『ぷよぷよテトリス2S』から考える、“落ち物パズル”2大巨頭の意外な関係性―80~90年代の大人と子供を巻き込んだ熱狂がここに

『ぷよぷよテトリス2S』から覗く、ぷよぷよとテトリスの関係。

ゲーム Nintendo Switch 2
『ぷよぷよテトリス2S』から考える、“落ち物パズル”2大巨頭の意外な関係性―80~90年代の大人と子供を巻き込んだ熱狂がここに
『ぷよぷよテトリス2S』から考える、“落ち物パズル”2大巨頭の意外な関係性―80~90年代の大人と子供を巻き込んだ熱狂がここに 全 10 枚 拡大写真

ニンテンドースイッチ2用ソフトとして発売された『ぷよぷよテトリス2S』。前作『ぷよぷよテトリスS』も、初代ニンテンドースイッチと同時に発売された経緯があり、本作は「ぷよぷよテトリス」シリーズにとって、“第2のスイッチローンチタイトル”とも言うべき作品です。

その内容は、誰もが知っている『ぷよぷよ』と『テトリス』という全くルールの異なる「落ち物パズルゲー」同士で対戦できるというもの。詳しいことは後述しますが、これが結構スリリング!

人類がその英知を総動員して編み出した2大タイトルの融合作品。今回はそんな『ぷよぷよテトリス2S』をプレイしつつ、「ぷよぷよとテトリスの微妙な関係性」について解説していきたいと思います。

◆激動のソ連から登場した落ち物パズルゲー

筆者の生年は1984年。この時代、まだ世界は東西に分かれていました。

東側諸国を率いるソビエト連邦は、この年まさに政治的激震を迎えます。ソ連共産党中央委員会書記長のユーリ・アンドロポフがその就任から2年もしないうちに死去し、後継にコンスタンティン・チェルネンコが選出されました。しかし、チェルネンコは既に肺気腫の悪化で歩くことすらままならず、さらにその病状をイギリス社会民主党党首だったデイビッド・オーウェンに見抜かれてしまいます(オーウェンは医師でもあります)。

日本のスポーツ漫画でも、ソ連は常に最強の存在でした。広大な国土に展開する世界一の戦車師団、そして驚異的な身体能力のアマチュアアスリート。そんなソ連のイメージが、一気に崩れ去ったのが1984年です。

混沌とした状況の中、コンピューター技師のアレクセイ・パジトノフという人物が開発した落ち物パズルがソ連国内、そこから何と壁を越えた西側諸国へも広がりました。これが『テトリス』です。

この時代、人々の娯楽にまつわる製品は何らかのルートで西側から東側へ行くことはよくありましたが、その逆はあまりありませんでした。筆者は旧ソ連製のフィルムカメラを数台所有していますが、独特の味わいある写りはさておき全体的な性能は……同時期の日本製や西ドイツ製に大きく劣ってしまいます。製造年やロットナンバーによって当たり外れがあることも旧ソ連製カメラの特徴です。

しかし、『テトリス』はアメリカや日本のゲームメーカーも思いつかなかった「落ち物パズル」というジャンルを創設するほどの先進性を有していました。

◆子供たちを熱狂させた対戦落ち物ゲー『す~ぱ~ぷよぷよ』

『テトリス』が生み出した世界的な落ち物パズルブームは、同時に新たなインスピレーションを各国のクリエイターに与えます。『ぷよぷよ』もそんなブームの中で生まれた作品ですが、『テトリス』と大きく異なるのは「連鎖」という概念がある点です。

同じ色のぷよを縦横問わず4個連結させれば消える仕組みの『ぷよぷよ』。消えたぷよの上に乗っていた異なる色のぷよが物理法則に従って落下し、それが4個連結して消滅し、そのまた上に乗っていた別の色のぷよが落下して同色のぷよと連結し……という現象が発生するのがこの作品の特徴。連鎖を繰り返すと、スコアが一気に跳ね上がります。対戦プレイの場合は、相手に対する大きなペナルティーになります。

『ぷよぷよ』の登場は1991年10月。ただし、この時のぷよぷよはいわゆる「旧ぷよ」と呼ばれるもので、こちらは対戦プレイの概念はまだありませんでした。競技性のあるぷよぷよが普及するきっかけになったのは、スーパーファミコンソフト『す~ぱ~ぷよぷよ』の発売ではないでしょうか(1993年12月)。

当時、筆者は小学3年生でした。『す~ぱ~ぷよぷよ』発売から子供たちの間での浸透は割と早かったと記憶しています。落ち物パズルなのに対戦に主眼が置かれていること、そして上から容赦なく落ちてくるおじゃまぷよが強烈なインパクトを放っていました。

◆大人たちは「テトリス派」だった!

