
2026年11月3日。「ゴジラ・フェス2026」の会場となったTAKANAWA GATEWAY CITY屋外ステージには観覧エリアを拡張するほどの来場者が集い、老若男女が新規制作フィルム「フェス・ゴジラII 東京消失」に歓声をあげました。
ゴジラのことなら50年前の作品でも知っている「ゴジラ博士」のキッズはもちろんのこと、キングギドラをイメージした金髪やキングギドラが刺繍されたスカジャンを着用した女性ファン、ゴジラの手作りうちわを手にして「かわいいー!」と叫ぶ女性ファンなど、その性別・年齢層の幅広さに改めて驚かされます。
同イベント内の企画「新怪獣総選挙」では1位の結果を左右するほど海外票が集まったということで、国内はもちろん海外人気もひじょうに高く、国内外のファンがその新作ショートフィルムに熱狂していました。
このたび注目したのは、その「ゴジラ・フェス」で人気コンテンツとなっている恒例のショートフィルム上映企画「フェス・ゴジラ」についてです。
「ゴジラ・フェス」についてまだご存じない方に説明すると、「ゴジラ・フェス」とは毎年「ゴジラの日」こと11月3日に実施される国内最大級のゴジラ総合イベントのことで、2017年に発足後、これまで新宿・歌舞伎町シネシティ広場、東京ミッドタウン日比谷、東京ドームシィなどで実施されてきました。おもな内容は、イベントステージ、グリーティング、キッチンカー、協賛各社ブース、物販エリアです。
「フェス・ゴジラ」はそのイベントのために新規で撮影したショートフィルムを上映する人気コーナーであり、一部にCGを用いつつも、基本的には昭和から続く伝統の着ぐるみ特撮をベースとしたものとなっています。

きっかけは2020年に発生したコロナ禍で、イベントがオンライン開催になった時に「目玉になるコンテンツが欲しい」としてスタート。当初は低予算のサービス映像のような規模感でしたが、回を重ねるにつれて次第に本格的になり、近年はクラファンの助けもあって今年は最大規模となりました。スタッフの数や撮影日数はもちろんのこと、ミレニアムゴジラスーツを新規で制作したり、ミニチュアセットや爆破シーンなども大幅にグレードアップしたりしています。また人間ドラマにも力を入れられるようになり、最新作では過去最高となる18分の大ボリュームとなりました。
またその内容は人気怪獣を再登場させるだけでなく、歴代映画シリーズをリスペクトしたサプライズも用意されており、たとえば怪獣の新バリエーションも発表され注目度をさらに高めています。そのひとつの成果として、2026年11月3日にリリースしたばかりのアクションゲーム『ゴジラ怪獣大乱闘』のリマスター版(原題『Godzilla: Destroy All Monsters Melee Remastered』)には、昨年の「フェス・ゴジラ」で誕生したバーニングミレニアムゴジラがDLCスキンとして実装されました。
そこで本稿では、新作映画「ゴジラ-0.0」や、ハリウッドシリーズ「モンスター・ヴァース」とは異なるトーンで描かれている、“もうひとつの新作”であり“もうひとつの人気シリーズ”である「フェス・ゴジラ」シリーズに注目。歩みと魅力、さらにはその意義を紹介したいと思います。
◆「着ぐるみゴジラ文化を継承する」という理念
2020年よりスタートした「フェス・ゴジラ」は、2026年までに7本の完全新作映像を制作・公開しました。そのいずれも新規で立ち上げた映像プロジェクトであり、着ぐるみについては過去作のものを流用しつつも、ストーリーは新規となっていました。
<「フェス・ゴジラ」シリーズ一覧>
2020年……「ゴジラ ゴジラ・フェスに現る」(登場怪獣:ゴジラ)
2021年……「ゴジラ VS ヘドラ」(登場怪獣:ゴジラ、ヘドラ)
2022年……「フェス・ゴジラ 3 ガイガン来襲」(登場怪獣:ゴジラ、ガイガン)
2023年……「フェス・ゴジラ 4 オペレーション ジェットジャガー」(登場怪獣:ゴジラ、ジェットジャガー、キングギドラ)
2024年……「フェス・ゴジラ 5 怪獣大決戦」(登場怪獣:ゴジラ、ジェットジャガー、キングギドラ)
2025年……「フェス・ゴジラII 新宿炎上」(登場怪獣:ミレニアムゴジラ)
2026年……「フェス・ゴジラII 東京消失」(登場怪獣:ミレニアムゴジラ、モンスターX)
当初はコロナ禍によるオンライン開催を意識し、コンテンツの柱となるものとして、小規模ながら完全新規の映像を制作。予算がないことが明らかにわかるような、ゴジラがのっしのっしと歩く様子が数分の映像として公開されました。
おもしろいのは、イベントMCの笠井信輔さんがゴジラ襲来を臨場感たっぷりにレポートしつつ、実はそのゴジラの着ぐるみにも入っていました……というオチです。足りない部分はアイデアでカバーする。まさに特撮の神髄とも言うべき“発想力”が感じられる内容となっていました。
監督を務めるのは「シン・ゴジラ」で助監督を務めたり「ウルトラマンシリーズ」にも関わってきたりした中川和博氏。2020年以降の「フェス・ゴジラ」でも歴代ゴジラシリーズの「いいとこ取り」をしつつ毎回趣向を凝らしてファンを楽しませてくれる、ゴジラファンにとって欠かせない人物です。

