『鳴潮』&『パニグレ』を生み出したKURO GAMESの歩みとこれからの挑戦【コラム】

中国・広州を拠点とするゲーム開発会社KURO GAMESが、近年大きな注目を集めています。

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『鳴潮』&『パニグレ』を生み出したKURO GAMESの歩みとこれからの挑戦【コラム】
『鳴潮』&『パニグレ』を生み出したKURO GAMESの歩みとこれからの挑戦【コラム】 全 21 枚 拡大写真

中国・広州を拠点とするゲーム開発会社KURO GAMESが、近年大きな注目を集めています。

代表作『パニシング:グレイレイヴン』に続き、2024年5月23日にリリースされたオープンワールドARPG『鳴潮』は、グローバルな規模で一定の成功を収め、同社を中国ゲーム産業の最前線へと押し上げたと言って良いでしょう。

先日広州で開催された、同社にとって初となる大型リアルイベント「KURO FEST」も大盛況でした。広州交易会を会場として、『鳴潮』と『パニシング:グレイレイヴン』の世界観をイメージしたブースを大々的に出展したのです。ファンは公式コスプレイヤーとの記念撮影だったり、ゲームをモチーフとしたアトラクションを楽しんだりできました。

今回は、そんなKURO GAMESのこれまでの歩みについて、簡単に辿ってみようと思います。

◆中国広州から世界へと拡大していく新興スタジオの軌跡

KURO GAMESの前身は珠海市で2014年9月19日に設立されたZhuhai Kuro Technologyです。Zhuhai Kuro Technologyは、かつて日本国内でもサービスが展開(パブリッシングは6waves)されていた『戦場のツインテール』を開発したことでも知られています。

同作は美少女キャラクターを前面に押し出して萌え要素を多分に含んだ、二次元系のスマートフォン向けシューティングでした。

『戦場のツインテール』

そんなZhuhai Kuro Technologyは、2015年4月にチームが拠点を広州市に移転した後、2017年1月にKURO GAMESとして新たに法人を設立します。

2019年12月になると開発中だった『パニシング:グレイレイヴン』(以下、『パニグレ』)を中国国内向けに配信し、2020年12月には日本向けにサービスイン。翌年2021年7月に『パニグレ』はグローバル展開されるに至りました。

庫洛ゲームの初期沿革を示す年表(2014〜2017年)。珠海での創業から広州移転、『戦場双馬尾』配信開始までの流れが記されている(出典:Wayback Machine - Internet Archive)
『パニシング:グレイレイヴン』

『パニグレ』が配信された時期、当時日本国内では、miHoYoの配信する『崩壊3rd』がスマートフォン市場に存在しており、スマートフォンで遊べる“本格3Dアクション”というゲームジャンルが実質的に競合同士でかち合うこととなりました。

しかし、『崩壊学園』シリーズの既存IPを基軸として、アニメ調テイストの美少女キャラクターを押し出していた『崩壊3rd』に対し、ダークなポストアポカリプスの切り口で世に出た『パニグレ』は、上手く棲み分けることができていたように感じます。

『パニグレ』は『パニグレ』としての強みを明確なものにしつつ、着実にグローバルなコアファンの数を伸ばして粘り強く支持されるタイトルとなりました。過去には『NieR:Automata』『デビルメイクライ5』『ブラック★ロックシューター』など、『パニグレ』のように退廃的な世界観を持った他社人気IPとのコラボも実施しています。

2023年3月、中国の大手コングロマリットであるTencentの子会社、Guangxi Tencent Venture CapitalがKURO GAMESに出資したことが話題となりました。Tencentはこの出資によって14.33%の株式を保有するに至り、KURO GAMESの法人株主となります。

それ以前の資金調達は2020年に行われ、HERO GAMESが46.98%の株式を取得、残りを創業チームが保有する形でした。当時はまだ開発中だった『鳴潮』に対する期待感があってのTencent参入と、中国誌では言われています。

こうして月日が流れていき、来るべき2024年5月。『鳴潮』はついにスマートフォン/PC向けに全世界同時リリースを迎えます。創業からわずか10年あまりで、世界的な大手企業とのパートナーシップを実現するまでに成長したKURO GAMES。その歩みは、中国ゲーム産業の急速な国際化を象徴する存在と言えるでしょう

