2026年2月16日に設立30周年を迎えたサイバーコネクトツーは、新作『.hack//Z.E.R.O.』を電撃発表しました。本作は、販売をバンダイナムコエンターテインメント(以下バンダイナムコ)、開発をサイバーコネクトツーが手がけてきたRPG『.hack』シリーズの最新作となるものですが、特別な許諾を得て、『.hack//Z.E.R.O.』では販売と開発をサイバーコネクトツーが手がけるのだといいます。
また、同日には「CyberConnect2 FILM」という映像事業への進出も明かされました。こちらの第1弾タイトルとなるのは『チェイサーゲームW 水魚の交わり』で、本作ではサイバーコネクトツーが製作幹事を務めます。また、これとは別に複数の映像企画が進行しているとのことからもその本気度が伺えます。

サイバーコネクトツーというと、バンダイナムコエンターテインメントから発売されている『ナルティメットストーム』シリーズや、『ドラゴンボールZ KAKAROT』などのキャラクターゲームの印象が強い方も多いでしょう。しかし、もうひとつの“側面”も実に魅力的です。
自社パブリッシング作品として発売された『戦場のフーガ』シリーズで垣間見せた、ある意味“遠慮のないドラマ”は強烈にプレイヤーの感情を揺さぶるものでした。「自社パブリッシングだからこそできる破壊力を持つ作品」も見てしまった今、『.hack//Z.E.R.O.』がどうなるか気になって仕方がありません。
本記事では、30周年というタイミングで大きな発表を行ったサイバーコネクトツーの代表取締役である松山洋氏へのインタビューをお届けします。
『.hack//Z.E.R.O.』にこめる覚悟と情熱
――サイバーコネクトツー30周年、おめでとうございます。『.hack』シリーズ最新作、それもサイバーコネクトツーが自社パブで進められるのですね。どういった経緯があったのでしょう。
松山:『.hack』シリーズは会社の軸となったタイトルのひとつですし、シリーズを続けてファンの方も多くいらっしゃいます。わたしたちとしても思い入れは強くて、新作をいつかやりたいとずっと考えてきましたが、プロジェクトが立ち上がりそうになっては消え、立ち上がりそうになっては消えということを繰り返してきました。
その繰り返しを経て、サイバーコネクトツーが作り、販売もやるのはどうだろうと考えました。もちろんそんな考えを簡単に受け入れていただけるとは思っていませんから、新たに交渉を始めたんです。
――それが30周年の節目で発表できることになったのですね。
松山:会社が30周年を迎えるということはわかっていたので「30周年記念プロジェクトとして『.hack』を我々でやらせてください」という言葉から改めて交渉を始めました。とはいっても、意気込みだけで大企業が動くわけもありません。相談を重ね、バンダイナムコさんと一緒にやってきたタイトルを評価してもらったこともあって……とわたしは思っていますが、サイバーコネクトツーで開発・販売を手がける許諾をいただきました。普通じゃありえないことをやってもらって実現したプロジェクトなんですよ。実現が決まったときは、気が引き締まりましたね。
――新しい『.hack』である『.hack//Z.E.R.O.』はどのようなタイトルになるのでしょう。
松山:『.hack//Z.E.R.O.』の「ゼロ」は、まったくのゼロから完全新作として作り出していくという意味も込めています。なので、シリーズを知らない方であっても楽しめるものを目指していますし、過去作を知らないから楽しめないというようなことは一切ありません。「はじめまして、『.hack』です」というような気持ちで制作を進めています。それでいて、これまでのファンの方々が『.hack』の良いところってこういうところだよなと感じてもらえるような部分もちゃんとあります。タイトルが『.hack』であることにはもちろん意味があります。
――『.hack』シリーズというと、リアルとオンラインの両側を描いていく構造が印象的です。本作でもこの構造は引き継がれるのでしょうか。
松山:本作でもリアルともうひとつの世界を描きますね。ただ、過去の『.hack』シリーズが発売されていた頃から時代も変わり、リアルとオンラインで起きていることも大きく変化しました。なので、構造は『.hack』らしさを感じられる部分になると思いますが、描かれる内容、驚いてもらえる要素はまた異なるものになります。時代にあわせたというより、時代の先を見るようなものを作ろうとしています。
――『.hack』シリーズというと「先見の明」的な評価をされることも多いですよね。当時遊んでいなかった人が、最近になってプレイして「早すぎた」と評価することも多いと感じます。当時、オンラインゲームを軸にした物語を、オフラインゲームでやろうと考えたのはどのような経緯があるのでしょうか。
松山:『.hack』の1作目が発売された頃というのは、オンラインゲームが家庭用ゲーム機でも遊べるということが広がり始めた時期なんです。当然、「家庭用もオンラインゲームの時代が来る」というようなムードも出てきたんですが、『.hack』はそこであえて「オンラインゲームごっこ」的な遊びを軸に作ることにしました。
逆張りというわけではなくて、オンラインゲームという遊びは確かに面白い。魅力もあるし、将来的に主流になる可能性もあるだろうとも思いました。でも、子供たちがオンラインゲームを遊ぶために、月額使用料みたいなものを払って、どっぷりオンラインゲームを遊ぶ時代がすぐ来るとも思えなかったんですよ。そこで子供も大人も幅広く楽しめるテーマとして、「オンラインゲーム」を舞台にしたオフラインRPGを企画しました、
――自社パブリッシングになったことで「自由にやれる」ことも増えたのでしょうか。
松山:これまでの『.hack』が自由にやれてなかったわけではないんです。それに、ウチに今ゲームを発注してくれるパブリッシャーさんも、信頼していただいているからか、自由にやらせてもらっている部分がたくさんあります。でも、ゲームって大きなプロジェクトなので、会社の都合みたいなものや、予算や納期などがあって、やりたいこと全部できるかというとそうではないですよね。
もちろん自分たちでやる場合も永遠には作れないですけど、我々の納得のいくところまではやりきれるのが大きな違いです。つまり、自社パブリッシングになったことで、「純度100%のサイバーコネクトツーらしさのあるゲームになります」。期待していてください。
――バンダイナムコさんの『ナルティメットストーム』シリーズ、『ドラゴンボールZ KAKAROT』、アニプレックスさんの『鬼滅の刃 ヒノカミ血風譚』シリーズでプレイヤーを引きつける表現力の部分も期待して良いということでしょうか。
松山:もちろんです。本作にはそうした大型タイトルを手がけたスタッフも参加しますし、自社パブリッシングタイトルの『戦場のフーガ』の経験も活かされます。サイバーコネクトツーのすべてを注ぎ込むくらいの気持ちでいます。物語、世界観、キャラクター、表現、どれも皆さんを驚かせるようなものになるはずです。

