ゲームやアニメの舞台、いわゆる「聖地」を巡るというのはファンとしての楽しみ方のひとつではないでしょうか。例えば実在する駅を見たり、登場人物が食べた料理を体験したりと、観光や食事でも聖地ならではの魅力や発見を感じられることがあるものです。
ネオスが2024年にリリースした『クレヨンしんちゃん「炭の町のシロ」』は、父・ひろしの生まれ故郷である秋田県を題材にした作品です。プロデューサーの長嶋朗氏は、地元の皆さんが楽しめる要素を盛り込んだ“秋田を舞台にしたゲームの代表作”としたいという思いで製作したことを明らかにしています。
また、2026年7月31日から全国で劇場公開中の映画最新作「映画クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ~ション」も秋田県が舞台。秋田県は、まさしく「クレヨンしんちゃん」ファンには見逃せない聖地とも言えるのではないでしょうか。
そこで、今回は『クレヨンしんちゃん「炭の町のシロ」(以下、炭の町のシロ)』の中で描かれる秋田県の魅力を、実際の旅を絡めて発信していきます!


・まるで劇場版のようなゲーム
『炭の町のシロ』の舞台となるのは、秋田県にある架空の「オオマガラナイ村」。秋田へ出張となったひろしが、一家で実家近くにある村の古民家を借りて住み、のどかな田園風景で田舎暮らしをすることになります。
プレイヤーは、しんのすけを操作しながら、虫を捕まえたり、魚を釣ったり、村の子供や住人たちと交流したりと、のんびりとした生活が楽しめます。しかし、ある日すすだらけで帰ってきたシロに案内され、不思議な電車に乗ることで、見たこともない風景が広がる「炭の町」へと迷い込んでしまいます。





ゲーム内では「村」と「炭の町」を移動しながら、人々の悩みを解決したり、事件を解決するために奔走していきます。炭の町では、不思議な少女や発明家のお姉さん、野望を抱く人物とも出会います。2つの世界でクエストをクリアしていくうちに、やがて大きな物語へと繋がっていくストーリーは必見です。
「秋田の村」という“日常”と「炭の町」という“非日常”の世界、野望を抱く人物とユニークなキャラクターたち、そして事件解決に奔走することになるしんのすけと、このゲームはまるで劇場版を思わせるフォーマットの作品です。当然重要な場面はフルボイスですし、演出も凝っていて、劇場版が好きな人には絶対にオススメできる内容です!




もちろんゲームとしても、釣りや虫取りなどのコレクション要素が充実しています。さらに、炭の町でも料理開発やトロッコレースといったアクティビティが用意されています。操作性も抜群で、お馴染みの「ケツだけ星人」状態になれば高速移動できるのが楽しい!細かな部分のこだわりも多く、ファンならニヤリとする要素もたっぷり入っています。




・いざ秋田へ!野原一家が食べたものを探そう
さて、いよいよ『炭の町のシロ』での聖地巡礼の始まりです。まず、野原ひろしの出身地は秋田県大仙市にある「大曲」とされており、JR大曲駅にはフォトスポットも設置されています。ゲームの舞台である「オオマガラナイ村」も、明らかに大曲をパロディしたネーミングですね。
本作では、野原一家の団欒の象徴として食事シーンがあるのですが、そこには「きりたんぽ」「いぶりがっこ」「横手焼きそば」など、色々な秋田名物が並んでいます。今回はこの料理に注目した上で、秋田県で“野原一家が食べたもの”、“ゲーム内に登場するもの”を探していきたいと考えました。


盛岡在住の筆者がまず目指したのは、舞台である大曲から少し離れた秋田市。ここには「秋田市民市場」があり、古くから秋田の人々の食卓を支えています。新鮮な海の幸はもちろん、野菜や伝統食なども揃っているこの市場で、まずはゲーム内に登場する魚などを探していきます。

◆ハタハタ
秋田県の魚といえば「ハタハタ」です。「ハタハタがないと正月が迎えられない」と言われるくらいで、秋田の県魚でもあるハタハタも野原一家の食卓に並んでいます。ただしハタハタの漁期は冬で、筆者が取材した夏では新鮮なハタハタを入手することはできません。
しかし、秋田県ではハタハタを干物にしたり、塩や麹で漬ける「三五八漬け」、塩・酢漬したハタハタを用いた「ハタハタ寿司」などに加工して、この時期でも楽しむことができます。ハタハタの旬ではブリコと呼ばれる大きな卵があり、その触感も非常に楽しいのですが三五八漬けには卵入りのものも用意されていました!

