■参加者
・西山 彰則 セガ第二CS研究開発部 部長
『ソニックワールドアドベンチャー』プロデューサーを務める
・森本 兼次郎 セガ第二CS研究開発部 第一企画セクション リードプランナー
同じく『ソニックワールドアドベンチャー』Wii版のディレクターを務める
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―――まず本作『ソニック ワールドアドベンチャー』の、ソニックシリーズの中における位置づけを聞かせて貰えますか?
西山: 今回、そういう風に銘打っているわけではないのですが、我々開発メンバーの意識としては、ドリームキャストで『1』が発売され『2』はゲームキューブなどでも発売された、3Dソニックの原点である『ソニックアドベンチャー』の最新作という位置づけでした。『3』というタイトルにするつもりは最初からありませんでしたが、意識としてはそうです。
―――なるほど。あえて『3』にはならなかった理由というのはあるのでしょうか?
西山: ドリームキャストで3Dになった『ソニックアドベンチャー』はおかげさまで好評をいただいています。これは非常に有り難いことなのですが、一方で旧来の2D横スクロールアクションのエッジの効いたゲーム性が失われた部分もあり、もったいないという気持ちがありました。2Dアクションのゲーム性も今の世に残していきたい、そして3Dアクションの迫力も兼ね備えるものを生み出したい。それで、今回は昼のソニックで2Dの要素と3Dの要素をミックスして今までのスピードアクションのソニックの決定版を作ろう、夜のソニックでは新しいソニックのアクションに挑戦しようということで企画がスタートしました。ここまで色々やってるので、これはもう新しいイメージを打ちだした方が良いなと思い、海外版では「Sonic Unleashed」というタイトルとしました。国内では「ソニックアドベンチャー」のイメージを残して「ソニックワールドアドベンチャー」というタイトルになっています。
―――国内版のタイトルどおり、今回は世界をモチーフにしたステージになっているそうですね
西山: 実は一番最初の企画の段階で「ソニックワールドアドベンチャー」というタイトルだったんです。昼のステージだけの構成で、企画書には「1日5分の世界旅行」と書いてありました。世界を旅行して、旅行記にスタンプを押していったり、ガイド本を埋めていくようなイメージです。ただ、少しインパクト不足に感じる面もあって、そこで新しいソニックのアクションを入れようというにことになったんです。昼と夜の対比も色々な意味で面白いですし。
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左: 森本氏、右: 西山氏 |
西山: 今までのソニックシリーズで、新しいアクションを導入しようとする時は、新しいキャラクターを登場させてきました。例えば、空を飛ぶならテイルス、滑空やカベ登りならナックルズという風にです。ただ、ちょっとキャラクターを多く作りすぎてきたという反省や、主人公のソニック自体は何も変わらないので、ともすれば影が薄くなってしまうという弊害があり、そろそろソニックにも新しいアクションに挑戦してもらおうということになったんです。ハイスピードアクションで足が得意なソニックなので、腕の方も使ってみたらどうなるんだ?というのもキッカケでした。
西山: 昼と夜で町の住民たちは性格が変わってしまう人もいます。でもソニックは変わらないという設定です。なぜなら、彼は表裏がないからです。その代わりに、体が変わってウェアホッグになってしまいます。パンチをしたり、腕を伸ばして物を掴んだり、ターザンのようなアクションもできます。昼のソニックはハイスピードな直線的なアクション、夜のソニックはパワフルでダイナミックな曲線的なアクションになります。
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腕で遠くのものを掴んだり | パワフルな打撃を加えたり |
―――なるほど、しかし賛否両論あったのではないですか?
西山: もちろん、ソニックはこんなアクションをしちゃいけない、という意見は沢山ありましたし、海外法人のセガオブアメリカやセガヨーロッパからは極端な話だと「昼のソニックだけでいい」という話や、「2Dのソニックでいいじゃん」みたいな意見もありました。ただ、単純に昔と同じことをしても面白くありませんし、新しいチャレンジには賛否両論は付き物だと思ってやってきました。
―――海外の声もかなり反映されているのですか?
西山: そうですね。今回は特に意見を聞く機会が多かったですね。実は毎週、定例のテレビ会議をやっていて、日本時間だと朝9時、向こうの時間で夕方から、最盛期には毎週5〜6時間やっている時期もありましたね。当然譲れない部分はありながらも、可能な限りは意見を取り入れるようにしました。
―――日本と向こうだとそんなに違うものですか?
