アークシステムワークスより、2026年10月22日に発売されるシミュレーションRPG『デモンズナイトフィーバー』。
本作は、「敵も味方もキルキルキル 死ねば死ぬほど強くなる育成RTAシミュレーションRPG」というジャンル名が銘打たれた異色の作品です。
一般的なシミュレーションRPGでは、仲間を集め、育て、できる限り犠牲を出さずに勝利することが求められます。しかし、本作ではむしろ味方の「しもべ」を積極的に殺し、その犠牲を利用することが攻略の鍵となります。
本作のプロデューサーを務めるのは、『魔界戦記ディスガイア』『マール王国の人形姫』などを手がけ、かつて日本一ソフトウェアの代表取締役社長を務めた新川宗平氏です。
2022年に同社を退社した新川氏は、合同会社スーパーニッチを設立。現在はゲーム制作だけでなく、小説の執筆など幅広い創作活動を行っています。
Game*Sparkでは発売直前の新川氏にインタビューを実施。『ディスガイア』との差別化を意識して生まれた独特のゲームシステムや、ブラックコメディに対する考え方、ドリコムとの協業、今後の展望までお話を伺いました。
「『ディスガイア』と同じものは作りたくない」味方を殺すSRPGが生まれた理由

――まずは自己紹介と、本作での役割について教えてください。
新川宗平氏(以下、新川):合同会社スーパーニッチの新川宗平です。元日本一ソフトウェアです。ゲーム業界歴30年、小説家歴4年になります。
『デモンズナイトフィーバー』は10月22日に発売されますが、もともとは4年前、小説家として活動を始めた頃から、喜多山浪漫というペンネームで原作を手がけていたものです。ゲーム化が決まったことで、本名の新川宗平としてプロデューサーも務めることになりました。
――本作では「死ねば死ぬほど強くなる」という、一般的なSRPGのセオリーとは真逆の仕組みが採用されています。どういった経緯で生まれたのでしょうか?
新川:いくつか理由があるのですが、まず、私がゲーム業界で30年間やってきた中で、ライフワークだと感じているテーマが3つあるんです。1つはファンタジー、もう1つはダークコメディ、そして3つ目がホラーです。
ファンタジーでいえば『マール王国の人形姫』や、最近では『エトランジュ オーヴァーロード』。ダークコメディなら『魔界戦記ディスガイア』、ホラーなら『流行り神』ですね。これらは今後も継続して手がけていきたいと思っています。
その中で、ダークコメディの新作を作ろうと考えたのが『デモンズナイトフィーバー』です。ただ、当然『ディスガイア』と比較されるだろうということは、最初から想定していました。
私には、同じものを作りたくないというポリシーがあるんです。続編は別ですが、新しい作品なのに過去に自分が作ったものと似たようなものを作るのは嫌ですし、他の方が作ったゲームと同じようなものを作るのも好きではありません。
だからこそ、できるだけ『ディスガイア』とは違うものを作ろうと考えたところからスタートしました。本作はダークコメディなので「悪」がテーマになります。そこで、シミュレーションRPGの基本を徹底的に外したいと思ったんですね。
通常のシミュレーションRPGは、仲間を集めて、仲間を育てて、仲間を死なせずに敵を倒すものです。『ファイアーエムブレム』も『タクティクスオウガ』もそうですし、『ディスガイア』でさえ同じだったと思います。
でも、悪の道を極めることを考えたときに、そもそも仲間なんていらないんじゃないかと。仲間ではなく「しもべ」がいて、そのしもべも使い捨てでいいんじゃないか。そういう発想から、味方を殺すことで戦っていく「キルバトル」が生まれました。
――実際にプレイしてみると、味方をキルする以外にもさまざまな悪行が用意されていて驚きました。こうしたシステムは、どのように考えていったのでしょうか?
新川:大きく分けると、バトルと育成の2つがあります。どちらも「悪」をテーマにしている以上、バトルでもできるだけ悪いことをさせたいし、育成でもできるだけ悪いことをさせたい。しかも、それが一辺倒にならないよう、バリエーションを持たせたいと考えました。
育成では、悪行を働くだけでなく、アイテムを盗んだり、しもべを誘拐してきたり、ランダムダンジョンでお宝をぶんどったりできます。また、悪行ポイントを使ってスキルボードで育成する要素も入れました。
育成方法にバリエーションを用意することで、プレイヤーが自分なりの攻略方法を編み出してほしいと思ったんです。
バトルでも、単純に味方をキルして発生する「キルスキル」で敵を倒すだけではありません。味方と位置を強制的に入れ替える「テレポート」や、しもべのHPを吸収する「HP吸収」などもあります。
基本的には、しもべを酷使して、生贄に捧げて、何かをするというシステムですね。とにかく「悪を楽しむ」というコンセプトを、育成面でもバトル面でも貫いていく方針で開発しました。
章ごとに見た目もUIも変更。言うことを聞かない「しもべ」の面白さ

――本作はチャプターごとに雰囲気がガラリと変わり、主人公やマリアの見た目まで変化します。こうしたバリエーションを考える上で苦労したことはありますか?