なぜ映像事業に参入?「CyberConnect2 FILM」の目指すものとは

――「CyberConnect2 FILM」の発表にも驚きました。サイバーコネクトツー、松山さん、とうとう映画を作ってしまうのか……と(笑)松山さん、映画お好きですものね。
松山:映画は大好きですね。ゲーム会社が映画をというところで意外性はあると思うんですが、私自身は映画と漫画を見続けている人なので、やりたいことを軸にした事業を進めるということです。ちなみに、「CyberConnect2 FILM」における私以外のサイバーコネクトツーの開発スタッフの稼働はほぼゼロです。ほぼゼロというのは、わたしとアシスタントプロデューサーが携わっているからですね。

――今、相当お忙しいのではないでしょうか。充実しているとも言い換えられそうですが(笑)
松山:これも会社とスタッフが育ってきたからこそできることですね。ゲームについては、私はすべてのプロジェクトをチェックするという立場です。大きな判断、立ち上がりの小さい判断はもちろん密接に携わっています。
今現在は、スタッフの成長に伴い、ある程度任せられる部分も増えてきました。なので、ゲームで稼いだお金で漫画を作り、その漫画をドラマ化し、ドラマを映画化するという事業を行う時間もできたんですよ。社長の道楽ではなくて、ちゃんとしたプロジェクトなので、携わっている人全員が幸せになるような未来に向かって走っています。
――映画を自分で作ろうと思ったきっかけについてお聞かせください。
松山:それが「携わっている人全員が幸せになるような未来」を目指したいからなんですよ。この5年くらいで、漫画やドラマをやり、出版やTVの世界と接点ができました。皆さんも聞いたことがあるフレーズだと思うんですが「好きでやっているから仕方がない」みたいなことを言う人もいるんですよ。一生懸命やっているのに浮かばれない人たちがたくさんいます。「そんな中全員が幸せになるような新しい未来」が見られそうだと思って集まってくれたメンバーなんです。映画をつくることでこういったところも色々と変えていきたいと思っています。
――異業種への参入で、ゲーム業界の経験は活きているのでしょうか。
松山:ゲーム業界の経験はとてつもなく活きていますよ。ゲーム業界って、歴史はまだ浅いんですけど、“ちゃんと”しているんですよ。時には納得しかねるようなこともありますけど、それでも多くの人がちゃんとしようと思っているし、ルールの整備が進んでいます。
――今回映画化されるのはドラマ版が好評だった「チェイサーゲームW」ですが、この作品は女性同士の恋愛を描いた作品ですよね。エンタメのジャンル分けとしては、ガールズラブ、百合もの的な作品になると思うのですが、サイバーコネクトツー、松山さんの引き出しからこのジャンルが飛び出してきたのは意外でした。
松山:サイバーコネクトツーというと熱血、わたしというと勢い、元気みたいなイメージが先行していますが、摂取しているエンタメややりたいことはそれだけではもちろんないんです。意外とクレバーにやっています。そのうえでお話しすると、『チェイサーゲームW』をガールズラブ的な作品にしたのは、「求められていること」を考えたからです。
エンタメを仕事にする場合って、「売れないと地獄」なんですよ。売れないと二度とやらせてもらえませんし、求められていないものを作ってもみんな幸せになんてなりません。漫画の『チェイサーゲーム』はゲーム会社を舞台にしたドラマを描いたお仕事もので、ゲーマーの方やゲーム業界の関係者の方に楽しんでもらえました。
でも、実写ドラマをやるとなったら、もう一ひねりして多くの人に届けるエンタメにしなければならないと考えました。そこで企画として出てきたのが、「誰も見たことがないガールズラブ」でした。
――「CyberConnect2 FILM」のスタンスを聞いて一層楽しみになってきました。これからの展開にも期待しております。ちなみに、『.hack//Z.E.R.O.』は漫画、ドラマ、映画といったメディアミックス展開の予定は。
