東京ゲームショウが1日増えると、何が起きる?インディーはしんどくない?関係者に影響を聞いてみました

次回から東京ゲームショウ(TGS)の開催日が1日増えます。
TGSが1日増えるとどうなる?知らんのか。……俺も知らん。
なので、直接影響を受ける開発者やパブリッシャーに聞いてきました。

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東京ゲームショウが1日増えると、何が起きる?インディーはしんどくない?関係者に影響を聞いてみました
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画像は公式配信(https://www.youtube.com/watch?v=UqfTGHa-jjw)より

東京ゲームショウの開催期間が2026年から1日増え、合計5日間開催になることが発表されました。
今でも大混雑のゲームショウが1日増えて、ゲームを見やすくなって嬉しい。けど、参加している側……とくに、資本のないインディーは大変なのでは?

Game*Sparkでは、5日開催の影響について、TGS2025の現地で当事者に質問を投げかけました。
回答いただいたのは『Va-11 Hall-A』を擁する英国パブリッシャーYsbryd Gamesから、日本の個人開発者、さらにはインディー専門のサポート会社までさまざま。この決定をどう感じているのでしょうか。

room6 代表 木村征史氏

「1日増えるのは、純粋に来客が増えるんで、それは嬉しいですね。ただ、room6は社員全員でブースを作って回しているから、みたいなリアルな悩みはあります。

例えばホテルの宿泊費は今年ものすごい金額。ホテル代の上がり方が、えぐい。スタッフも全員が丈夫じゃないから休みも重要だし、経営者として現実的なスケジュールを作ると大変だと思います。ノベルティの準備も数が増えるだけでなく、かさばるものは保管も考えないといけない。20%実施時間が増えるけど、かかるコストは20%以上になりそうな気がしています。

大手は資本がありますけど、私たちの規模だとちょっと大変で、嬉しい反面ドキドキしちゃいますね。でも、基本的には嬉しいことなので頑張って対応していこうと思っています」

room6は、創業以来スマートフォンやニンテンドースイッチ、Steam向けのゲーム開発、移植、パブリッシュ事業をおこなっており、第24回文化庁メディア芸術祭の新人賞を受賞した『アンリアルライフ』をはじめとした、世界観に浸れるゲームを集めたレーベル「ヨカゼ」の運営もおこなっています。自社開発タイトル『ローグウィズデッド』も配信中。 

今回のTGS2025では「ドーナツをどこまで食べたら穴はなくなる?」などのこたえのない問いにこたえる新作思考実験アドベンチャー『ドーナツの穴』を展示していました。


Ysbryd games Founder Brian Kwek氏

「スクウェア・エニックスのような大企業は発表するものも、見せるものも多くあるので純粋に時間が増えることはとてもいいことだと思います。ただ、インディーゲームやデベロッパーはできることが多くないので、来てくれる人に提供するコンテンツ用意と、開発者の体力などの勝負が大変そうですね。いいところもあるし、悪いところもあると思います。

gamescomなど他のイベントが5日間開催なので、Ysbryd gamesとしては「他と同じ」なので驚きはないですね。5日間になったTGSのために、何か大きなニュースや大きなその情報っていうのをその時に合わせて持ってくる、というような対応をしていくことになると思います。ま、結構大変なんですけど。

TGSはすでにアジアでも特に重要なゲームイベントとして立ち位置を確立しているので、それによって重要度が上下することはないでしょう。引き続き重視して参加します」

『Va-11 Hall-A』や『恐怖の世界』などを送り出すインディーゲームパブリッシャー。TGSではサイコホラー2Dプラットフォーマー『Love Eternal』、学園オカルトものタクティカルRPG『Demonschool』を展示していました。

学園生活を送って友情を深めたり、恋愛しながらも悪魔を退治する『Demonschool』は、『女神転生』や『ペルソナ』の影響を受けつつも、ハードなタクティカル要素も楽しめるゲームで、開発ディレクターは日本語も話せるほど日本好き。「セガハードが続いていたら、出たであろう(ちょっとマイナーな空気の)ペルソナ」という隠しコンセプトで作られています。


