の死に喪失感を覚えたなら、それを力に変えなさい」「悲しんでいる時間は人類に残されていない。喪失感を復讐心に、絶望を力に──」と。

誰かの死が、残された誰かを強くする。死すらも織り込む残酷な希望が、この世界の人類に残された唯一の対抗手段なのです。

死してなお、人類を守り戦うために、その身体は武器となる。だから兵士たちは皆、「骨は、拾ってやる」と口にするのです。お前の死は、志し半ばで終わるものではないのだと告げるように。



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《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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