令和に“コマンド型ADV”は通用するのか? 『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』で、その真価に触れる【プレイレポ】

令和という時代に、コマンド型ADVを楽しむという選択肢を与えてくれた『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』のプレイ感に迫ります。

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令和に“コマンド型ADV”は通用するのか? 『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』で、その真価に触れる【プレイレポ】
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■令和の「コマンド型ADV」は、思い出補正抜きで面白い!

今ではADVと一口にいっても、そのゲーム性は多岐に広がっています。物語や設定に即した専用のゲームシステムがあったりと、独自性で競い合う作品も数多く存在しています。

そうした現代のゲーム業界において、本作のようなオーソドックスなコマンドADVは、むしろ珍しい存在と言えるかもしれません。しかし、「オーソドックスだから古臭い」「シンプルなので単調」といったワードが必ずしも結び付くとは限らないと、他ならぬ『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』が証明しているように思いました。

近年のADV作品をも上回る早さで、本題である殺人事件に関わる迅速な展開。シンプルゆえにプレイヤーを選ばない間口の広さ。見栄え重視の派手さはなくとも、没入感を促す適切な演出とグラフィック。探偵気分を高めてくれる、細心のテキスト運び。節目ごとに捜査を振り返る仕組みで理解度を助ける構成など、全体的に見られる丁寧な作りに好感を覚えます。

ネタバレを考慮してストーリーそのものには触れませんでしたが、作中で起きた痛ましい事件と、類似性を帯びた都市伝説の交錯は、捜査に不可解な影を落とし、物語に奥深さを与えており、プレイ意欲に拍車をかけてくれました。

こうしたホラーと事件の両立は、『ファミコン探偵倶楽部』シリーズの定番的な要素で、歴代作品が高く評価されている点のひとつ。本作『笑み男』でも、「なぜ被害者が“笑顔が描かれた紙袋”を被らされているのか」という謎が都市伝説と絡み合い、奇怪で不気味な空気を醸し出すことに成功しています。

また、オートセーブのタイミングやスキップモードの対象、文章の表示速度、主人公の音声のON/OFFなど、個々人で好みが分かれるプレイ環境は、オプションで変更が可能。シリーズ従来の魅力を受け継ぎつつ、ストレスを軽減する配慮も必要十分です。

コマンド型ADVに「古臭さ」を感じる人もいるかもしれません。しかし、間口を広げながら、推理する楽しさを味わえる選択肢として、コマンド選択は今も有効だと改めて実感しました。

コマンドひとつを選ぶことも推理なのだと、久しぶりに思い出させてくれた『ファミコン探偵倶楽部 笑み男』。体験版で高まったプレイ意欲がどんな体験に辿り着くのか、製品版への期待が募るばかりです。



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(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
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《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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