
『Persona5:The Phantom X』の開発でも知られる中国・Perfect World Gamesがスクウェア・エニックスと共におくる『乖離性ミリオンアーサー:リング』が、2024年8月29日に香港・台湾・マカオなど、繁体字圏にてサービス開始となりました。
同作は、スクウェア・エニックスのモバイルゲーム『拡散性ミリオンアーサー』から始まり、いくつかの派生作品や続編でシリーズ展開されてきた「ミリオンアーサー」シリーズの最新作。中でも『乖離性ミリオンアーサー』の続編タイトルになっています。

今回は、配信を迎えた『乖離性ミリオンアーサー:リング』繁体字版を早速プレイしてみました。筆者は、ミリアサは『拡散性ミリオンアーサー』と『乖離性ミリオンアーサー』のプレイ経験があるのですが、その記憶はだいぶおぼろげです。
キャラクターの名前もちょいちょい忘れ、イマイチ懐かしさに浸れないほど記憶が埋没していましたが、それでも「あのミリアサが帰ってきた」と、感じずにはいられませんでした。ちなみにメインストーリーはデフォルトで日本語ボイスとなっていました。
※本稿では、システム上の関係で簡体字・繁体字で表記すべき部分を異体字に置換している場合があります。
※世界観・固有名詞・ストーリーの解釈については翻訳ツールを併用しています。仮に日本向けに配信された場合に齟齬が生じる場合がありますので予めご了承ください。
◆かつてのブリテンは滅び、アーサーたち一行は異世界を旅して彷徨う
ミリアサの世界にはだいたい100万人近いアーサーたちが存在しており、ブリテンに迫り来る脅威「外敵」と彼らが戦いながら、人々はブリテンを統べる真の王たるアーサーを見定めようとしている設定です。
第1作目の『拡散性ミリオンアーサー』では、そんな世界で真の王を目指すアーサーとして、プレイヤーは「剣術の城」「技巧の場」「魔法の派」と、3つの勢力からアーサーを1人選び出し、物語を追っていきました。そして続編『乖離性ミリオンアーサー』では、拡散性との時間軸を共有しつつ、新たに4人の新米アーサーたちが登場し、この4人を中心にまた異なる物語が展開していきました。
本作は『乖離性ミリオンアーサー』の続編タイトルということもあり、メインストーリーで冒険するのは、乖離性のプレイアブルキャラクターとなった傭兵アーサー、盗賊アーサー、富豪アーサー、歌姫アーサーらの4人となっています。どういった経緯で彼が異世界を旅しているのかは、ゲーム冒頭では語られていません。
物語が始まった時点でアーサーの一行はすでに異世界を旅している最中。吹雪く雪原の中で目を覚ました盗賊アーサーが、未知の遺跡へとやってきたところからスタートします。ほかの3人も盗賊アーサーとは別行動中で、どうやらはぐれてしまった盗賊アーサーを探しているようです。



盗賊アーサーは起動した遺跡のシステムから、ブリテンを滅ぼした存在「魔神」と、魔神と契約を結んだ者「ホドル」について知ります。しかし、遺跡のシステムは盗賊アーサーに対して訓練と称しつつ、ブリテンの文明を再起させるため、ホドルを消滅させる存在「バルドル」としての役目を課します。
ゲームではここで選択肢が登場し、「未来はあなたの手の中にあります。慎重に選んでください。」と表示されます。が、この時点ではどちらを選んでも展開に変化はありません。物語中は、時折りこうした選択肢が出現し、選んだ内容によってどうやらその時の物語展開が変化するようです。

遺跡のシステムから強敵を次々とけし掛けられることで、半ば強制的にバルドルとしての役目を引き受けてしまった盗賊アーサー。さまざまな疑問が頭をよぎるものの、なんだかんだではぐれた仲間とは無事に合流を果たします。
ですが、そこでは傭兵アーサーが機械巨人と親しい少女ダンテとトラブルを巻き起こしている最中でした。盗賊アーサーを探す目的で、ダンテに話しかけようとした一行でしたが、傭兵アーサーが先走ってその場にいた機械巨人を全て倒してしまったのです。



アーサーたちはダンテと戦いひとまず落ち着かせることに成功(?)します。彼女と話す中で、ダンテの口から「ファルサリア」の名前を聞き、一行の興味はなぜ少女がファルサリアを知っているのかということに。
これまでの誤解を解く意味でも少女とのコミュニケーションを取り続けるアーサーたちですが、突如その場に話題にされていたファルサリアがやってきて事態はあらぬ方向に。ここからアーサーたちの異世界における旅路は、より困難なものへと波及していくのでした。
◆前作のシステムを踏襲しつつ、新たなシステムで再構築。演出もパワーアップしたカードバトルRPG

本作のバトルは前作の基本システムを踏襲したターン制のカードバトルを採用。毎ターン配られる手札とコストを考慮しつつ、戦況に相応しいカードを発動していくデッキ構築型のRPGとなっています。
前作も3Dゲームではありましたが、本作はより3Dゲームの特色を活かしたカメラ演出も多めです。カードのタイプに応じて3Dモデルのアーサーがそれぞれ敵を攻撃をしたり、仲間にバフをかけたりと、動作や演出面などが前作以上に“3Dゲームらしく”が強調されていました。