新川:いろいろな組み合わせを考えました。例えば「名探偵対怪盗紳士」や、「大怪獣対光の巨人」のようなものも考えていたんです。
ただ、シミュレーションRPGのバトルとして成立させなければいけないので、難しいものは外していきました。バリエーションを増やした理由は、やはりプレイヤーを飽きさせたくなかったからです。
できるだけ飽きない作りにはしていますが、それでも同じ戦闘が続くと、どうしても飽きてしまうと思うんですよ。だから、章ごとにテーマを変え、できることも変え、見た目もUIも変えるという、かなり手の込んだ、面倒くさいことをしました(笑)。それくらい、飽きさせないための工夫には苦心しましたね。
――もうひとつ特徴的なのが、しもべたちが必ずしもプレイヤーの指示通りに動かないことです。ハプニング的な面白さがある一方、戦略ゲームとして理不尽に感じさせないための調整も難しかったのではないでしょうか?
新川:まず「しもべは言うことを聞かない」という大前提があります。その上で、どうシミュレーションRPGとして成立させるかが非常に大きなポイントでした。
しもべには攻撃タイプや補助タイプ、遠距離タイプや近距離タイプ、タンク型などの分類があり、それぞれ行動ロジックが異なります。さらに、1ターン分だけですが、次にどう動く予定なのかを示す「行動予測」という機能も入れています。
思い通りにプレイしたい方は、こうした法則を参考にして攻略していただければと思います。一方、私はそういう法則を全く気にしないタイプで、行き当たりばったりで遊ぶんです(笑)。
それでもテレポートを使えば、かなりコントロールが利きます。例えば、しもべと位置を入れ替えて、敵のど真ん中にしもべを配置してからキルする。そうすると、敵も味方も全滅させられるわけです。
私はそういうプレイスタイルだったので、行き当たりばったりでも思った通りにコントロールできている感覚がありました。
――しもべたちは日向悠二さんがデザインされていて、非常にかわいらしいですよね。新川さんのお気に入りはいますか?
新川:どれもかわいいんですが、好きなのは戦隊ヒーロー側のしもべと、魔女編に出てくる魔女側のしもべですね。着ぐるみを着たような見た目のキャラクターがいて、あの辺りは結構かわいくて好きです。
本作では、お気に入りのしもべをどんどんキルして、転生させて強くしていきます。章が変わると、新たに誘拐できるキャラクターの見た目も変わっていきますが、気に入ったしもべはキルして引き継いでいけます。そうやって大切に育てていけるのも、面白さのひとつだと思いますね。
――しもべの名前も、思わず笑ってしまうようなものがありますよね。こちらはランダムで決まるのでしょうか?
新川:ランダムですね。そこまで多くはなかったと思いますが、50~100種類くらいだったと思います。たまたま自分の名前になってしまうケースもあるかもしれませんが、特に悪意はありません(笑)。
ゲームオーバーは失敗ではない。何度も繰り返したくなる3つの仕掛け

――本作はゲームオーバーになっても繰り返し挑戦することが重要ですよね。一方、SRPGのプレイヤーには、できるだけ失敗したくないと考える方もいると思います。失敗しても再挑戦したくなるために、どんな工夫をしましたか?
新川:大きく3つあります。まず、アチーブメントを取得することで、次に遊ぶときに有利な状態から始められるようにしています。
もうひとつは、プレイヤー自身が遊ぶたびにコツをつかんでいけることです。繰り返し遊ぶことで自分なりの攻略方法を編み出して、プレイヤー自身の腕前が上がっていく。それをモチベーションにしてほしいと思いました。
そして最後はストーリーですね。「この続きはどうなるんだろう」「続きを見るまではやめられない」と思ってもらえるようにしています。この3つを組み合わせることで、死んでも死んでも、繰り返し遊びたいと思えるように設計しました。
――育成RTAという仕組みでは、最終的に最適解がひとつに収束してしまう可能性もあります。育成方針に幅を持たせるための工夫はありますか?
