
東京ゲームショウ2026にて世界初のプレイアブル出展を迎えた『モンスターハンターワイルズ:アセンダンス』。会場でのメディア合同インタビューに参加し、本作のプロデューサーを務める辻本良三氏、ディレクターの平岡拓朗氏、そしてエグゼクティブディレクター兼アートディレクターの藤岡要氏に話を聞く機会を得ました。
新アクション「ブーストブレイサー」の設計思想から、久々の復活となるラオシャンロン、そして試遊中に見つけたある鉱石の話まで。メディア合同インタビューの模様をお届けします。
◆目指したのは「ワイルズの正統進化」
――『アセンダンス』の開発において意識した、『ワイルズ』本編から伸ばしたかった長所と、特に反省した部分を教えてください。
平岡:プロジェクトを開始するタイミングで僕が掲げたコンセプトが、「『ワイルズ』の正統進化をしたい」というものでした。その正統進化というところから、まず良いところ、つまりユーザーさんが楽しんでくれたところ、僕たちが作ってちゃんと響いたところは、しっかり伸ばしていきましょうと。もう1つは、もう少し改善できたんじゃないかという部分や、皆さんからのフィードバックを受けて気づいたところについては、徹底的に見直して改善していこうと。それをやることで『ワイルズ』の正統進化ができるんじゃないか、というのがまずありました。
そこに新しいストーリーやアクションが合わさって、『アセンダンス』という形になっていると思っています。
僕自身は『ワイルズ』のアクション面はすごく面白いと思っていて、傷のシステムや集中モードがあるところをベースとして、さらにそこから面白いことができるんじゃないか。それがブーストブレイサーに繋がっています。
フィードバックについては、いろいろなご意見を確認させてもらって、それを気づきとして、変えるべきところは変える、どうしても直せないところはちゃんと吟味する、というのを一つずつやっています。先日の開発者スポットライトで紹介させてもらったリファイン対応も、その一部です。
◆ブーストブレイサーは「チャンスメイクの新しい手段」
――『ワイルズ』には傷や集中モードといった新要素が既にありました。そこにブーストブレイサーを加えることで、従来の立ち回りにどういう変化をつけてほしいと考えたのでしょうか。
平岡:「『モンスターハンター』としてのアクションの遊びって何だろう」を考えたことが出発点です。モンスターとハンターがいて、モンスターの隙、いわゆる攻撃チャンスに対して、ハンターが攻撃を差し込んでいく。それが繰り返されていくゲームだと思っています。
では、その隙とは何なのか。単純に攻撃の隙もありますが、プレイヤー側が罠を使ったり、閃光弾を使ったり、環境を使ってダウンを取ったりすることでもチャンスは作れます。あとはモンスターの状況ですね。怒り状態なら隙が少なくなるから防御側に回ろう、疲労状態なら隙が出やすいから攻撃チャンスだ、と。そういったものが組み合わさって『モンスターハンター』の戦闘ができている。
そこに対して、プレイヤー側から別の手段でチャンスを作り出せる瞬間が作れたら、面白いものになるかもしれない。それがブーストブレイサーの最初のきっかけです。そこからいろいろ実験させてもらって、今回出させてもらっている形になりました。

◆14武器種への実装は「めちゃくちゃ大変」
――14種類すべての武器にブーストブレイサーを追加するのは、相当大変だったのでは。バランス調整の方向性についてはいかがでしょうか。
平岡:めちゃくちゃ大変です。ただ、バランスを考えて作るというよりは、14の武器種それぞれにコンセプトやその武器ならではの攻撃がある中で、今回『アセンダンス』をやるにあたって、もう一度ちゃんと一つずつ見ていこうと。『ワイルズ』の時はこうしていたけれど、こういう改良を入れたらより際立つんじゃないか、より取り回しが良くなるんじゃないか、と吟味していきました。
ブーストブレイサーについても、一つ一つの武器の特徴を伸ばす、強みを伸ばすという話をしていて、それをコンセプトに「こういうことができる」を考えて作っていく。並べてみて「これは強すぎるんじゃないか」となったところは、今も開発途中なので随時調整しています。
バランスは本当に難しいところです。触るユーザーの方の腕前によって使いこなし具合も変わりますし、ゲームの理解度でも変わってくる。ただ、ブーストブレイサーでまず大事にしているのは、ブースト発動アクションを使った瞬間に何かしら気持ちいい瞬間がある、先ほど言ったチャンスメイクができる。そこだけはすごく大事にしています。