特定レアリティのカードはムービー演出付きで、カードイラストのキャラクターが登場してバトルを盛り上げてくれます。
ただ、これらのムービーシーンはいずれもリアルタイムレンダリングのものではなく、あらかじめ出来上がった映像を適時挿入するプリレンダムービーです。今回プレイしたのはAndroidスマートフォン版ですが、どうにもムービーシーンの解像度が粗いため、派手なエフェクトがあるとブロックノイズが目立ってしまいます。
これは推測ですが、ほとんどの高レアリティカードにこうしたムービー演出が入るので、容量削減の施策として低解像度のムービーシーンを別途挿入したのではないかと考えられます。今後も続々とこうした演出付きカードが登場するはずなので、ユーザーのことを考えてのことでしょう。



ゲーム序盤をプレイしたところ、ソロコンテンツのバトルはアーサー最大3人編成が中心になっており、一部のレイドボスやマルチ系は従来通りの4人編成です。
そのため、基本的にストーリーや素材系クエストをプレイする際には、パーティから1人外れてしまうので入れ替える必要がありました。記憶が正しければ前作はパーティの入れ替えがなかった気がします。


バトル中にカードを使用していくと、その使用したカードに対応したアーサーにゲージが蓄積して、アーサー固有の力を発動できる「聖剣技能」が使用可能になります。
アーサーのレベルが上がると最大3種類のスキルから選んで発動できるようになり、これが本作におけるバトルのキモになる要素です。手札に追加でカードを加えたり、手札を捨てることでターン中のカード効果を強化したりなど、戦略性に絡む部分と言えます。

ゲームを実際にプレイしている中で「ああ、ミリアサのバトルといえば確かにこんな感じ」と、記憶が少しずつ蘇ってくるプレイ感触がありました。
従来のバトルシステムをベースに演出面と戦略自由度を強化をしたゲームシステムなので、大きな目新しさはないかもしれません。ですが、デッキ構築の奥深さをしっかり味わえるお馴染みのカードバトルRPGとして、手応えある戦いはちゃんと楽しむことができました。
◆ファルサリアや新キャラクターを操作できるバトルパートも。ガチャ演出はなぜかパチンコがモチーフに

本作ではメインストーリーや一部のコンテンツにおいて、アーサー以外のキャラクターを操作するバトルパートが存在しています。
今回のゲームプレイでは、ミリアサのほとんどシリーズを通して重要人物と言えるファルサリアと、新たに登場したダンテの2名をプレイアブルキャラクターとして操作できました。


ファルサリアに関しては、メインストーリー中の限定的なパートだったため、いわゆるイベント戦のような扱いなのが実情です。一方のダンテは本編と別で、ダンテの物語を描くサブストーリーのプレイアブルキャラクターになっています。
どちらのキャラクターもデッキ構成は決まっていますが、物語開始時点からラスボスレベルに戦闘力が高いファルサリアと違って、ダンテはアーサーと比べても非力な方です。アーサーではないので聖剣技能が使えないのは痛いですが、将来的には前作にもあったアバター差し替え機能でも良いので、ぜひパーティ編成に組み込みたいところです。




『乖離性ミリオンアーサー:リング』は、ガチャの演出も中々に攻めたものを感じます。ガチャと言えば、大体儀式による英雄召喚といった演出が多い中、本作はあろうことかパチンコのような演出が差し込まれます。
どのような意味があるのかまだ理解していませんが、ボタンを連打させられているところ、照り輝く巨大なフォントで「連打」の文字。URのカードが出れば「究極」、そして最高レアリティのMRが出れば、ほとばしる電撃と共に「一発入魂」が表示される演出です。
確かにガチャは運任せでパチンコに近いギャンブル要素かもしれませんが、なんだか煽られているようでもあります。筆者はパチンコを遊ばないので笑えてますが、そうでないプレイヤーはどう受け取るのか実に反応が興味深いところです。



本作では、滅亡してしまったらしいブリテンから離れ、アーサーたちが別の世界で新たな戦いに身を投じていくことになります。その世界は「九界」と呼ばれ、オーディンやヨルムンガンドなど、北欧神話の世界を想起させるキャラクターたちが登場しています。
ミリアサは歴史も長く、スマートフォンゲーム黎明期から過渡期まで、数多の派生作品を生み出しながら確実に作品の歴史を紡いできたスクエニのIP。しかし、スクエニは「量から質」への転換を決め、ここ一年で数多くのスマートフォンアプリのサービスを終了してきました。
『乖離性ミリオンアーサー:リング』が配信された同日、グローバル版『FINAL FANTASY BRAVE EXVIUS』のサービス終了も決定し、ライブサービス型のタイトルは規模を現在進行形で縮小させてきています。
そのため、本作が今後日本展開されるのは、あくまで可能性の一つに過ぎません。昨今、消極的で停滞を続けているモバイルゲーム市場を見るに、日本展開する前に中国でのサービスが終わってしまうのもあり得ない話ではないでしょう。最悪のケースは“日本未展開の幻の続編”という、考えられる限りで一番辛い結末です。
元ミリアサプレイヤーとしては、そうした未来だけは見たくないものですが、中国市場はアプリタイトルの新陳代謝が非常に活発で、初動以降埋もれてしまうゲームも少なくありません。果たして、本作は中国プレイヤーにどう受け入れられるのでしょうか。
最後に、本作は繁体字版公式サイトにてAndroid版のAPKがダウンロード可能です。同時にWindows版も用意されているため、ひと足早くゲームをプレイしたい方は自己責任でインストールしてみてください。