新川:複数の育成方法を用意しているので、最初はプレイヤーの皆さんも迷うと思います。おそらく、どれかひとつの方法に集中して遊ぶ方と、まんべんなく試してみる方に分かれるでしょう。
ただ、どちらの方法でも、最初はおそらく2章くらいでタイムリミットが来て、ゲームオーバーになってしまうと思うんです。そのときに、「次はこれを試してみよう」「あれはまだ試していなかったな」と、いろいろ試行錯誤してほしい。そのために、あえて育成方法のバリエーションを複数用意しています。
――実際にプレイすると難易度も高めだと感じました。これから遊ぶ方に、攻略のアドバイスをお願いします。
新川:ゲームオーバーになっても、ゼロからやり直しになるゲームではありません。繰り返し遊ぶことを想定していますし、「強くてニューゲーム」のような遊び方ができる設計にもしています。
ある程度時間をかけて、自分なりの攻略方法を編み出していけば、必ずクリアできるようになっています。ぜひ楽しんでいただけるとうれしいですね。
ダークコメディの基準は「Dr.スランプ」。憎めない悪党たちへの愛情
――主人公の狂死狼は、ブラック企業で働くゲームプログラマーという設定ですよね。なぜ、このようなキャラクターにしたのでしょうか?

新川:プレイヤーが自己投影したときに、完全には共感できなくても、「こいつなら悪いことをしてもあり得るよね」と思えるキャラクターにしたかったんです。
世界や社会、人類そのものに恨みを持っていて、「人類全滅しろ」「リア充爆発しろ」「みんな死んじまえ」みたいなことを考えているキャラクターですね。そこから生まれたのが狂死狼です。
ブラック企業のゲームプログラマーにしたのは、ゲームにしたときに、ある程度の親近感が湧くだろうと思ったからです。金融機関の社畜より、ゲーム業界の社畜の方がいいなと(笑)。
――ブラックコメディやダークコメディを描く中で、意識していることはありますか。ご自身の中で、不快にならないラインなど、どこまで描くかという線引きはあるのでしょうか?
新川:私の中の線引きは、「Dr.スランプ アラレちゃん」なんですよ。
私は小学生の頃がちょうど「アラレちゃん」世代で、あの作品を見て育ったんです。鳥山明先生が描くアラレちゃんも好きなんですが、Dr.マシリトやニコちゃん大王、スッパマンといった、悪党や嫌なやつなのに、楽しくて憎めないキャラクターがいる世界がすごく好きだったんです。
『ディスガイア』のキャラクターも、悪魔だったり魔王だったりするのに、どこか憎めないじゃないですか。ああいうところは、『Dr.スランプ』から強い影響を受けています。私の中でのダークコメディの基準は、鳥山明先生であり、「Dr.スランプ」なんです。
syudou氏の主題歌が想像以上の出来に。予定になかったオープニング映像も制作
――本作の主題歌「ドロップアウト」はsyudouさんが手がけています。楽曲を依頼する際は、どんなイメージやテーマを伝えたのでしょうか?
新川:もともとsyudouさんを連れてきてくださったのは、開発を担当しているドリコムさんなんです。サウンド全般はドリコムさんが担当してくださっていて、そこからsyudouさんにお願いできるというお話をいただきました。
「えっ、マジで!?」という感じでしたね(笑)。ぜひやっていただけるならお願いします、ということで。
syudouさんが作詞も歌唱も手がけてくださるとのことだったので、こちらからはゲームのストーリーや企画だけをお渡しして、あとは全面的にお任せすることにしました。
そうしたら、さすがですよね。ゲームにぴったり合ったものを作ってくださったんです。もともとリテイクなんて全く考えていなかったんですが、想像以上のものが出てきたので、すごくモチベーションが上がりました。
――楽曲に刺激を受けて、開発に影響があった部分もあるのでしょうか?
新川:そうですね。実は、もともとオープニング映像を作る予定は全くなかったんですよ。でも、楽曲を聴いて「これはやっぱり作らなあかん」となって、オープニングを制作することになりました。
――開発を担当するドリコムさんとは、どのように制作を進めていったのでしょうか? ドリコムさん側から提案されたアイデアなどもありましたか?
新川:ドリコムさんは、ほぼ手放しで自由に作らせてくださったので、すごくやりやすかったですね。
ただ、その一方で、例えば収録の進め方など、きっちりやるべきところはきっちりやる。「ちゃんとした会社は、こういうふうにちゃんとゲームを作っているんだ」ということを、ドリコムさんからもアークシステムワークスさんからも学びました。
私はこれまで日本一ソフトウェアでしかゲームを作ったことがなかったので、自分たちがどれだけ勢いと根性で作っていたのか、よくわかりましたね(笑)。

――本作は税込4,950円と、比較的手に取りやすい価格になっています。この価格設定には、どのような考えがあるのでしょうか?