そんな「フェス・ゴジラ」ですが、翌年の2021年になると一気に規模が拡大し、バトルシーンを中心とした短編映像に進化しました。1971年公開の「ゴジラ対ヘドラ」が50周年を迎えたということで、ヘドラを相手にゴジラが大暴れ! 厳しい目で見ればまだまだ十分とは言えない部分もありつつ、年に一度のお祭り映像ということもあって、十分テンションが上がる内容でした。
その後、2022年から2024年は、ガイガンとジェットジャガーがそれぞれ50周年を迎えたことから新規の着ぐるみを制作しての順次登場に。とくに2023年の「フェス・ゴジラ 4 オペレーション ジェットジャガー」と2024年の「フェス・ゴジラ 5 怪獣大決戦」は初の前後編となり、前編終了後には会場に集ったファンから「えーーーっ!?」と声が上がりました。
しかしそれは期待値の表れであり、前編の内容がおもしろかったからこそあがったものです。ゴジラとジェットジャガーのライバル関係構築からの“第3の怪獣”キングギドラの出現。ライバルが共闘する少年マンガ的なノリはとても熱いドラマを生み出しており、従来のシリーズ作品よりもキャラクター性とストーリー性を深掘りした結果として、会場に集ったファンのハートをしっかり掴んだのでした。
とくに会場から反応があったのは、前編終了間際、ゴジラと対決した“正義の味方”ジェットジャガーがゴジラに追い詰められて窮地に陥ったシーンです。ゴジラが熱線を吐こうとして「もはやこれまでか!?」と思われた瞬間、キングギドラが現れてゴジラを弾き飛ばすと、「ここでキングギドラ!?」と言わんばかりの歓声が上がりました。
さらにキングギドラという共通の敵が現れたことでジェットジャガーとゴジラは共闘を開始! 倒れたゴジラに手を差しのべるジェットジャガーと、それに応えて手を差し出すゴジラ。「ガシッ」と掴んだ手と手が来場者をさらに熱狂させました。
このようにキャラクター性を押し出したシーンは「シン・ゴジラ」や「-1.0」にはありません。「モンスター・ヴァース」ではゴジラとコングの間に信頼関係のようなものが生まれますが、ここまで分かりやすい描写ではありませんでした。まさに昭和から続く“着ぐるみゴジラ”の世界だからできたことです。また会場で上映するという形式ならではの盛り上がりもありました。

