もう“誘拐されてばかり”とは言わせない!『ゼルダ無双 封印戦記』のゼルダ姫は、勇猛果敢な「万軍の将」だ!!

『ゼルダ無双 封印戦記』のゼルダ姫から、「時代に応じたキャラクターの再解釈」について考察します。

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もう“誘拐されてばかり”とは言わせない!『ゼルダ無双 封印戦記』のゼルダ姫は、勇猛果敢な「万軍の将」だ!!
もう“誘拐されてばかり”とは言わせない!『ゼルダ無双 封印戦記』のゼルダ姫は、勇猛果敢な「万軍の将」だ!! 全 9 枚 拡大写真

「時代に応じたキャラクターの再解釈」は、あらゆる作品に対してしばしば施されます。

11月6日に発売された『ゼルダ無双 封印戦記』も、従来のキャラクターの印象を覆すような設定が組み込まれています。この作品のパッケージからして、それが如実に表れています。何しろ、今作の主人公はゼルダ!

ゼルダが主人公の『ゼルダシリーズ』は、今作が初めて……というわけではありません。2024年9月発売の『ゼルダの伝説 知恵のかりもの』が、シリーズ初のゼルダ主役作。しかし、『知恵のかりもの』はどちらかといえば道具を上手く駆使してステージを攻略するゲーム性でした。一方、『封印戦記』は無双シリーズです。ゼルダが武器を取り、戦場で大いに暴れまくります。

「雄々しく戦うゼルダ」の姿は、まさに現代の価値観を反映していると言ってもいいでしょう。

◆剣を取って戦う王女

1984年生まれの筆者が初めて触れた『ゼルダの伝説』シリーズは、1991年11月発売の『神々のトライフォース』でした。

この作品の主人公は、ゲーム上ではデフォルトネームを持たない少年(プレイヤーが名前を決める仕組みです)。ただし公式では「リンク」としているため、以下この主人公はリンクと表記します。このリンクがハイラル王国の王女ゼルダの声を聴き、城に忍び込んで地下牢に幽閉されていたゼルダを救出する……というのが最序盤のシナリオです。

そう、この作品の主人公はリンク。ゼルダはプレイヤーキャラではなく、作中で2回も誘拐されてしまう役回りです。

『ゼルダの伝説』シリーズは基本的に、異なる時代・異なる世界観で「勇者リンク」と「囚われの王女ゼルダ」を軸とした物語が展開されます。とにかく、ゼルダはほぼ毎回のように(例外はあるものの)受難に遭います。誘拐されたり幽閉されたり石にされたり。それをリンクが救出し、同時に悪が成敗されてハッピーエンドーーというのがシリーズの定番でした。

しかし、今回の『ゼルダ無双 封印戦記』は全く違います。

リンクとはぐれたゼルダが目を覚ますと、そこは過去の時代。ゼルダの時代に語り継がれている古の大戦「封印戦争」に、ゼルダ自身が参戦するというシナリオです。その中でゼルダは光の力、そして光の剣を手に取って敵の大軍と戦います。

そこにいるのは、毎回のように誘拐されるか弱い少女ではなく、ハイラル軍の兵士を率いて戦う武人です。

◆戦う女性たち

「助けられポジション」だったはずのキャラが、次の作品から一転して強キャラになっている。そうしたことは、『スーパーマリオ』シリーズでも起きています。

2024年3月に発売された『プリンセスピーチ Showtime!』の主人公は、タイトルの通りピーチ姫。この作品にはいつもの配管工はおらず、代わりにピーチ姫が場面毎に様々な衣装に着替えて激しく戦います。「悪い奴に誘拐されるピーチ姫」ではなく、「武器を取って堂々と戦うピーチ姫」が画面狭しと躍動します。


また、「バトルアクションものの女性主人公」の先駆けといえば、『トゥームレイダー』シリーズのララ・クロフトが挙げられます。この作品の1作目が出る以前、「武器を携行した遺跡探検」は男性の役割でした。ジャングルの王者ターザンと彼の恋人ジェーンのように、身体能力をフル活用して未開の地を開拓するのは男性の仕事、そんな男性に庇護される美女……という構図が長い間定着していました。『トゥームレイダー』は、それを覆したのです。


ララには男性のような怪力はありません。しかし、それを補って余りある身体の柔軟さを持っています。さらに、重力と体幹の強さを利用したアクションを繰り広げ、結果として「男性冒険家にはできない動き」を実現させました。

『封印戦記』のゼルダも、そうした立ち位置の主人公と見ることができます。

◆「軍人」としての大活躍

この作品の中でゼルダが繰り広げるバトルアクションは、「剣戟」と表現するにはやや控えめな印象です。新体操のリボンのような動きもありつつ、必要に応じて独楽のように高速で回転し、敵を跳ね飛ばしていきます。

重量感を伴う力強さはあまりないものの、曲線的な攻撃アクションを使って強大な敵を倒していく姿はまさに「万軍の将」。そうです、ゼルダは強いんです! いつものようにさらわれていた少女はどこにもいません。

『封印戦記』は、ガノンドロフに占領された領土を少しずつ解放していくという流れ。ただし、時折ガノンドロフの軍勢が奪還した領土に再侵攻することもあります。その場合は計画を変更し、迎撃しないといけません。これは「戦争」であることが嫌でも思い出されるシステムになっています。

この『封印戦記』を転機に、ゼルダシリーズ全体の方向性が大きく変わるーーということは十分起こり得るのではないでしょうか。

それは「ゼルダがリンクの役割を奪う」というよりは、「ゼルダがリンクの戦友になる」という表現が最適かもしれません。

『封印戦記』のシナリオ自体は、『ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム』のそれを補完するものではありますが、さらに広域的な視点で考えてみると「強いゼルダ」がその歴史上に登場したということに他なりません。この既成事実は、今後のゼルダシリーズを新しく作り替えてしまう要素になっていくのではないでしょうか。


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《澤田 真一》

ゲーム×社会情勢研究家です。 澤田 真一

「ゲームから見る現代」をテーマに記事を執筆します。

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