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「ゲームは1日60分まで」。ゲーマー世代が親になった昨今、この言葉は死語になりました。では「子どもがプロゲーマーを目指すこと」についてはどうなのでしょうか。
1990年代から2000年代生まれの「デジタルネイティブ世代」は、デジタルの影響を強く受けて育ち、その夢や将来像にもその特徴が色濃く表れています。
例えば、2021年にソニー生命保険が行った調査では、男子高校生の将来なりたい職業の第6位にゲームクリエイター、第8位にプロeスポーツプレイヤーやゲーム実況者がランクインしています。
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同様に男子中学生でも第1位がYouTuber、第2位がプロeスポーツプレイヤー、第5位がゲーム実況者と、ゲーム関連の職業が人気を集めています。
このようなデジタルネイティブ世代の「将来なりたい職業」について、大人世代はどう考えているのでしょうか。
今回、夏休み期間中に六本木で開催された、高校生限定のeスポーツ大会「Coca-Cola STAGE:0 eSPORTS High-School Championship 2024」の会場に潜入。3日間、来場者の皆さんに「自分の子どもが『プロゲーマーを目指す』と言ったらどうしますか?」と質問してみました。
◆実際の回答を見てみよう
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「ポジティブな回答」「ポジティブな回答(条件付き)」「ネガティブな回答」の3つに分類しました。
【ポジティブな回答】
多様性の時代なので、できることを精一杯やって、自分なりの達成感を得てほしい
不登校だった子どもが一生懸命取り組んでいるので応援したい
将来、会社の付き合いとしてゴルフの代わりにeスポーツをする時代が来るかもしれない
職場でもゲームが話題作りに役立っている。ゲームをすることはもう悪いことではない
eスポーツ大会に来場している大人たちへの取材ということもあり、肯定的な意見が目立ちました。総じて、子どもの自主性を尊重しつつ、現実的な視点でサポートする姿勢が多かったです。
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【ポジティブな回答(※条件付き)】
中途半端が良くない。本当に目指すのであれば、一生懸命やるべき
勉強も大事だと伝えたい。生活に支障をきたさないバランスでやってほしい
「遊びの延長」程度の考えでは難しいと思うので、真剣に取り組むのであれば応援したい
私もゲーマー世代なので、子どもにも「やりたいことをやればいい。ただし厳しい世界である」と伝える
学業や私生活とのバランスを保つことの重要性を強調する意見もちらほらと。応援するだけでなく「社会の厳しさ」も伝えたいという声もありました。
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【ネガティブな回答】
収入が安定しておらず、将来性に不安を感じる
プロゲーマーは選手寿命が短いので、食べていけるかが不安
プロゲーマーを目指しつつも、他分野でも頑張ってもらいたい
結果が全ての世界なので、自分で「どこまでやれるか」をしっかり考えてほしい
選手寿命の短さや、安定した収入が得られない点が心配されています。真っ向から否定というよりも「少し慎重に考えたい」という温度感です。夢のリスクを理解した上で、どうサポートすべきか悩んでいる様子でした。
◆「守り」から「攻め」に変わりつつある、親の応援
特に驚いたのは、「子どもの進路選択のために、意図的にeスポーツ関連の情報も集めている」という親御さんもいたということでした。また「子どものために、週末のeスポーツイベントの情報を集めている」という親御さんもいました。
ゲーマー世代が親になったことで、親御さんの応援スタンスが「ゲームのことは分からないので見守ることしかできない」(消極的な応援)から、「自分のゲーム知識を使って援助したい」(積極的な応援)に変わりつつあるのかもしれません。
◆ゲーム好きだった「過去の自分」と重ね合わせている?
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もしかしたら、親御さんの中には「あと20年遅く生まれていれば、自分もプロゲーマーになれたかもしれない」という歯痒さが、子どもを支援する原動力になっている人もいるのかもしれません。
かつての「自身の夢」と「子どもの夢」を重ね合わせているのでしょうか。
「好きなゲームをするだけで生きていきたい」は誰しもが一度は夢見たことです。時は流れ、親世代が「自分が叶えられなかった夢(ゲームで生きていく)を子どもに託したい」という発想になってきてもおかしくない時代になってきました。
◆「子どもを夢から引きはがす」のも親の使命か
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数年前までは、親世代のゲームリテラシーがそこまで高くなく、「子どものゲームの実力は分からないが、とりあえず応援する」という構図になりがちでした。
ただ最近は、親世代のコアゲーマーが増えており、良くも悪くも親御さんが「子どものゲームの実力が分かってしまう」という時代が到来しつつあります。これは残酷な結末を招くこともあるでしょう。
自分の子どもが毎日FPSを15時間練習しているのに、ふとプレイをみているとエイムが“ぐだぐだ”だったとき、親としては何かしらの判断と子どもへの声がけが求められます。
場合によっては、親の責任として「子どもを夢から引きはがす」ことも必要かもしれません。親世代の「ゲームの理解度」が高くなることは、必ずしも「子どもの夢を応援」に繋がるとは限らないのかもしれません。