その1年後、ファンが待ちわびた後編パート「フェス・ゴジラ 5 怪獣大決戦」では、2022年の「フェス・ゴジラ 3 ガイガン来襲」に登場したガイガンの腕を流用したジェットジャガー用新装備「Gクロー」が初登場。ジェットジャガーがガイガンの腕を装備するという本作ならではのオリジナルアレンジで来場者を沸かせました。このあたりの強化バージョンも着ぐるみゴジラならではの楽しさです。
また2025年の「フェス・ゴジラII 新宿炎上」と2026年の「フェス・ゴジラII 東京消失」では、2024年の「フェス・ゴジラ 5 怪獣大決戦」で一旦ストーリーを着地させたこともあり、その物語に新たな展開が訪れます。新宿を舞台にミレニアム版のゴジラが“バーニング化”するという、こちらでも本シリーズ・オリジナルバージョンのゴジラが誕生しました。

映像は当然のことながら人間ドラマにも厚みが増し、鈴木福氏が演じる自衛隊の活躍もひとつの注目ポイントに。「フェス・ゴジラII 東京消失」ではセットの規模、爆破シーン、総カット数など全体的に過去最大のスケールになっていて、もはや劇場作品なみの本格映像に進化していました。
中でも来場者を沸かせたのは、「フェス・ゴジラII 新宿炎上」で描かれた、新宿東宝ビルの「ゴジラヘッド」とゴジラが対面するシーンです。こういったユーモアや“夢のシーン”もまた着ぐるみゴジラシリーズの特徴であり、本シリーズでしかできないことでした。

2004年公開の「ゴジラ FINAL WARS」で着ぐるみゴジラは一旦のお休みとなり、2016年の「シン・ゴジラ」以降はリアルを追求した物語に変わっていきました。そこにライバル怪獣の姿はなく怪獣のパワーアップ形態もありません。しかし「フェス・ゴジラ」シリーズでは着ぐるみゴジラ文化を継承するとともに、ゴジラやライバル怪獣の異なる姿も描かれるようになり、新たな夢を紡ぐ場として国内外の注目度が上がり続けている状況です。
なお過去の映像については、「フェス・ゴジラ 5 怪獣大決戦」までのシリーズ作品を1枚のBlu-rayに収録して販売中。「フェス・ゴジラII」の2作についてはYouTubeで無料公開中ですし、日本映画専門チャンネルでは、「フェス・ゴジラII 新宿炎上」までの6作品を放送予定です。
<日本映画専門チャンネル 放送予定>
2026年11月15日(日)深夜1時10分~
2026年11月29日(日)22時55分~

2014年に「モンスター・ヴァース」シリーズ1作目となる「GODZILLA ゴジラ」が公開された際、東宝では、ゴジラのビジネスをより加速する必要があると感じたそうです。そこでアニメやイベントなど、映画が公開されるまでの“谷間”を埋め、ファンがつねにゴジラを楽しめる環境づくりを真剣に考えてきました。
そのひとつの施策として2017年からはじまったのが「ゴジラ・フェス」であり、目玉コンテンツの「フェス・ゴジラ」でした。しかし当初の「目玉コンテンツに」という目的は次第に異なる意味を持つこととなります。
モンスター・ヴァースで描かれたCGによるリアルなゴジラは本家国産ゴジラにも影響し、どんどんとCGゴジラが本流となっていく中、伝統的な着ぐるみ特撮にこだわった「フェス・ゴジラ」がその伝統の受け皿になったのです。それはやはり、プロジェクトをリードする中川和博監督のこだわりと想い、それに共感するファンの支えがあったからこそ。
2027年以降は「フェス・ゴジラ2026」内企画の「新怪獣総選挙」で1位に輝いた新怪獣「ゼノルフ」の登場が決定しており、その触手のようなデザインが着ぐるみの操演でどう表現されるか注目が集まっています。


現在、映画最新作「ゴジラ-0.0」が話題で、来年はモンスター・ヴァース最新作となる「ゴジラ×コング スーパーノヴァ」が控えている中、着ぐるみ特撮を継承しつつエンタメとしても最高の楽しさを提供してくれる「フェス・ゴジラ」が今後どのように進化していくのか?
映画展開、アニメ展開、ハリウッド、ゲームに加えて、独自の展開を切り拓いていく「フェス・ゴジラ」シリーズに期待が尽きません。