また、市場内にはハタハタをモチーフにした鯛焼き屋さんも出店していました。ラインナップにはブリコをモデルにしたお惣菜系のものもあり、ハタハタというものが秋田の名物として根付いているんだな、というのも実感できました。


◆ヤツメ
ゲーム内の釣りで入手できる「ヤツメウナギ」は、脊椎動物の中でも原始的な円口類と呼ばれる生物。少し個性的な見た目のヤツメウナギですが、北海道や東北などで食べられることもあり、秋田県でも郷土食のひとつとなっているようです。ゲーム内でも開発メニューで登場します。
ヤツメウナギも冬が旬のもので、残念ながら市場では販売していませんでした。ただ、市場内のお店でお話を伺ったところ「注文すれば用意できる」とのことで、旬は外れるものの、入手もできるようです。ヤツメウナギを鍋で食べると美味しい、というお話もいただきました。

なお、ヤツメウナギを使った鍋は、秋田県北西部にある能代市の公式サイトでも紹介されています。
◆ぼだっこ
ゲーム内の食事シーンでは焼鮭も登場します。これ自体は普通の焼鮭なのですが、今回は少し拡大解釈して秋田県の名物である塩鮭の「ぼだっこ」も紹介します。いわゆる塩鮭を示す方言で、甘口から激辛まですべて「ぼだっこ」です。
最近SNSでご飯の上に少しだけ鮭が載っている画像も流行ったので、知っている方もいるかもしれません。激辛のぼだっこはとにかくしょっぱく、まさしく一欠でご飯を軽く食べられるほど!市場では各店でぼだっこが売られていますし、秋田では瓶詰めのぼだっこが一般的に売られているほどの人気商品です。

今回筆者は市場で激辛の商品を購入。焼いてみたところ、中からどんどん塩が出てきて表面をコーティングしてしまいます。味わいはしょっぱいだけでなく、しっかりと鮭の旨味を感じられます。皮の部分に脂もあり、本当に美味しい。


市場では「ドジョウ」もたくさん売られていました。秋田県の一部地方では、ドジョウ鍋を客人に振る舞うという文化もあったようです。ゲーム内ではドジョウを釣り、炭の町で料理開発に使用することができます。

・定番のきりたんぽ、いぶりがっこは入手しやすい
市場で魚を見て回った後は「道の駅あきた港セリオン」へ。名前の通り目の前が港のこの場所では、買い物や観光だけでなく釣りを楽しんでいる人も多く見られます。うどん・そば自販機やババヘラアイスなどの有名な名物もあるこの道の駅で、定番の秋田土産をみていこうと思います。



◆きりたんぽ
秋田県を代表する郷土食といえば、やはり「きりたんぽ」でしょう。米をつき潰して串に刺し焼くことで作られるきりたんぽは鍋にするだけでなく、味噌を付けて焼いても美味しく食べられます。『炭の町のシロ』では、囲炉裏を囲んで両方の食べ方を楽しんでいます。
きりたんぽは流石に名物ということもあり、秋田県のあらゆる場所で売られています。筆者の住む岩手県でも気軽に入手できるのですが、秋田では観光地のお土産用に鍋用のセットになっているものも。また、比内地鶏を使った濃縮スープが付いている商品もあり、気軽に地元の味わいを楽しめます。


道の駅では、地元企業の作る「カップきりたんぽ」も発見しました。これはレンジとお湯、もしくはお湯のみで作れる商品です。醤油味だけでなく、秋田の有名ラーメン店とのコラボ商品やお汁粉風など、バラエティ豊かな味が揃っていました。

◆いぶりがっこ
やさいを燻して乾燥させてから漬ける、独特の製法の漬物「いぶりがっこ」も秋田を代表する味覚のひとつです。燻すことで食感や香りに特徴が生まれ、近年はアレンジしてお酒のつまみなどにも愛されることも多いようです。『炭の町のシロ』では、さまざまな食卓に並んで登場しています。
いぶりがっこも非常に種類が多く、道の駅はもちろん市場やスーパーでも、さまざまなメーカーの製品が売られています。一本サイズのものから少量スライスのお試し品、チーズなどと合わせたアレンジおつまみもあり、お土産として多くの人が手に取っていました。


道の駅はやはり観光地ということもあり、秋田の名物を気軽に購入することができます。稲庭うどんも、束になっているものから大袋に詰め込んだお得セット、切れ端が入った袋などもあり、たっぷりと食べられます。

