
2026年9月10日、スクウェア・エニックスが『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン ちょっとステキなリマスター』(以下『トルネコリマスター』)を発売しました。
これは1993年9月19日にリリースされた『トルネコの大冒険 不思議のダンジョン』の、文字通りリマスター版。1990年に登場した『ドラゴンクエストIV 導かれし者たち』の登場キャラクターである「トルネコ」を主人公にした外伝的作品ですが、その内容はそれまでのアクションRPGとは一線を画すもので、宣伝文句だった「1,000回遊べるRPG」が一大ジャンルとなってしまったほど。
RPGは一度全クリアしてしまったらそれまで、あとは全く同じ内容のシナリオとダンジョンを最初からやり直すしかない……という常識を覆し、「プレイ毎にダンジョンの形が異なる」「どんな熟練者でも毎回クリアすることは至難の業」というゲームシステムを確立しました。そんな『トルネコ』は、我々に何を与えてくれたのでしょうか。
◆1993年という時代
1993年は、まさにスーパーファミコン全盛期。ファミコンよりも大幅に向上したグラフィックは、よりリアリティ溢れるアクションRPGを次々に創造しました。当時は別会社だったスクウェアとエニックスが、競うように作品を市場に送り込んでいた時代です。
1993年という時間軸にも注目する必要があります。この当時の日本では、様々な「新時代の気配」が明確な形として姿を現していました。
まず、1月にはアメリカ大統領がジョージ・H・W・ブッシュ氏からビル・クリントン氏に交代し、6月には皇太子徳仁親王(当時)と雅子様のご成婚。8月にはお台場にレインボーブリッジという新たなランドマークが登場・開業しました。バブル景気は既に過去のものとなり、それまで絶好調だった企業は軒並み元気を失い、日本人は新しい仕組みや価値観を求めるようになりました。
その中で、コンピューターゲームは少しずつではありますが市民権を獲得するようになります。この時代の大人は、何だかんだでコンピューターゲームをプレイしたことのある人が大半。大人が子供と一緒にゲームをする、ということが珍しくなくなりました。

また、コンピューターそのものの技術的進歩により以前よりも複雑なシナリオやゲームルールを組み込めるようになりました。『トルネコ』は、まさにそのような時代背景を背負った作品と言えます。
◆商人の大活躍!
『トルネコ』の主人公は、武器商人のトルネコという人物。丸いお腹が特徴のおじさんです。

『ドラクエ』シリーズにおいて、商人はあくまでもサポート職種で、戦闘の花形になり得るものではありません。『ドラクエⅢ』ではシナリオの途中で商人を移住させる強制イベントがあるものの、それ以外には商人などパーティーに混ぜなかった……という人が大半ではないでしょうか。
考えてみれば、商人の役割というのは当時の家庭用ゲーム機のスペックではなかなか表現しづらいものだったと思います。どこかからモノを仕入れてそれを売る。こうしたことは「何も商人でなくてもできるのでは?」というツッコミをされてしまいがちで、それを覆すには「商人しかできないこと」や「商人ならではのライフスタイル」を作中に描写する必要があります。

トルネコが不思議のダンジョンを探索し、お金やアイテム、武器、防具を拾い集めることで、彼の自宅兼店舗がどんどんと大きくなります。一番最初は親子3人で住むにはかなり手狭なログハウスですが、ダンジョンでのアイテム収集が順調に行くとどんどんお金が貯まっていき、やがて隣の土地に石造りの立派な店舗が建設されます。この成り上がりっぷりがまた豪快そのもの!! トルネコの奥さん、調子に乗ってバーまで作っちゃいます。
◆頭脳を活用するアクションRPG
そして、トルネコが探検する洞窟は毎回構造が変化し、落ちているアイテムも異なります。
これは運の要素が極めて強く、たとえば序盤から鋼鉄の盾が手に入ったのに、剣はいつまでも見つからない……ということもザラにあります。また、序盤から剣を入手することができ、しかも剣を強化するバイキルトの巻物に恵まれたおかげで攻撃力が極端に高くなるということも有り得ます。

ところが、ダンジョンの途中でモンスターハウスに迷い込み、フルボッコにされた挙句持っていたアイテムを全ロスト……ということも。

このモンスターハウスですが、今までに取得したアイテムを使って何とか乗り切ることもできます。イオの巻物を使って、そのフロアにいるモンスターを全攻撃。かなしばりの巻物で周囲のモンスターの動きを止めたり、ルーラ草でフロアから脱出し、狭い通路にモンスターを誘いこんで1体ずつ倒していくという戦い方もできます。
このゲームで最も大事なのは、ピンチに陥っても諦めないこと。頭とアイテムを使い、絶体絶命の状況から奇跡的な脱出を実現しましょう!

そんな感じで、『トルネコ』はパズルを思わせる要素も含まれ、クリアには頭脳を活用しないといけないようになっています。商人という職業の魅力を伝えると同時に、アクションRPGに新たな可能性を与えたこの作品は、今も色褪せずに人々を魅了しているようです。


