■犬の恐ろしさは、もはやトラウマ級……!

集団で徒党を組んだり、暗闇に紛れてぶつぶつしゃべり続けるヤーナムの住民や、金切声を上げて襲いかかるカラスは、この市街を恐怖で彩る恐るべき存在です。
しかし、こうした存在以上に恐ろしいのが……犬です。住民と共に行動することも多く、優れた嗅覚で狩人を発見し、巧みな機動性でこちらを一気に追いつめてきます。

ステータスでいえば、犬も他の敵と変わらぬ雑魚の範疇に入るかと思います。しかし、心が凍りつきそうな唸り声と、圧迫感すら覚える迫力ある風情が、以前と変わらぬ恐ろしさを感じさせます。

この恐怖心の根底にあるのは、10年前に咬み殺された記憶が原因でしょう。初見から恐ろしい相手でしたが、探索中に不意を突かれ、犬に咬み殺されたあの時……しかも、2匹による連携攻撃でした。
1撃目を食らって仰け反っている間にもう1匹から咬まれ、立て直そうと思う暇もなく1匹目が再攻撃……その連鎖で瞬く間に減るHP、焦って操作もままならない筆者、猛攻とどまらぬ2匹の犬、立ち上がれない狩人。全てが悪夢のまま、狩人の夢に落ちるのを見届けるばかりでした。

対処さえ間違わなければ、犬も恐れるほどではない相手です。それが分かっていながらも、威圧的なステップと猛攻に、身体よりも早く心が反射的に死んでしまいます。落ち着けばいいだけなのに、ヤーナムの犬を前にして、到底落ち着けるわけがありません。
■“死にゲー”の拠り所だった「盾」にも頼れず……

『ブラッドボーン』をことさら恐ろしく感じるのは、戦うべき敵だけではなく、ゲームデザインにも理由が潜んでいます。例えば、『ソウル』シリーズで筆者は、頼りになる盾を愛用し、敵の猛攻を防いできました。
しかし『ブラッドボーン』は、銃撃によるパリィからの内臓攻撃が強い一方、盾が有用な場面は限定的です。もちろん使えないわけではありませんが、種類も少なく、恒常的な防御手段としては正直心もとない存在です。

状況に応じて使い分ける上では、盾も有効な手段となりますが、つまり有効ではない場面では他の手段が必要という意味でもあります。『ソウル』シリーズでは、盾で守れる安心感からパニックにならずに済みました。しかし、『ブラッドボーン』だとそうはいきません。

「だったら、パリィをすればいいのに」と言う意見は最もですが、それが出来れば苦労はしませんっ!
■「リゲイン」は、狩人を死に誘う罠!?(※個人の感想です)

銃撃パリィと並んで『ブラッドボーン』を象徴するシステムといえば、「リゲイン」も外せません。
ゲームとはいえ、死ぬのはやはり怖いもの。その恐怖の視覚化ともいえるのが、攻撃を食らったら減っていくHPです。回復手段の輸血液は所持本数は限られているため、この本数が減っていくのも恐怖に他なりません。

そんな極限状態の中、攻撃を食らった後の一定時間内に反撃すれば、失ったHPの一部を取り返せるという「リゲイン」は、窮地に活路を求めるシステムと言えるかもしれません。実際、このシステムを活用して戦い続ける狩人の姿は、非常に頼もしく見えます。

しかし、この回復手段も、腕前が伴ってこそ。ダメージを受けたショックを引きずったまま「リゲインで回復しないと……」と焦って攻撃を繰り出すと、だいたい敵の反撃を食らう羽目になり、結果的に致命傷になるか死亡という末路を迎えがち(※筆者の場合)。
体力回復という甘いエサに釣られた狩人を、残酷な死へと誘う「リゲイン」……見習い狩人にとっては、そんな恐るべきシステムでもあるのです。全て自業自得ですが!

LV100越えの狩人でも、ヤーナム市街の散歩は心臓に悪いものでした。10年の月日を経ても恐ろしさが薄れない『ブラッドボーン』は、今もやはり苦手で、そしてこれだけの恐ろしさを創造した開発陣の手腕に頭が下がるばかりです。
恐れ狼狽えるのは、あくまでプレイヤーの勝手。それだけの感情を動かす『ブラッドボーン』の没入感の高さを、今回改めて実感させられました。

“死にゲー”というより、ある意味ホラーゲームと呼びたいくらいの体験ですが、「怖いのに覗きたい」「怖いけど触れたい」という欲求もかきたててくるのが、何より恐ろしい点かもしれません。
当時挫折したとはいえ、実は「メルゴーの高楼 ふもと」までは辿り着いています。10周年と今回の記事執筆を機に、本作のクリアに挑もうかとも考えています。ビクビクしながらですけども!

なお、PS4版のトロフィーを確認すると、挫折の象徴とも言われている「ガスコイン神父」を倒したユーザーは、現在44.3%でした。未だ半数以上のプレイヤーが、志半ばで倒れている『ブラッドボーン』。当時諦めた方も、この機会に再びヤーナムの地に戻ってみませんか? 共に、10年越しの悲鳴を上げましょう!