そして2025年2に配信されたVer2.1「鳥さえずり 波唄う」からは、対応プラットフォームにPS5が新たに加わることになり、これも家庭用ゲーム機を中心に遊ぶユーザー層が触れる一つの機会となりました。さらにその翌月にはMacOSにも対応し、北京で開催された先行体験会にApple CEO TimCook 氏をゲストとして招待するなど、力の入れたプロモーションを展開していきました。

こうして『鳴潮』の配信から大々的にIP認知度を拡大する動きが活発化していき、最新バージョンの度重なる改善とグラフィックスのブラッシュアップによって、常にゲーム体験が向上され話題を呼んでいるのです。

◆「KURO FEST」という新たな挑戦から見出される次のステップ

2025年8月9日~10日に催された「KURO FEST」は、まさしくファンに向けた祭典のような催しと言えました。また、KURO GAMESにとって初めての大型リアルイベントは、ファンコミュニティすらもメインコンテンツの目玉としています

会場は19号館と20号館の2会場に分かれており、1つは『鳴潮』と『パニグレ』の世界観を基にしたオフィシャルなブースが展示されるエリア、もう1つはライブステージや、ファンによる同人グッズのほか、公式グッズの物販などが行われたエリアとなっていました。


これまでKURO GAMESはゲームのオンライン展開を中心に成長を遂げてきました。しかし、広州という同社にとっても縁のある都市で開催されたKUROFESTでは、ファンと直接交流する場を設け、かつゲーム体験を現実空間に拡張するという並列的で大胆な試みを成功させています。

会場には『鳴潮』の舞台をイメージしたブースが随所に設置され、来場者はゲーム内の情景を現実の空間でアトラクションと共に楽しむことができました。配信番組だけでは得られない現場での熱量を形にすることで、ファンに報いるリアルイベントを作り上げることができたのでしょう

KURO FEST2日目にステージへ登壇したKURO GAMESのSolon Lee氏は、下記のように述べています。

「まずは本日ご来場いただいたすべての指揮官・漂泊者の皆様、そして本フェスを支えてくださったステージ上と舞台裏、すべての関係者、出演者の方々に心から感謝します。皆様のご来場、ご支援、そしてスタッフの尽力があってこそ、第一回 KUROFEST を無事に開催することができました。

このフェスは昨年から準備を始め、KUROのプレイヤー同士が直接会い、交流できる場を全力で作りたいと願ってきました。当初は本当に来場していただけるか不安もありましたが、この二日間を通して多くの皆様にお越しいただき、チームに大きな自信と勇気を与えていただきました。

KUROには創業以来11年間、私たちを支えてきた“開発精神”があります。この精神が、作品を通して皆様にも力を届けられることを願っています。今回ご来場いただいた方も、オンラインで応援してくださった方も、これからも共に高みを目指して歩んでいきましょう。」

KURO FESTのチケットは争奪戦とも言える様相で早々に完売したと言われています。当日は、本国ユーザーだけではなく、日本や欧米圏からチケットを購入した一般参加者の姿も見られました。こうした成果は『鳴潮』と『パニグレ』、同社の2大IPの確かな人気をただ証明しただけではありません。

これまで“ライブサービスゲーム&同人番組”というオンラインコンテンツの活動が中心だったKURO GAMES創業11年の積み上げが、大規模な単独イベントに多くのファンを動員できるという、ユーザーの熱量を証明したと言えます。

KURO GAMESの挑戦はまだまだこれから。中国での大型イベントを成功させましたが、同社のフォロワーは今や世界中にいます。KURO FESTの開催とSNSでの話題を機に、他国でも何かしらのイベントを望む声が高まりつつあり、KURO GAMESとしてはゲームの改善だけなくそうした声にも向き合っていくことになるでしょう。

規模感を抑えたリアルイベントや、ポップアップストアなどはこれまで日本でも実施されてきました。KURO GAMESはグローバルユーザーに対し、今後どのような形でファンコミュニティをより拡充させていくのでしょうか......?

Copyright ©KURO GAMES. ALL RIGHTS RESERVED.

《そりす》

ライター そりす

東京都福生市生まれのゲームライター。そしてお酒と革靴が好物でソロキャンプが趣味のミニマリスト気質おじさん。サ終ゲームのヒロインをAIで復活させてニヤニヤしたり、国語辞典を持ち歩いて山中フラフラしたりしています。ULキャンプに傾倒しているためSNSは大体キャンプの話題が多め。

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