Phoenixx ミュージックビジネス本部/マーケティング本部 本部長 野崎雄大氏

野崎氏は写真右。左はメンヘラリウム開発者のYUKI氏。

「全体としては、すごい良いことじゃないかと思ってます。人が増えることはインディーパブリッシャーとしても歓迎しますね。

TGSの入場者数はまだ30万人に届いていないと思いますが(※インタビュー時はまだ9月27日)、例えば欧州のイベントgamescomの今年の入場者数は約35万人くらいだったと思います。ただgamescomは5日間開催なので、TGSも5日開催になったら人数的にも並んで日本のゲームイベントが世界トップクラスになり、良い影響があると思います。

パブリッシャーとしては人手の用意やシフトとか、負担もあると思うんですけど、Phoenixxとしてはすでに5日開催のgamescomにも出展していますし、乗り切れるでしょう。楽しみです」

株式会社Phoenixxは、東京都武蔵野市の吉祥寺に拠点を置く日本のインディーゲームパブリッシャー。『陰キャラブコメ』、『NeverAwake』、『スゴイツヨイトウフ』ほか、幅広いラインナップを誇っています。また、インディーゲーム展示会「TOKYO INDIE GAMES SUMMIT」「OSAKA INDIE GAMES SUMMIT」も独自に運営しています。

TGS2025でも多くのゲームを展示していましたが、筆者は病んだ少女とプレイヤーの血をかけてチンチロを遊ぶ『メンヘラリウム』にかなりのインパクトを受けました。

「ねえ、チンチロで勝負しよ?ルールは簡単、きみの“血”をちょっとずつ賭けてもらうだけ。もし、わたしに勝てなければ死んじゃうね」


べすとまん氏(個人開発者)

べすとまん氏は顔出しをしていない個人のため、ブース写真で代替

「準備と併せて最低6日間連休とらないといけないということで、インディーゲームは1人でやってる方とか結構多いので、さすがに体力的に大変だろうなって思います。5日間展示の前に1日設営の日があって、設営のための準備があるから実質まる一週間休めないと参加できないですよね。

ただ、現在の4日間出展でも基本的に1週間まるまる休むことに近いので、いま出展している人で影響を受ける人は少ないかもしれないですね。私も兼業ですが、会社が休ませてくれるので問題ないです。

それよりも、5日間になって露出が増えることが嬉しいです。TGSに入ってからSteamのウィッシュリスト登録がとても増えていて。最初にストアをオープンしたとき以来の伸びで、1,500ぐらいポンと増えました。この期間が長くなるなら、結構ありがたいという人の方が多いと思います」

べすとまん氏は、ゲーム会社で正社員として働きつつもインディーゲームを制作する開発者。ゲーム開発を通じて知り合った仲間とともに臨機応変にチームを組んで『ナユタとほうき星の旅』、『わんおぺ寿司』など多彩なゲームを制作。TGSでは最新作『利用規約に同意したい』を展示。

プレイヤーは『ドキドキアクションゲーム』を遊ぶことが目的だが、利用規約に同意しないとゲームを遊べない。しかし、その利用規約に「同意する」ボタンを押すことが難しすぎて……規約同意ボタンを押すため、プレイヤーはあの手この手で頭をひねって(ときに理不尽に耐えて)同意しようとすることになります。


Indie Freaks LayerQ氏(CEO)

「歓迎か歓迎じゃないかで言うと、やはり自分たちが関わっているタイトルが露出する日数が増えることや、より多くの一般のお客さんが楽しめるチャンスが増えるのはすごいポジティブだなとは思います。一方で、純粋に準備する側としては「かなり大変だな」という印象です。

