ドナルド・トランプ大統領の就任以降、あらゆる分野での予算削減が報じられてきましたが、ゲーム分野でもその悪影響は確実に表れ始めていると、海外メディアGameSpotやGame Developerなどが報じています。
ゲーム業界への影響……デジタル遺産の保管に関するプロジェクトへの助成金も中止に
トランプ大統領による「米国第一」の理念にそぐわない政策は廃止という方針により、対外援助などの国際分野、医療や人工知能(AI)研究の中止や縮小、NASAへの大幅な予算削減要求といったニュースが相次いでいます。それらは、ゲーム関連の研究者やプロジェクトも無縁ではないようです。
国立科学財団(NSF)や国立衛生研究所(NIS)が公表した「助成金停止リスト」によれば、「中高生を対象としたゲームとストーリーを通じ、気候関連の問題を解決していく没入型プロジェクト」や、「オンラインゲームとオフラインの友人関係のネットワークアプローチを組み合わせた、性的マイノリティを対象としたHIV予防に関する知識の向上を図る調査」といった研究は打ち切りに。
中には完成直前だったプロジェクトもあったと、海外メディアGame Developerは報じています。これらの予算削減によるゲーム業界での最大の課題として、ビデオゲームの収集と保管を同誌は挙げています。
図書館は老朽化した(物理)ソフトウェアの保存と、カタログ化において重要な役割を果たしてきました。しかし、資金を失ったことから「過去数十年にわたって築き上げてきたビデオゲームコレクションを維持できない危機に瀕している」とのこと。ワシントン大学情報学部が2024年から開始した「ゲームの歴史と教育にとって重要なゲームを定義し、デジタル遺産の保存、ハードとソフトへのアクセシビリティ強化」などを行うプロジェクトも、助成金中止の対象となりました。
ビデオゲーム業界におけるジェンダーや人種の格差を研究する、ミシガン州立大学メディア情報学部の准教授・Rabindra Ratan氏は、Game Developerの取材に対し「ゲームに関わる分野での、組織的不平等を減らそうする人々への“文化戦争”だと考えている」ともコメントしています。
また、多くの研究者がビデオゲーム業界は技術開発、探究、実験の推進に貢献し最前線にあるため、今回の予算削減はゲーム業界だけにとどまらず、より直接的な悪影響が永続的に生じると考えているようです。