◆「これまでの経験」がアセンダンスをつくっている
――平岡さんは『ダブルクロス』『アイスボーン』でリードゲームデザイナーを担当されるなど、作風の異なる作品で中核を担ってこられました。その経験は今回どう活かされていますか。
平岡:難しいですね。特定のタイトルだからこう活かされた、というよりは……。僕自身は『ポータブル 3rd』から『モンスターハンター』の開発に携わらせてもらっていて、そこから『ダブルクロス』『アイスボーン』でリードゲームデザイナーという立ち位置でやってきました。ただ、この2つが特にというよりは、『モンスターハンター』の中で培ったものや、プライベートでもゲームはするのでそういったもの、もちろん『ワイルズ』もプライベートで遊ばせてもらっていて、そうした経験の中から「モンスターハンターってここが大事だよな」というところを自分の中で持っている。
そこに藤岡さんや徳田さん(※徳田優也氏…『ワイルズ』ディレクター)にも「こう考えてみるといいかな」と相談しながら進めている。なので、特定の2タイトルから強い何かがあったというわけではなく、大げさに言えば人生というか、これまでの積み重ねで作っているのが今の『アセンダンス』だと思っています。
――チーム間の連携という意味では、『ダブルクロス』のノウハウが『アセンダンス』に持ち込まれるようなこともありましたか?
平岡:チーム同士の連携というよりは、「モンハンチーム」としての経験の蓄積ですね。資料を残す、ノウハウを残すというのはやっているので、どのタイトルからどのタイトルへの連携が取りづらい、といったことは特にないという認識です。
藤岡:担当者がいろんなタイトルをまたいだり、モンスター担当者が別のタイトルで手が空いてきたところに入ったり、という形ですね。人がどんどん経験を蓄積しながら流れていきますし、そこで新たに合流した人がまた経験を積んでいく。常に別々のラインを走り続けているわけではなく、人がその中で移動しているので、自然とそうなるんだと思います。
◆「それをやらないと損だよ、とはしたくない」
――チャージアックスで試遊したのですが、ゲージが時間経過でもモンスターへの攻撃でも溜まるので、気づいたら溜まりきっていて使えていない、という感覚がありました。お話を聞く限り、チャンスメイクでどんどん使ってほしいという意図なのでしょうか。
平岡:そうですね。設計思想としてはそこです。チャンスだ、自分はここいけるな、というタイミングで使ってほしいというのが元々の狙いではあります。
ただ僕自身の考えで言うと、それが最適解なのかもしれないけれど、人それぞれ習熟度が違うんですよね。今回は初めての出展で、情報もない中でユーザーの方が触っているのを見ると、みんなすごく(ゲージが)たまっている状態だったりもする。でもそれは当たり前で、新しいことですから。
慣れていない人が、たとえばモンスターがダウンした時にゲージを使い切って一気に畳み掛ける。僕はそれも正しいと思いますし、全然肯定したいです。

慣れてくると、ブースト状態というハンターのアクション性能がアップしている時間があるわけですが、発動アクション自体はゲージを消費しないと使えない。だから3個一気に使うと、本当なら何秒かある強化時間を使い切らずに、発動アクションで上書きしてしまうことになる。最適解を求めるなら、時間をフルに使って強い状態を維持して戦うことになるんでしょうけど、そこは「それをやらないと損だよ」というふうにはしたくないんです。
それができたらすごいよね、それができる人が上級者だよね、と。昨日ぐらいからいろんな方が情報を上げてくれていて、使いこなしている人が「こう使うんじゃないか」と広げてくれている。これからどんどん習熟度が上がって、いろんな使い方が出てくると思いますが、僕は全部を肯定したいと思っています。
◆「気づいたらハンマーは飛んでいた」
――映像が出た時、SNSでは“ドパガキ”という言葉で歓迎されていました。あれは意識していたわけではないですよね(笑)
平岡:特に意識したわけではないです(笑)
――結果的に長所を伸ばしたらああなった、と。
平岡:そうです。各武器の長所や強い瞬間を伸ばした時に、こういった性能があったほうが面白いんじゃないかとやった結果です。演出の派手さについては、どちらかというと藤岡さんが。気持ちよさをすごく出してくれているかなと思います。
藤岡:「このぐらいの距離を一気に詰めたい」という性能を出してほしいとなった時に、例えば大剣で今まで重い動きをしていた同じ人物が急にスピードアップするのは、理屈がないと気持ち悪いなという話をしていたんです。
じゃあブーストするアクションはどういう表現に持っていくのがいいのか。ブーストブレイサーという新しいギミックをハンターに装備させることで、その推進力を使って一気に瞬発力を上げたり、ガード時のノックバックを軽減してくれたり。そうやってハンターを一時的に強化する表現にすれば、ゆっくり動く武器種でも瞬間的な瞬発力で動けるんじゃないか。そこからスタートして……気づいたらハンマーは飛んでいました(笑)
平岡:飛んでいましたね(笑)
藤岡:ハンマーは推進力で飛んでいる、ということになっていました。
◆あくまで『ワイルズ』のアクションがベース
――本作のモンスターは、ブーストブレイサーを使いこなせないと倒せないようなデザインになっているのでしょうか。
平岡:まず最初に、そこは否定しておきます。そういうことはないです。僕がやりたかったのは、あくまで『ワイルズ』ベースの戦闘の中で、ブーストブレイサーを使うことでチャンスメイクできる瞬間がある、ということです。言い換えると、ゲージが溜まった時にプレイヤーの思考が瞬間的に変わるとか、やれる選択肢が広がるとか。実際にプレイしていただいたのでわかると思いますが、ずっとブーストしているゲームにはしたくないんです。

