
2026年6月14日に「ホロライブ歌うま大賞」を実施し、海外ホロライブタレントの歌唱の魅力を改めて伝えるきっかけを作った兎田ぺこらさん。最大視聴者数12万人以上を記録した本配信では、“歌うまタレント”だけでなく、日本語がうまい海外タレントも多く参加し、懐かしい楽曲や自信の楽曲を披露して、カラオケライブのような贅沢な時間を視聴者にお届けしました。
その告知配信として6月13日に実施したライブストリームの中でガンプラの話題に触れたぺこらさんは、最近のガンプラ事情として、待望だった「MG 1/100 ゼータガンダム Ver.Ka」を完成させたこと、現在は「RG 1/144 RX-78-2 ガンダム Ver.2.0」を制作中であることを視聴者に伝えます。そして改めて疑問に思ったという「謎」を口にしました。
「これ(多色成形)どうやってんだろうって、ほんとに不思議に思うんよなあ……」
確かにプラスチック製の組み立てキットを手にした人なら一度は気になるはず。ランナーと呼ばれる、パーツを切り離す前の骨組みのような成形品は、たとえば「RX-78-2 ガンダム」系のガンプラなら赤・青・黄・クリアパーツなどが一体で成形されています。
通常、組み立てキットの生産では、一色の素材を金型に流し込んで成形するはず。多色成形を実現したのは、現在、ガンプラを生産するバンダイホビーセンターのみで、ほかでは見かけません。
しかもその技術は多色成形以外にも変わった活用のしかたをしており、モデラーに「変態技術」と呼ばれるような、目を丸くする商品も過去に生産していました。
そこで本稿ではガンプラの多色成形の謎に迫るとともに、それだけでとどまらないバンダイホビーセンターの“凄い技術”を振り返りたいと思います。

◆人気ヒロインが切り拓いた「変態」への道
まず基本となる射出成形の工程は以下の通りとなります。
1.射出成形機に金型をセットする。
2.ペレットと呼ばれる、小さな円筒形のプラスチック素材を溶かす。
3.溶かしたペレットを金型に流し込む。
4.圧力を加えてランナーを成形する。
5.ランナーを金型から取り出して完成。

ペレットとは各色のプラスチック素材で、白いランナーを成形するなら白いペレットを、赤いランナーを成形するなら赤いペレットを使用します。なお単色の射出成形機なら、バンダイホビーセンターでは20秒で1枚が完成するとのこと。一般的な射出成形機は単色の素材を使用しますが、バンダイホビーセンターでは独自開発した技術で最高4色まで使える特殊な射出成形機を使用するため、自分でペイントしなくても、組んだだけでほぼ設定どおりのカラーリングのキットが組み上がるというわけです。
なお金型の精度が高く細かなパーツの組み合わせが可能なガンプラですが、それができない食玩ブランド「SMP [SHOKUGAN MODELING PROJECT]」などでは彩色済みパーツで対応することもあります。
実はその多色成形機ですが、現在、ガンプラのフラッグシップストア「ガンダムベース」の限定品としてすでに組み立てキット化されており、実物そのままのフォルムを1/60スケールで楽しむことができます。もちろん金型のようすも分かりますし、ランナーのモールドまでしっかり再現されていて、ガンプラ好きなら一度は組んでみたいところです。




企業秘密であるため、射出成形機の中でどのような処理がされているかは分からないものの、多色成形機には3つのユニットが増設されており、そこから色とりどりのプラスチック素材が流し込まれることが想像できます。


また多色成形のランナーをよく見てみると、カラーとカラーの接合部分が平坦な形状になっていたり、色の境界線が円形になっていたりと共通点が見られます。そこから察するに、色が混ざらないような「仕切り」が内部で動作していることも推測できます。