人員の準備もありますが、インディーエリアの準備期間は1日だと、ブースが5日分稼働する準備を1日で終えないといけない。特にインディーだとボランティアスタッフで賄っているところも多いと思いますが、平日はボランティアを集めるのが難しいので、小規模なチームほどほど影響を受けそうです。

そう考えると、インディーコーナーには出展社に椅子を置くようにしてあげてほしいです。椅子があるからって開発者が紹介に手を抜いたりすることはないと思うので、TGS運営さん、ぜひお願いします(笑)。開発チームの皆さんが疲弊しないような形を作っていただけたらなと思います」

Indie Freaksは、インディーゲームを紹介するゲームメディアとして知られていますが、イベントではインディーゲームの出展の手伝いもしています。TGS2025では羊の戦士が狼の軍勢に立ち向かう2Dアクション『OVIS LOOP』など4作品を展示サポート。

なかでも『PVKK: 惑星防衛砲指揮官』は、巨大な砲座コントローラーを組み立てて圧巻のブース設営を見せていました。その様子はGame*Sparkでも取材しているのでご覧ください。



ここまでロマンあふれるゲームだと、イベントに備えてSteamで購入して訓練するのもありかもしれませんね……。


パンドリ丼代表 / 『アニマロイドガール』 ディレクター・Mar氏 (國永昌也)

「5日間になっても “濃い体験” を生み出せるかどうか──それが大きな挑戦になると思っています。大手は1日増えてもコンテンツを詰め込むことができますが、小規模チームでは“同じ準備量のまま1日増えてしまうとしたら体験が薄まってしまう──”と危機感を抱いています。

TGSの『アニマロイドガール』展示では、いつも来てくださる方には今回だけの“何か”を持ち帰ってほしい、初めて見つけてくれた方には強く印象に残る作品だと思っていただきたい……と意識しました。

「時限出現式モニュメントでの記念撮影」「TGS新刊同人誌」「体験版ダウンロードステッカー」「ステッカーチューン」と、4つの体験を用意し、会場では密度感のある接触を、そして帰宅後には作品をじっくり楽しんでいただく狙いです。

ウィッシュリストなどの数値が気にならないわけではないのですが、『アニマロイドガール』では作品の魅力をより深く知っていただき、好きになってくれる方に “発見” していただくことを重視して、イベントに出展しています。それだけに、5日間に増えてしまうと大切な体験が薄まっちゃう。だからこそ、来年も出展できるなら、5日間になることで今年以上の濃い体験を生み出せる “何か” に挑戦することになります。……武者震いがしますね!」

パンドリ丼は、ゲーム業界で経験を積んできた國永氏とザクロスケ氏の2人を中心としたインディー創作サークル。 ケモミミ×香港×サイバーパンクな世界観を舞台に、ヒトからケモノへと変わりゆく少女の、青春を見守る物語が描かれる、マルチエンディングのケモノ化少女育成ADV『アニマロイドガール』を開発中。

TGSでは試遊台を出さずに、時間限定で少女のモニュメントを展示するイベントを実施し、モニュメントに出会うと体験版が家で遊べるステッカーがもらえました。

これは「ノベルゲームは人がざわついているところより、じっくり遊べる家で楽しんでほしい。しかし、来た人には何か楽しい体験を持ち帰ってもらいたい」と考え抜いた結論だそうです。結果として、2000枚用意したステッカーなどの配布物が足りなくなるほど好評だったとか。


総じてみると、「手間は増えるが、イベント出展側、ゲームには好影響がある」というのが、今回お話を伺った東京ゲームショウ出展者からの反応と言えそうです。

また、会期が5日に延長されることで、各社注目を集めるためにより多くの発表、情報を持ち寄ることになり、日本にいる一般ゲーマーにも嬉しいニュースがより多く飛び込んでくるイベントになりそうな気配ですね。

東京ゲームショウ2026は、2026年9月17日(木)~21日(月・祝)に開催予定です。


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《寺島壽久》

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