『ぷよぷよテトリス2S』は、言い換えれば「80年代育ちVS90年代育ち」の容赦ないバトルです。

小学生たちが『ぷよぷよ』に夢中になっていた90年代、その光景を見つめていた大人たちも子供と一緒に『ぷよぷよ』……ではなく、『テトリス』をプレイしていました。たまに子供に付き合ってあげる意味で『ぷよぷよ』もやっていましたが、やはり大人は『テトリス』派。

1996年、『たまごっち』の発売から巻き起こったキーチェーン型携帯ゲーム機ブームの際も、大人たちは『たまごっち』ではなく『テトリスミニ』を好んでプレイしていた記憶があります。

『ぷよテト』では、そんなちょっと頑迷な大人たちを『ぷよぷよ』で迎え撃つ、または90年代育ちの子供たちに80年代育ちの大人が『テトリス』の奥深さを思い知らせてやることができます。

現状はスイッチ2が十分に出回っていない状態のためか、『ぷよぷよテトリス2S』のオンライン対戦はかなり寂しい状態ではあります。平日の昼間、或いは深夜ではなかなかマッチングしない状態です。しかし、ここは何とか粘ってみましょう。他のプレイヤーとのマッチングが成功し、なおかつ「ぷよぷよVSテトリス」の対戦になると、熾烈な異種格闘技戦を全身で体験することができます。

『ぷよぷよ』プレイヤーへのペナルティーは、上から落ちてくるブロック。『テトリス』プレイヤーへのペナルティーは、下から突き上げるおじゃまぷよ。どちらが有利なのか……はまさに個々のプレイヤーの腕や癖にかかっています。

◆RENを重ねて相手をフルボッコに!

『ぷよぷよ』は、事前の積み方によってはどこまでも連鎖ができます。中には10を超える連鎖をしてしまうプレイヤーもいるほどです。

それに比べたら、『テトリス』は一度に同時に消せるブロックは4列まで。こりゃちょっとテトリスが不利なんじゃないか? と思ってしまうのは初心者の発想。対戦プレイで重要なのは、一度に消した列の数ではなく「その後のブロック落下でも連続して消せるか」です。英語ではコンボ、日本語ではRENと呼ばれるこのアクションですが、これが上手く継続できれば相手へのペナルティーも大きくなります。多重RENを決められた『ぷよぷよ』プレイヤーは、文字通り目も当てられないほどの惨状に苛まれます……。

『テトリス』プレイヤーはぷよぷよの連鎖を決められる前に、RENを重ねていく必要があります。したがって、対戦プレイではスピードが鍵。できるだけ早く下準備を済ませて多重RENを実施するか、そうなる前に『ぷよぷよ』プレイヤーは連鎖を発動するか……。このスピード感に慣れていないプレイヤーが迂闊にオンライン対戦に入ってしまうと、手練れの対戦相手にボコボコにされてしまうということも。う~~~ん、無情な世界だ!

◆「スワップ」で腕を磨こう!

初心者がオンラインに接続し、全世界パズルリーグに顔を出してしまうと何もできないままフルボッコ……となってしまうのは上述の通り。

いきなり全世界パズルリーグを目指すのではなく、まずはCOM相手の「スワップ」で腕を磨くことをお勧めします。

スワップは、『ぷよぷよ』と『テトリス』のフィールドが時間毎に交互するルール。プレイヤーは、両方のフィールドを行き来しながら連鎖やRENを組み立て、相手にペナルティーを与えていきます。文字で書くのは簡単ですが、やってみると非常にややこしい!

ですが、慣れると「ああ、ここはとりあえずこうしておけばいいんだな」というコツが分かってくるようになります。

『ぷよぷよ』にしろ『テトリス』にしろ、大事なのは適度なタイミングでの「とりあえず」。欲張って大量連鎖を狙おうとすると、その隙を相手に突かれておじゃまぷよが上から降ってくる……ということもザラにあります。ですからここは「程よい連鎖」を実行し、相手に絶え間ないプレッシャーを与えていきます。ボクシングで言うところのジャブと同じです。

そんな『ぷよぷよテトリス2S』は、今後ニンテンドースイッチ2が希望者に行き渡るにしたがって、ますます盛り上がる作品であることは間違いありません。既に入手した人は、来たる多くの挑戦者を迎え撃つために今から腕を磨いていきましょう!


ぷよぷよテトリス2S -Switch2
¥4,491
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)
ぷよぷよテトリス2S|オンラインコード版
¥5,489
(価格・在庫状況は記事公開時点のものです)

《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

+ 続きを読む

この記事の写真

/
【注目の記事】[PR]

関連ニュース