家畜に神はいないッ!身分の格差を描く『FFT』の名台詞が忘れられない─「恨むなら自分か神様にしてくれ」「オレは持たざる者なんだ」など、令和になっても色褪せずに

『ファイナルファンタジータクティクス - イヴァリース クロニクルズ』の名台詞を通して、物語が持つ魅力の一端をお届けします。

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家畜に神はいないッ!身分の格差を描く『FFT』の名台詞が忘れられない─「恨むなら自分か神様にしてくれ」「オレは持たざる者なんだ」など、令和になっても色褪せずに
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■「家畜に……」─人を人と思わぬ暴言は、歪んだ格差の象徴

身分差に敏感なアルガスの考え方が如実になるのは、「骸旅団」に身を置く剣士・ミルウーダと対峙した時です。ミルウーダは「私たちは貴族の家畜じゃない!」「貴方たちと同じ人間よ!」と、ラムザたちに向かって叫びます。

また、「生まれた家が違うだけじゃない!」「貴方たちはひもじい思いをしたことがある? 何ヶ月も豆のスープで暮らしたことがある?」と問い詰めます。

今広がっている貧困の理由は、貴族たちが起こした戦争が大きな要因でした。長く続いた戦争によって国が疲弊し、そのしわ寄せを貴族が平民に押し付けていたのです。

戦争を起こした責任は貴族にあるのに、飢えるのは平民。この理不尽に怒りを露わとし、自分たちが戦う理由は「生きる権利のすべてを奪うからだッ!」とミルウーダは声を高らかに上げます。

しかしアルガスは一切ひるむ様子を見せず、平民は貴族に尽くさねばならないと断言。「生まれた瞬間から貴様らは、オレたち貴族の家畜なんだッ!」とねじ伏せます。

少し前に、ダイスダーグ伯からまともに取り合ってもらえなかったアルガスが、今はミルウーダに対してまったく容赦のない暴言を突きつけます。アルガスの発言は、格差社会の歪みとも言えますが、「貴族でないと何も得られない」と強く自覚しているせいもあるのでしょう。

もちろん、彼の勝手な理屈で「家畜」呼ばわりされては、ミルウーダとしては黙っていられません。そんな理不尽な物言いに「誰が決めたッ!」と問いただすと、アルガスは「天の意志だ!!」と叩きつけます。

この世界は宗教、引いては神への信仰も厚いため、ミルウーダも神そのものは否定しません。だからこそ「神がそのようなことをと宣うものか。神の前では何人たりとも平等のはず!」と、信仰心のある者なら至極自然な道理を口にします。

ここで放ったアルガスの一言が、特に有名な台詞のひとつ「家畜に神はいないッ!」です。神は万人に対して平等。その節理の前では身分差に正当性はありませんが、平民は人ではなく家畜に過ぎないとすれば、“万人に対して平等”とは矛盾しません。

無論、矛盾しないだけで、倫理観の欠片もないため、アルガスの意見に完全同意するプレイヤーはほとんどいないでしょう。

一方で、身分の格差に縛られる社会において、これほど理不尽で、人々の間に根付いている捻じれを的確に表現した言葉はそうありません。その意味において、本作でも指折りの“名台詞”と言えます。

■「オレは……」─親友同士の間にすら横たわる格差

詳細はこちらも省きますが、ダイスダーグ伯が骸旅団に襲われ、その経緯の中でディリータの妹・ティータが攫われてしまいます。ダイスダーグ伯は、絶対にティータを助けると約束しますが、アルガスはその約束が守られるはずないと言い放ちます。

「オレだったら、平民の娘ごときを助けるなんて“絶対”にしない」「オレたち貴族とこいつ(※ディリータ)は一緒に暮らしてはいけないんだ」と煽るアルガスに、ディリータはもちろんラムザも怒りを露わとします。

しかし、アルガスの言葉を完全には否定できず、「どんなに頑張っても、くつがえせないものがあるんだ」と、ラムザにだけこぼすディリータ。そんなことない、努力すれば……とラムザが励まそうとしますが、「努力すれば将軍になれるのか?」と切り返すディリータの言葉に、ラムザは沈黙するほかありません。

「オレは、持たざる者なんだ」。ラムザとディリータは肩を並べる親友同士ですが、悲しいことにこのふたりの間にも身分の差はあります。

そして、ディリータとラムザは、バルバネスに教わった草笛を鳴らします。その音色だけは、なんの格差もありません。



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《臥待 弦》

楽する為に努力する雑食系ライター 臥待 弦

世間のブームとズレた時間差でファミコンにハマり、主だった家庭用ゲーム機を遊び続けてきたフリーライター。ゲームブックやTRPGなどの沼にもどっぷり浸かった。ゲームのシナリオや漫画原作などの文字書き仕事を経て、今はゲーム記事の執筆に邁進中。「隠れた名作を、隠れていない名作に」が、ゲームライターとしての目標。隙あらば、あまり知られていない作品にスポットを当てたがる。仕事は幅広く募集中。

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