また複数の素材を使用するそのほかの技術として、あらかじめパーツを組んだ状態のランナーも生産できるようになりました。RG(リアルグレード)のブランドで使用されている「アドバンスドMSジョイント」と呼ばれる機構です。
RGはHG(ハイグレード)と同じ1/144スケールながら、「よりリアルなMSを作る」をコンセプトにしたブランド。そのため変形機構などを盛り込み、本来ならMG(マスターグレード/1/100スケール)でなければ実現が難しいようなギミックも再現した、バンダイホビーセンターの技術の粋を集めたようなブランドとなっています。
たとえば「RG 1/144 ゼータガンダム」は組むのが難しいような細かなパーツを「アドバンスドMSジョイント」にて立体化。指が可動するハンドパーツなどを、あらかじめ組んだ状態でランナーにしました。
複雑な形状のパーツをどのように成形しているかは不明ではあるものの、ランナーの素材を確認するとABS樹脂とポリプロピレンが併記されているので、その2つの素材を順番に金型に流し込んでいることが想像できます。それをランナーから切り離し、ほぐすように正位置に戻すことで完成形に持っていくようなイメージです。



またモデラーに大きな衝撃を与え、在庫が一瞬にしてなくなった「Figure-riseLABO」シリーズも忘れられません。
「Figure-riseLABO」とはバンダイスピリッツの研究という名目でわずかながら続いたシリーズで、おもに人物キャラクターの表現を追求するものでした。2018年にリリースされたシリーズ第1弾「ホシノ・フミナ」は、スケールフィギュアのクオリティを組み立て式キットで実現するという斬新な試みで、肌の赤味を成形で表現するというとんでもないものでした。



スケールフィギュアは本来、肌の赤味などはすべて彩色で表現しています。しかし本キットでは、まずピンク色で成形してから、まるでレイヤーを重ねるように肌色のプラスチック非材で覆うという驚きの技術を実現。肌色の下から“うっすら”ピンク色が覗くという、「組み立てるスケールフィギュア」を開発したのでした。
もちろん2色だけではなく、実際はもっと複雑な工程を挟んでいるため、おそらくコストはとんでもないことに。しかし消費者目線では、スケールモデルと同等のクオリティのフィギュアを安価で手に入れられるという贅沢な企画となりました。
なお企画のきっかけは成形ミスがヒントになったとのこと。そこからレイヤーのように素材を重ねることで何かおもしろい表現ができるのでは?と考えたそうです。

また「Figure-riseBust」という人物キャラクターのバストモデルのシリーズでは、やはりホシノ・フミナでレイヤードインジェクションを採用。「Figure-riseLABO」と同じく、多層構造の成形をすることによって、瞳の中の色分けを完全に表現するという驚きのパーツを開発しました。
現在の美少女系組み立てキットといえば、複雑な瞳はデカールやタンポ印刷で表現されることが多いのですが、まさか成形色でそれを実現してしまうとは!
※タンポ印刷とは、フィギュア生産で用いられる工法で、複雑なペイント部分をハンコ状の印刷で処理するものです。
ホシノ・フミナといえばガンプラアニメ「ガンダムビルドファイターズトライ」の人気ヒロイン。ちょうどバンダイスピリッツが美少女カテゴリに本腰を入れた時期に放送されていたこともあり、フミナを中心にさまざまなチャレンジがおこなわれました。結果、それらのノウハウをフィードバックする形で進化したのが、ここ数年で注目度が上がった「30MS」などの美少女カテゴリですから、継続的にその技術を使うかどうかは別として、フミナが新技術の入り口となったのは確かです。
もちろん特殊な成形技術だけではなく、モデラーが納得する造形力を磨いた歴史でもあり、フミナの歴代組み立てキットを並べると、バンダイホビーセンターの美少女キットの歴史が見えてきて興味深いです。

組み立て式のプラキットといえば、本来はパーツの合いを確認しつつ、ヤスリがけをして見栄えを整えていくものです。しかし80年代ガンプラブームで一気に定着したガンプラは、障壁になりやすい「接着剤の使用」と「彩色の手間」をショートカットするため、さまざまな技術開発がおこなわれました。
その結果として、接着剤不要の「スナップフィットモデル」や、成型色の段階で色がついた「色プラ」が誕生し、現在に至ることに。まさにガンプラ45周年の歩みは、子供たちの笑顔のために歩んだ歴史でもありました。
このように、多色成形だけでなく、現在も進化を続けるバンダイホビーセンターの組み立てキットの世界。「機動戦士ガンダム」のみならずさまざまなキャラクターが商品化されていますから、それらを含め、今後どのような驚きを魅せてくれるのか楽しみです。



