■“シンプル”は“単調”にあらず! 細かな演出と節目の展開で「探偵気分」が盛り上がる
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ゲームシステムとテキストによる巧みな誘導のおかげで、探偵気分に浸りながら速やかな展開を味わわせてくれる『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』(の体験版)。しかし、ゲーム自体がシンプルかといえば、細かい演出から推理系ADVとしての要所を押さえた作りまで揃っており、決して侮れません。
まず、グラフィックを含めたビジュアル面ですが、過度な演出は少なくとも序盤にはありません。しかし、キャラクターの立ち絵は名無しのモブであっても静止画ではなく、ボイスと連動する口パクはもちろん、ちょっとした動きが基本的につけられおり、シチュエーションによっては大きな動きを見せる場面も。
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例えば、女子生徒との会話中に背後から教師に声をかけられると、生徒が振り返って手を振る立ち絵に差し替えられます。ちょっとした絵を省きたいなら、声をかける教師も立ち絵で並べたり、振り向く絵を出さずに一旦消したりと、いくらでも手はあるはず。しかし、細かな絵もしっかりと用意し、没入感を削がない丁寧な演出が行われています。
また遺体現場では、背景に指紋を採取する鑑識の人がいましたが、これも静止画ではなく常に動いており、視覚から入るほどよい情報量が没入感を促してくれます。この辺りはプレイヤー側の好みが分かれる向きもあるかと思いますが、「シンプルだが単調ではない」という的確なバランスだと感じました。
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もうひとつ押さえておきたいポイントは、1日の終わりに訪れる推理パートです。パートといっても特別な要素ではなく、会話と選択肢を通して判明した事実をまとめるという流れになります。
特別な操作は求められず、集めた情報を正しく覚えていれば特に難しいことはありません。ですが、知ったかぶりでそれっぽい選択肢を選ぶと、「情報の整理、きちんとしていかなくちゃ」といった感じで、同僚にやんわりと釘を刺されてしまうことも。
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もちろん的確な答えを選べば、「私も負けていられないわね」と賞賛してくれます。この正誤がゲーム全体にどのような影響を及ぼすのか、体験版の時点では分かりませんが、どうせならやっぱり褒められたいもの。名探偵気分は、こうした箇所でも味わえます。
また、こうしたやりとりがあるおかげで、物語や事件を改めて見つめ直すきっかけになります。そのおかげで理解度も自然と高まり、これも没入感に寄与する要素になっているのかもしれません。