新川:最終的な値付けは、パブリッシングを担当するアークシステムワークスさんが判断されたものです。
今は本当にたくさんのゲームが発売されていますし、特に新規IPは、ユーザーの皆さんにとってなかなか手が出しづらいものだと思います。そうした心理を踏まえた価格設定なのだろうと思いますし、逆にこの価格であれば、新規IPでも手に取ってもらえるチャンスがあると考えられたのではないでしょうか。
私自身も、よくわからない新しい作品にフルプライスのお金を払うのは、なかなか難易度が高いことだと理解しています。
ただ、『デモンズナイトフィーバー』は、最初にお話しした通り、シミュレーションRPGの常識を完全に破壊しにいっているゲームです。そういう作品に興味のある方には、ぜひ遊んでいただきたいですね。
シミュレーションRPGが好きな方からは「そんなゲームシステムあり得ない!」とお叱りを受けることもあるかもしれません。でも、シミュレーションRPGの歴史に爪痕を残すつもりで開拓したゲームシステムでもあるので、ぜひその生き証人として買って遊んでいただきたいです。
――以前のインタビューでもお話しされていましたが、万人受けを狙うというより、尖った作品を目指しているわけですね。
新川:そうですね。“スーパーニッチ”です(笑)。
――アークシステムワークスさんも、特に今年に入って、『Donutal』『神貌のクリファ』など、格闘ゲーム以外の新規IPに力を入れている印象があります。そうした動きについて、どう感じていますか?
新川:アークシステムワークスさんといえば、世界に名だたる格闘ゲームメーカーだと思います。ただ、格闘ゲームを1本作るにも、相当な時間とコストがかかるわけです。そうした中で、別のジャンルでもブランディングを進めていくことは大事だと思います。
私としては、パブリッシングを引き受けていただいたことに非常に恩を感じています。だから、「RPGのアークシステムワークス」「シミュレーションRPGのアークシステムワークス」というブランドを作っていくきっかけになれたらいいなと思って、頑張って作りました。
75歳までにあと66本。会社を辞めて気づいた創作の可能性
――ここからは少し作品を離れて、今後の展望についても伺いたいと思います。『デモンズナイトフィーバー』の発売後、新川さんが取り組んでいきたいことはありますか?
新川:まずは最低でも1年くらいかけて、『デモンズナイトフィーバー』をしっかり売り伸ばして、続編を作れる道筋を作りたいですね。
それ以外にも、現在いろいろなゲームを手がけています。現時点では、次の京都のBitSummitで新作を2本出せるんじゃないかと思っています。あとはゲーム以外にも、ボードゲームや映像、短編映画など、どんどん新しいエンターテインメントに挑戦していきたいです。
――新川さんは独立後、本当に数多くの作品を手がけられていますよね。一般的には1~2本の作品に集中するクリエイターも多いと思いますが、これだけ精力的に制作を続けられる秘訣は何でしょうか?
新川:私も、こんなに多作になるとは思っていませんでした。ただ、日本一ソフトウェアを辞めて、自分ひとりの会社になったことで、会社経営のことや社員を養うことを考えずに済むようになったんです。
そういう意味で振り切った状態になって、「やりたいこと、面白いと思ったことは全部やってみよう」と思ったら、意外とやれることがわかってきたんですね。さすがに、今これ以上増やすとしんどいかもしれないとは思い始めていますが(笑)。
作品も順次発売されていますから、年間3~5タイトルくらいを世に出して、その分また3~5タイトルを新しく作るようなペースでやっていけたらと思っています。
私は日本一ソフトウェアに26年間勤めさせてもらいました。だから、残りの26年間をスーパーニッチとしてやろうと思っているんです。そうすると75歳になるんですよ。
今は53歳なので、あと22年あるわけですね。年間3本として考えたら、あと66本出せることになるんですよ。
――66本ですか! ものすごい数ですね。
新川:そう考えると、結構悪くないな、楽しいなと思うんですよね(笑)。
――最後に、本作は新規IPということで、購入するか迷っている方もいると思います。そうした方々にメッセージをお願いします。
新川:絶対にお約束できるのは、「こんなプレイフィールのシミュレーションRPGは遊んだことがない」ということです。そこだけは絶対的にお約束できます。
この言葉に嘘はないので、興味を持ってくださった方にはぜひ買っていただきたいですね。
あと、私はクラウドファンディングをやらない派なんです。そうではなく、作ったものを買って支えてもらえるのが、一番うれしいと思っています。
クラウドファンディングに5,000円出していただける気持ちがあるのなら、その5,000円で『デモンズナイトフィーバー』を買っていただきたい。そうすれば、次回作を作りますので。そういう形で買い支えてくださると、すごくうれしいです。
――なるほど。
新川:例えば、丸1日友達とカラオケに行って、晩ご飯を食べて、映画を観に行ったら、5,000円以上使うでしょう?
――そうですね。
新川:それをちょっと1回だけ、1回だけ『デモンズナイトフィーバー』に分けてもらえませんか? お願いです(笑)。
――いいですね(笑)。ありがとうございました!

『デモンズナイトフィーバー』は、PC(Steam)/PS5/ニンテンドースイッチ向けに発売中です。