西山: 驚くほどちがいますね。好みも違うし、日本人だと想像し得ないようなタブーもあります。今回も、表現の問題でマスターアップ寸前の物を急きょ修正したりもしました。町の名前でも相当に揉めましたが、「ワールドアドベンチャー」という世界を旅するテーマの作品でもあるので、全世界で受け入れてもらわなくてはなりません。土地の名前やステージ名については彼らの要望をかなり取り入れましたね。
―――Wiiでソニックは3作目になるんですね
森本: 『ソニックと秘密のリング』『ソニックライダーズ シューティングスターストーリー』ときて今回の『ソニック ワールドアドベンチャー』で3作目になります。私個人としてもWiiのソニックには全て関わってきて、ようやくWiiリモコンの癖みたいなものが判る様になってきました。
森本: アクションで一番難しいのが、操作とリアクションの一体感を生み出すことです。
ソニックという作品自体、年齢層的には少し下の世代を狙っている作品なので、誤動作を防ぐ為にある程度ハッキリと入力が実感できるレベルに、“振り”の感知幅を大きくしたりします。単発的なアクションならそれほどの問題は無いのですが、今回のゲームでは連続でWiiリモコンやヌンチャクを振ったり他のキーやアクションと連続的に体感操作を受け付ける状況があるので、その都度力んでいては達成感の前に体が疲れてしまう。
特にWiiには幅広いユーザーがいますし、大人が遊んだ際に毎度大きな動作をしてもらうのはちょっと辛いでしょうしね。その辺り「誰もが納得できる感覚」の調整に一番苦労します。やっぱり親子でとか、家族みんなでとかで遊んで欲しいですね。試しては修正して、試しては修正しての繰り返しですね。
―――手触りの部分は大きいですよね
森本: そうですね。Wiiリモコンの中には様々なセンサーが入っていて、プレイヤーの動作を数値で受け取れるのですが、その数値をどのように判断するのか、やはりプレイヤーは人間ですから、人によって癖もあるし、差もあります。その塩梅が難しいのですが、3作目にもなると少しずつ慣れてきたような気がします。
■ソニックシリーズの今後
―――先日のニュースで、英国でゲームキャラの人気投票をしたらソニックが一位だったそうですね
西山: あれはびっくりしましたね。ソニックは欧州で売れ行きが良くて、中でも英国ではソニック人気がかなり強いという事は聞いていたのですが、改めて実感しました。そうそうたるメンツを抑えての一位だったので、嬉しい反面、本当にいいのかな?という気持ちもありました(笑)。
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お馴染みソニック・ザ・ヘッジホッグ。世界的な人気者です | 夜のソニック・ザ・ウェアホッグ |
―――話は変わりますが、カプコンさんの『ロックマン9』は非常に面白い取り組みだったと思うのですが、ソニックではいかがですか?
西山: 実際に要望はありますし、検討しなきゃいけないとは思ってます。ただ、最初にやられちゃうと辛いですよね(笑)。ただ、先ほども申しましたが、2Dソニックのキッチリとしたゲーム性は何らかの形で残していきたいとも思ってます。KONAMIさんの『悪魔城ドラキュラ』は据え置き機と携帯機で上手く良さを残してると思いますし、ロックマンもそういう気持ちが開発者の方にあったんだと思います。ただ、もちろんお客様に喜んでいただけなければ意味がありませんので、どう展開していくのかが課題になってくると思います。
―――それでは今後のソニックシリーズの展開を教えてもらえますか?
西山: 今の段階で具体的に次のことを言うのは少し難しいのですが、我々としては常に新しいチャレンジをしていきたいと思っています。もちろんこれまで続いてきたシリーズへのリスペクトは非常に強いのですが、その縮小再生産ばかりしていても意味がありません。先ほどから2Dのゲーム性も残したいという話をしていますが、それは「昔に還る」という懐古趣味ではなく「正当に進化しつつも大胆な変化も取り入れる」ものでなければと考えています。ともかく、これだけ長く続き、お客さんにも愛されているシリーズですので、大事に作っていきたいですね。
―――最後に本作を楽しみにしている読者の方に一言お願いします
森本: ぜひWii版を買ってください(笑)。頑張って作りましたので。
西山: ソニックは『ソニックアドベンチャー2 バトル』から任天堂ハードで発売されていて、小さいお子さんにも受け入れられるようになりました。今回のWii版も、そうしたお子さんからその親の大人まで幅広い層に楽しんで貰えるゲームにしたつもりですので、ぜひプレイして試してみて下さい。
―――どうもありがとうございました!
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