『ワイルズ』のアクションのいいアクセントになるものとして置いているので、これを使いこなさないとマスターランクのモンスターは全部きつい、みたいなものには絶対にしてはいけないと思っています。SNSを覗いたりすると「モンスターが大変なことになるんじゃないか」という声もあったんですが、そんなことは全然ないです。あくまで『ワイルズ』のアクションをベースに考えていると思っておいてもらえれば。
もう1つ追加すると、マスターランクに上がるので、『ワイルズ』に出ているモンスターもマスターランク版になればパラメータが強くなるのは当たり前として、新しいアクションが追加されたり、技が変更されたりしています。いわゆるマスターランクバージョンというものは作っているので、既存のモンスターとの狩猟も新しい気持ちで楽しめるんじゃないかと思っています。
――ブーストブレイサーに関係する防具スキルが出る予定は。
平岡:お。
藤岡:何も言えない。急にこういうのは何も言えなくなっちゃう(笑)
辻本:ただ、TGS版はイベント用の体験設定になっていて、特別な調整が入っています。
藤岡:遊んでいただいた方のご意見や、どう遊ばれているかをこちらで見させていただいて、その上で自分たちのコンセプトに合った形に調整していくことを考えているので、スキルがあるかないかは次の段階になったら、ということで。
◆新フィールドならではのギミックは「もちろん考えている」
――試遊ではモンスターとの戦闘で手一杯でしたが、新フィールド「雲居の遺跡群」ならではのポイントはあるのでしょうか。
藤岡:新しいフィールドを作る以上、そのフィールドのエリアごとの遊びに意味合いを持たせようというのは、プランナーもデザイナーも常々考えてやっています。遺跡群ならではのギミックももちろん考えてはおります。小型モンスターを転がすなどはありますが、ダイナミックなギミック自体は、まだ出していないですね。
――今回遊べる範囲は、全体の何割くらいなんでしょうか?
辻本:全てではないとだけ。

◆ラオシャンロンは「結構進化するものと思っていただければ」
――今回ラオシャンロンがかなり久しぶりに復活しますが、過去作ではあくまで個人の意見として、少し単調な部分もあったかなと思っています。どのような遊びとして復活するのか、お話しできる範囲で伺えますか。
平岡:『ダブルクロス』以来の登場ですが、やはりその時とはゲームのベースの部分が違ってきます。『ワールド』あたりで大きな革新が起きて、さらにそこから進化して『ワイルズ』が生まれた。ブーストブレイサーもそうですが、『ワイルズ』のアクションをベースにやっていく上で、ラオシャンロンを出しましょうとなった時に、そのまま持ってくるのは良くないよね、と。遊びのベースも変えなければいけませんし、表現できる技術的な部分もすごく進化している。
ラオって「歩いているだけで災害級のものです」というところをどうやったら表現できるのか。それも踏まえて、「『アセンダンス』で出すならこう遊びを変えたほうがいいんじゃないか、こういうものがいいんじゃないか」と考えてやっているので、結構進化するものと思っていただければと。
PVでも一瞬ラオが動いているところがあると思うのですが、あそこを見て「こういうことが起きるんじゃないか」「こんなことができるんじゃないか」と、ぜひいろいろ想像しておいてもらえるといいかなと思います。

