
現地時間の3月17日、米サンフランシスコで開催中のGDC 2025会場にて、『パルワールド』のコミュニティ・マネージメントを語るパネルセッションが開催されました。
このパネルセッションでは、小規模の開発体制でありながら非常に多くのメディアに取り上げられたことでゲーマーコミュニティやメディアから厳しい目を向けられ、デマ情報で逆風に晒された『パルワールド』の開発チームが、どのようにバイラルコミュニティと向き合っていったかが語られました。
3つの大きなデマ情報

本パネルセッションに登壇したのは、ポケットペアでパブリシング・マネージャーとコミュニケーション・ディレクターを務めるジョン・バックレー氏。アイルランド出身で、11年前にヨーロッパが嫌になって日本に来たというバックレー氏。現在、ポケットペアには70人から75人のスタッフがおり、平均年齢は31歳と若い職場なのだそう。
以前同社が手がけた『オーバーダンジョン』や『クラフトピア』が日本とアジアで大きくヒットしたため、当初は『パルワールド』も日本と中国をターゲットに開発されていましたが、数年前にINDIE Live Expoで発表されてからは欧米のメディアにも大きく注目されていったと説明。

2024年1月に『パルワールド』がリリースされてからすぐに1,900万人のプレイヤー数を記録するという信じられないような状況になりましたが、TwitterやDiscordを中心に悪評やデマも発信されるようになりました。

初期に大きく拡散された3つの大きなデマ情報として、パルのデザインに生成AIを使ってということ、盗作ではないかということ、3Dモデルの盗用ではないかというものがありました。これらは国内外の多くのメディアも報じており、『パルワールド』に対してネガティブな意見を集める要因の一つになったと指摘しています。
バックレー氏は、騒動の発端となったTwitterユーザーについて、現在はそれらの投稿のほとんどを削除していると指摘。
こういった状況であったため、当時、3、4ヶ月の間は公式としての情報発信を控えていたのだそうです。

そして、詳しいことを話せないとしながらも9月に任天堂から訴訟を起こされた出来事は大きなショックだったと説明。これに対しては落ち着いて対処することが大事だとしています。(Q&Aで、日本でのリリースに関しては法的なチェックは全て通っていたとバックレー氏は説明しています。)
今ではあまりに多くの要望やバグのレポート、フィードバックが届くようになったため、これまでポケットペアの代表として直接SNSなどでコミュニティとやりとりしていたバックレー氏はそれをやめて、フォーム入力で自動化して対応するようにしました。

また、ポケットペアの社員の多くは日本人で英語を話せないため、英語のコメントの多くは気づかれない状態でした。そこでバックレー氏は、仕事のやりとりに使っているSlackで良いコメントやメッセージ、ファンアートを共有できるチャンネルを作ってポジティブな雰囲気を取り戻そうとしたのだそうです。
バックレー氏は、日本のゲームコミュニティが欧米に比べて非常に小さかったため、ビジネス上の友人を作ることが助けになったと語ります。『パルワールド』を発売する前は日本や中国の企業の知り合いがほとんどでしたが、発売後には欧米の企業からアドバイスをもらったり、一緒に楽しんだりする機会を得ることがある種の助けになったとしています。
「攻め」の姿勢へ


今では、悪意のあるデマへの対抗策として「攻め」に出ているとしています。これは日本のCG専門誌CGWorldから特集を組みたいとの連絡があったため、良い機会だと感じ、パルがどのようにデザインされていったかを段階的に紹介したり、開発者インタビューを掲載したりしています。この「攻め」に関してはバックレー氏自身の案ではないし効果があるのかはまだわからないが、デザインが生成AIを用いているといったデマに対して意味があるものになっているのではないかと述べています。
現在、良い評判も悪い評判も送られ続けて来ているものの、予想以上に子供達が『パルワールド』をプレイしてくれていること、ショーン・マレー氏が本作のファンでいてくれることなどが本当に素晴らしい状況だと述べました。


最後に、東京ゲームショウ2024で巨大なブースを出展したこと、ゲーム以外のIPを拡大するためにアニプレックスとソニー・ミュージックとのジョイントベンチャー「パルワールドエンタテインメント」を設立したことを紹介。
そして、どうやったら成功するのかわからないままゲームを作ってきたけどどれも成功したこと、『テラリア』とのコラボ発表など、『パルワールド』の未来は1周年を迎え明るいのだと締めくくり、セッションは幕を閉じました。