■水着回だけでもわかる、キャラの理解度が高い「ニケすい」
ニケたちの水着姿が眩しくて、まずはそのビジュアルに注視してしまいましたが、キュートやセクシーな見た目だけが「ニケすい」の魅力ではありません。
例えば水着のデザインも、ニケたちの個性をしっかりと踏まえたものになっています。「ソーダ」は、濡れたシャツ越しの胸がかなりセクシーですが、本人はいたって無垢なのでそこに誇示や承認欲求はなく、そのギャップが「ソーダ」の純粋さを良く表しています。
「トロニー」の水着は、デザインだけ見るとキュートさは控えめで、他のニケと比べると華やかさもやや劣ります。ですが、彼女は自己肯定感が低く、ネガティブに考えがちな性格の持ち主。そのため「可愛い水着に踏み切れず、この水着を選んだのかな」と想像しやすく、キャラクター性を汲んだデザインなのだと気づかされます。
また「ギロチン」も、自分の趣味ではない水着なので黒衣で隠しているものの、「イングリッド」の気遣いを無下にはせず、ちゃんと着てはいるという律義さ。そして、エヌの涙に負けて黒衣を脱いでしまう人の良さ(と押されると弱いところ)といった部分も、徹頭徹尾「ギロチン」らしさに溢れています。
マンガ的な見栄えを優先するなら、ボディラインが豊かな「ソーダ」はもっと過激なデザインでも映えるでしょうし、「トロニー」もキュートな水着でも似合うでしょう。「ギロチン」は、登場している10コマほどの中で、黒衣を脱いでいるのはわずか2コマ。もっと早く脱げば、それだけ水着姿を多く披露できたはず。
しかし見栄えだけにこだわらず、ニケたちの性格を理解・消化し、「ニケすい」という作品に落とし込んだ上で、説得力のあるデザインや展開を思案して採択する。原作付きのマンガ作品にとって重要な、けれども案外難しい匙加減とセンスを、「ニケすい」は高いレベルでクリアしています。
コメディなのでハプニングが起きやすく、そのため個性を強調して描いている面もゼロではありません。ですが、原作設定を活かしていたり、その延長線上での表現になっているため、一見突飛な行動でも「確かにこのキャラっぽい」と納得させてくれます。
原作の理解度が高いので描写に説得力が生まれ、キャラや世界観がブレることはありません。その結果、原作ファンが安心して楽しめる「コミカライズ」になっているのだと、個人的に強く感じています。