『ファミコン世界大会』は“単なるミニゲーム集”じゃない! ストイックな競技性と「失敗」のない世界が、時間を無限に溶かす【プレイレポ】

『ファミコン世界大会』は、単なるレトロゲームの詰め合わせや、ミニゲーム集ではありません。果たして、その独自の魅力とは?

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『ファミコン世界大会』は“単なるミニゲーム集”じゃない! ストイックな競技性と「失敗」のない世界が、時間を無限に溶かす【プレイレポ】
『ファミコン世界大会』は“単なるミニゲーム集”じゃない! ストイックな競技性と「失敗」のない世界が、時間を無限に溶かす【プレイレポ】 全 15 枚 拡大写真

■ミニゲーム集と一線を画す、「失敗」のない『ファミコン世界大会』

繰り返しになりますが、『ファミコン世界大会』に収録されているゲームは全て、今から30年以上前のファミコンソフトです。厳選した場面を切り取ったとはいえ、そこに高い競技性を感じることができ、時が経っても色褪せない普遍的な面白さに改めて気づかされます。

そうした発見やクセになる競技性の濃さ、丁寧に配慮されたリプレイ性の高さの相乗効果が、『ファミコン世界大会』を遊び続けてしまう中毒性に繋がっています。

隙間時間でも楽しめる気軽さがある上に、熱中すれば同じステージを1時間ずっと遊んでしまう没頭性もあり、これほど手軽で時間泥棒なゲームはかなり稀有な存在です。

そして、もうひとつ伝えたいのが、『メイド イン ワリオ』シリーズや『ファミコンリミックス』との違いについて。本作も含め、それぞれ異なる個性を持つ作品たちですが、「ミニゲームの集合体」という視点で見ると、近いカテゴリーに思われるかもしれません。

しかし、実際にプレイした実感を通して語るなら、いわゆるミニゲーム集と『ファミコン世界大会』は全く異なると断言できます。その最も大きな違いは、本作に「失敗」はない、という点です。

ミニゲーム集の場合、「お題を達成できるかどうか」が問われます。制限時間や条件のもと、お題を達成すればクリア。逆に、達成できなければ失敗です。クリアすれば先のステージに進めますし、ゲーム内でご褒美をもらえることもあります。

一方『ファミコン世界大会』は、お題のクリア自体はさほど困難ではありません。自機がやられてもプレイ内で巻き戻るので、プレイヤーさえ諦めなければ、いずれクリアまで辿り着けます。

最速を目指すゲームなので、更新できなければ「失敗」と捉える人も多いでしょうし、それ自体は決して間違った考えではありません。しかし、『ファミコン世界大会』がプレイのたびに提示するのは、「今回のタイム」だけ。

少なくとも『ファミコン世界大会』の側から「あなたの今回のプレイは失敗でした」と提示することはありません。最速タイムを更新できなくとも、それがゲームオーバーに繋がったり、先へ進めない壁になることはなく、プレイを「失敗」と判断するゲームシステムは存在しないのです。

最速を目指してもそれが叶わなかった時、プレイヤーは「失敗」と感じるかもしれません。ですが、『ファミコン世界大会』はその時の成果を教えてくれるのみ。本作におけるプレイの成功と失敗は、プレイヤーが自由に判断していいのです。

最速を更新しても、動きに無駄があって不満足だと判断する場合もあります。最速に届かなくとも、新たな攻略を見つけたり、コインが稼げたことで、成功と感じることもあります。「失敗」と「ゲーム進行」を直接結び付けない『ファミコン世界大会』だからこそ、記録を目指すストイックな楽しさと、自分の線引きで自由に楽しめる手軽さの両立が実現したのでしょう。


この『ファミコン世界大会』では、ひとりでじっくり記録に挑む「タイムアタック」モードのほかに、毎週切り替わる5つの競技をテーマに、世界中のプレイヤーと競う「世界ランキング大会」モード(Nintendo Switch Onlineへの加入が必須)、友達や家族とオフラインで楽しむ「パーティ」モードなどもあります。

誰かと競い合えば、必然的に「勝利」と「敗北」が存在します。こうした対戦プレイになると、どのラインを「失敗」と考えるのか、人によって意見が分かれるところでしょう。

ですが、勝負に挑むチャレンジ精神に、「負け」はあっても「失敗」はないと個人的に思います。過去の自分と戦う「タイムアタック」モードと同じで、競い合う相手がライバルでも、友達でも、自分でも、勝ち負けと「失敗」はまったくの別物です。

本腰を入れれば時間があっという間に溶けていく一方、1プレイが非常に短いため、長時間ゲームを遊ぶのが難しくなった大人ゲーマーも十二分に楽しめる『ファミコン世界大会』。この夏、パリだけでなく世界中で競技熱が高まることでしょう。


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《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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