◆古龍がストーリーの核に
――ラオシャンロンの襲来もそうですが、クシャルダオラ、テオ・テスカトルの復活、新モンスター「グンドラージャ」も新たな古龍です。古龍が一つのキーワードなのでしょうか。
藤岡:今回は「古龍が現れてしまったぞ」という話が一つキーになるストーリー展開になっています。クシャルダオラやラオといった古龍を真っ先に発表させていただいたのは、そこが主眼にあるからです。

――『ワイルズ』本編は生態系の話がメインで、『ワールド』『アイスボーン』は古龍がメインでした。今回はどういった形で古龍が展開されるのでしょうか。『ワールド』とは違うものになりますか。
藤岡:そこは違います。ただ、古龍という存在が何を引き起こすのか、というところがお話の核になってくるのは間違いないです。竜都を含む東の地のバックボーンであったり、なぜこういう背景になっているのかというところも、お話の中で語っていきます。そこにちゃんと古龍を絡めていこうと思っているので、お楽しみに。
◆テオ・テスカトル、スーパーノヴァが2連になった理由
――試遊で戦ったテオ・テスカトルについて。スーパーノヴァの後にホーミングしてもう一度撃ってくる挙動がありました。直近のタイトルにも出ているモンスターですが、『アセンダンス』のテオとしての注目ポイントを教えてください。
平岡:テオって、いろんなテオがいるんですよね(※さまざまな作品に登場するテオ・テスカトルの意)。いろんなテオがいる中で、『ワイルズ』をベースとしたアクションにおけるテオはどう作っていくべきだろう、と考えました。直近のタイトルからすぐ移植してそれで出します、だけだとゲームが違うので、それではダメだよねと。
『ワイルズ』のゲームテンポ感、そこに『アセンダンス』が入ってくることを考えた時に、どういう軸でテオを作っていくのか。そこをまず考えた上で、いろんな攻撃やアクションを「これを持ってきたらいいんじゃないか」と検討しつつ、プラスで「こういう行動を入れるとユーザーの新しい立ち回りが生まれるんじゃないか」というところも考えて、新しいアクションを追加しています。

話題になっているスーパーノヴァが2連になっている件については、スーパーノヴァってアイコニックだよね、飛んでバーンとやるのはやっぱりあるよね、と。そこに何かしら条件を満たすともう一回来る、という要素を足すことで、アイコニックな部分にアクセントが1つ追加される。シリーズファンが驚いてくれたり、話題になってくれたりするところもあっていいのかな、と足しています。
初見の方がそれでやられている場面を見ていると、やられたのにすごく嬉しそうに「今回こうなるのか」となっていたりする。作っている側としては、ちゃんとポジティブに受け取ってくれているのかな、狙っている感じのことができているのかな、と思っているところです。
――一発避けられたら「よかった」と思うところに、ホーミングでもう一発は誰も思っていないです。
平岡:見方によっては意地悪なんじゃないかと思われるかもしれないですが、それも一つの変化として、ポジティブなものとして受け取ってもらえるんじゃないかなと。ちなみに、他のモンスター全部がそういうことをやってくるわけではないので、「こいつもかよ」みたいにはならないようにしています。
◆コスモライト鉱石は「喜ぶ人がいるかな」で選ばれた
――試遊中、久しぶりにコスモライト鉱石が出てきて感動したのですが、過去作との繋がりという意味で何か展開はあるのでしょうか。
平岡:掘ったんですか(笑)
――掘りました(笑)
平岡:マスターランクの鉱石みたいなアイテムが取れる、しかも高い場所、となった時に、新しい名前の鉱石にするかどうかをいろいろ考えるんですよ。考えて、「うーん、でもコスモライトがいいな」と(笑)コスモライトだったら喜ぶ人がいるかな、「あの時のあれだ」となるかなと思い実装しました。
――『4G』で登場した「天空山」的な。
平岡:そういった考え方の繋がりですね。実際に設定として繋がっているかどうかまでは言及しませんが、「あ、コスモライトだ」とファンの方が喜んでくれたら嬉しいです。まさか掘っている人がいるとは思わなくて、びっくりしました。
――めちゃくちゃ嬉しかったです。
辻本:あんまりこの体験版で採掘は想定されてないですけどね(笑)
平岡:ちゃんとデータを入れておいてよかったです(笑)

『モンスターハンターワイルズ:アセンダンス』は2027年発売予定。対応機種はPS5、ニンテンドースイッチ2、Xbox Series X|S、PC(Steam)です。プレイには『モンスターハンターワイルズ』本編が必要となります。