・野原一家も通ったかも?地元のスーパーへ
最後の名物探しは地元スーパーです。ひろしの実家である大曲駅前からほど近いスーパーに車を止め、秋田名物が簡単に買えるのかを調査してみます。狙いは「比内地鶏」と「横手焼きそば」です。
◆比内地鶏
比内地鶏は、秋田県で昔から飼育されている天然記念物「比内鶏」をルーツに持つ交配種。秋田のブランド鶏として、さまざまなエリアで購入することができます。ゲーム内では冒頭でひろしがテレビで紹介したり、キッチンカーのお兄さんが比内地鶏を使ったカレーを提供するという形で登場します。
スーパーでは、精肉コーナーで販売されていました。やはりブランド鶏ということもあり、他の鶏肉よりもお高かったですが、棚には空いているところもあり、普段から購入している方もいるんだな、と思わされました。
また、冷蔵麺のコーナーでは比内地鶏出汁のラーメンスープの素が醤油・味噌・塩と勢揃い!製造会社もしっかりと秋田市でした(名産品だと思ったら他の県が作っていることも珍しくない)。


◆横手焼きそば
横手市が発祥の「横手焼きそば」は、いわゆる“B級グルメ”として有名になった焼きそばです。太くて真っ直ぐな角麺と少し甘めのソースが特徴で、目玉焼きと福神漬けが添えられています。ゲーム内でも、しっかりと目玉焼きが載った横手焼きそばとして食卓に並んでいます。
横手焼きそばは名物なので道の駅でも当然のようにあり、お土産用のパッケージも売られていました。今回あえてスーパーを選んだのは「惣菜コーナーにあるんじゃないか!?」という確認のためでしたが、残念ながら置いていませんでした。普通の焼きそばや海戦焼きそばはあったのに……!

冷蔵麺コーナーを見てみると、横手焼きそば専用の袋麺やソース(一回分とボトル)が売られていました。もちろん麺とソースがセットになったチルド商品も用意されています。他にも珍しいものはないかな、とスーパー内を探していると、なんとカップ焼きそばスタイルの横手焼きそばを発見しました!

製造者は地元横手市のトヤマフーズで、横手焼きそば暖簾会の公式サイトでも紹介されている製麺会社のひとつです。作り方はオーソドックスなカップ焼きそばスタイルで、麺やソースにもしっかりとこだわっているようです。ただし、目玉焼きと福神漬けは自分で用意しなければなりません。フリーズドライの目玉焼きは難しそうですもんね!


スーパーでも、きりたんぽやぼだっこの瓶詰めなど、秋田名物が色々並んでいました。あくまでもお土産ではなく、通常商品として比内地鶏や冷蔵麺もあるので、やはり一般的に定着してるのでしょう。大曲のスーパーなので、もしかしたら野原一家も買い物にきたことがあるかもな、と思いながら楽しい買い物時間を過ごせました。

・最後はOPでも登場した駅へ
ゲーム内に登場する食べ物は地元に根づいたものが多く、市場・道の駅・スーパーを巡ることでほとんどコンプリートできました。最後に、ゲーム内のオープニングでも登場する「羽後長戸呂駅」を実際に見てみることにします。
駅は大曲から車で1時間ほどの場所にあります。取材に行ったのが夏ということもあり、田んぼには稲が青々と茂っている実にのどかで、美しい風景も広がっています。道中のコンビニでしっかりと水分を補給しつつ、ゆっくりと駅を目指します。

到着した羽後長戸呂駅は、秋田内陸縦貫鉄道の駅で、完全な無人駅として存在しています。駅には屋根付きの階段から入り、大きな看板と待合所が設置されています。待合所の中は綺麗に掃除されていて、中にはなんと駅のイラストを使用した『炭の町のシロ』のポスターが貼られていました!
他にも秋田県・埼玉県・熊本県を応援する「クレヨンしんちゃん」のポスターも貼られています。ひろしの実家が秋田県、みさえの実家が熊本県、そして「クレヨンしんちゃん」の舞台が埼玉県ということで、この三県は「家族都市」として協定も結んでいるのです。




なお、駅で撮影中にちょっとした恐怖体験が。駅の周辺はのどかな田園風景で、近くには山もあるのですが、少し離れた場所から突如「火薬が破裂」したような轟音が響きました。あれ、これあれかな、熊関連かな?と思い、震えながら撮影し、終わったら車にダッシュで駆け込んで離脱しました。





せっかくならチェックしてこいよ!と思う読者の方もいるかもしれませんが、そこら中に熊注意のポスターや看板が貼られているのは怖すぎるんです……!


観光地にせよ、食べ物にせよ、目的のある旅というのは楽しいものです。『クレヨンしんちゃん「炭の町のシロ」』では、“秋田を舞台にしたゲームの代表作”としたいという思いがあり、さまざまな面で秋田県を感じさせるものがありました。
劇場版の最新作「映画クレヨンしんちゃん 奇々怪々!オラの妖怪バケ~ション」も秋田県が舞台で、妖怪の国での大冒険が描かれます。映画のあらすじでも花火大会とありますが、ひろしの実家である大曲では毎年「大曲の花火」が開催されています。今年の花火は8月29日に開催されるので、こちらも楽しみですね!