松山:ジャンルは明かせませんが、メディアミックスはもちろん考えています。情報はいろいろ出していきますので、楽しみにしていてください。
――サイバーコネクトツー30周年を迎えて、次なる10年、20年はいかがでしょうか。
松山:やることは変わらないですよ。全力で面白いものを作ろうと進むだけです。たとえばPlayStation 2のときでも、あのときなりの全力を尽くしてゲームを作ってきました。あとから見直すと“当時の技術”という感じなんですけど、作っているときは先端を走ろうと必死に作ったものばかりです。ずっとアップデートしつづけていく会社であり続けますよ。2年後に出る作品は2年後にみんなを驚かせますし、4年後に出る作品も同じでみんなを驚かせます。アップデートというのは、会社の人数を今300人なのが500人、1000人…とどんどん増やしていくということではないです。会社を大きくすることが目的ではなく、「やりたい物作りに最適なサイズとメンバー」を常に意識して組織を進化させていくんです。
――松山社長のエネルギッシュな受け答えに、元気をもらいました(笑)まだまだ、面白いものを作り続けてください。
松山:(胸を指さしながら)ここに生涯現役と書いていますからね。生涯はあと150年くらい生きるつもりなので、サイバーコネクトツーの未来はもちろん、松山洋ショーもみんなで楽しんでください。おもしろい未来を見せますから。
後継者問題……とかよく聞かれるんですが、「そんなの知ったことか」と(笑)。でも、何度も言いますが、会社のメンバーも育っていますよ。それに、まだまだ表に出ていないメンバーもたくさんいますから。そんなサイバーコネクトツーを感じられるサイバーコネクトツー展が全国47都道府県で開催されます。あなたが住んでいる街にもサイバーコネクトツーがやってきますので、是非見に来ていただければと思います。また、全国8都市ではファンミーティングも開催いたします。こちらも、よろしくお願いします!
――ありがとうございました。


サイバーコネクトツー社長の松山洋氏、というとゲームファン的には「熱血な人」、「面白い人」というイメージがあるかもしれませんが、筆者としては類い希なる実行力の人というイメージを持っています。とにかくやり遂げる力がすごい。それも、中途半端では終わらないのです。
「キャラゲー」と揶揄されることもあった「キャラクターゲーム」のイメージを塗り替えるほどリッチな表現力とボリュームを盛り込んだ作品をいくつも作りあげてきたサイバーコネクトツーは、ポジティブではない評価を受けた作品もありますが、発売後に逃げるようなことはせず、真摯にアップデートを続けた作品のことも知っています。
自社パブリッシング作品である『戦場のフーガ』も3部作で完結へと導き、ゲーム以外の分野でもnoteを精力的に更新し続けています。時には議論を呼ぶ内容になりますが、それも大きな見所です。漫画「チェイサーゲーム」の連載を実現させ、そこからメディアミックスを行い、映画までたどり着いたことにも驚かされました。こうした成果は偶然などではなく、松山氏やサイバーコネクトツーのすさまじいエネルギーがあってこそたどり着いたものだといえるでしょう。
今回のインタビューで松山氏に触れた方は、「自社パブって無謀なのでは」とか、「ゲーム会社で映画事業ってうまくいくの」と思う方がいるかもしれません。しかし、松山氏とサイバーコネクトツーの実行力をひしひしと感じている筆者としては、「そのすさまじいエネルギーで、きっとなんとかしてしまうのだろう」という未来を想像しています。
催事名 | サイバーコネクトツー展 -「好き」と「情熱」を込めたエンターテインメント - |
会期 | 2026年6月より47都道府県にて順次開催 |
入場料 | 無料 |
主催 | 株式会社サイバーコネクトツー |
共催 | 株式会社ゲート |



