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アメリカ代表(マスター)自宅にてゲーム中の風景※クリックで拡大画面を表示 |
餅A:WCGの半年後の4月に、大学の卒業旅行としてダラスに遊びに行ったんですよ。卒業旅行をしたいし、アメリカのゲーマーと仲良くなりたいなという気持ちがあって。アメリカ代表のマスター選手に「春に行きたいんだけど」と連絡したら「じゃあ大会を開いてやるよ」と言ってくれました。その時にゲーマーたちが集まって、僕のためにゲーム大会を開いてくれたんです。
杉山:滞在中はマスター選手の家に泊まったんだ。
餅A:そうです。
杉山:いいなあ!
餅A:マスターは広い部屋に住んでるんですよ。小学校の教室2つくらいあって、庭も広い。さすがアメリカです。
杉山:大会はなんていう名前だったんですか。
餅A:テキサスオープンだったかな。場所はゲームショップでした。アメリカの大会ってゲームショップでやることが多いんですよ。ゲームショップの一角にイベントコーナーがあって、お金を払うと何時間か使えますよという仕組みになっていました。
杉山:何人くらい集まったんですか。
餅A:40人くらいかな。
杉山:日本から餅Aが来るぞ、と声をかけたら40人! 嬉しいですね。最高のおもてなしですよ。
餅A:カナダからOffbeatNinja選手も来てくれました。ボコボコにされましたけど(笑)。
杉山:わはは。有名な選手がたくさん来たんですね。
餅A:マネーマッチといって「5試合やって勝ったら20ドルね」というスタイルがあるんですね。WCG2006の後夜祭で、彼から60ドルくらい巻き上げました(笑)。
杉山:餅Aはお金を賭けると強い(笑)。
餅A:どうもOffbeatNinjaはそれを根に持っていたらしくて、テキサスオープンではボコボコにされました。
杉山:返り討ちだ(笑)。「俺の拳で歓迎してやるぜ」と。
餅A:闘ってみて解りましたから。「ああ、こいつはかなり僕の戦い方を研究してきたな」って。
杉山:なるほど、気合いだけではなくて、戦術も分析して挑んでくるわけだ。でも嬉しいね。そういう風に意識してくれるって。
餅A:日本ではDoAの人口はバーチャファイターに比べると少ないんですよ。逆にアメリカでは人気が高くて、かなりレベルが上がっています。いろんなタイプのプレイヤーがいて、反応も早いです。オフラインで対戦できる環境があるし、プロのプレイヤーもいるし、プロのリーグもある。戦術情報の交換も活発です。日本にはそういう環境はありませんね。
杉山:アメリカのDoAコミュニティの中心が「DoA Central」(DoAC)ですよね。そこが主催する大会がDID。
餅A:はい。DoACの主催者がマスターで、彼がアメリカのDoAコミュニティの中心です。
杉山:なるほど、だからDID3の選手リストでMochi-Aが大きく書かれていたわけだ。そうとう歓迎されているなと思いましたよ。
餅A:プレイヤーのレベルの話なんですが、アメリカではオフラインの環境がたくさんあるんですね。オンライン対戦は遅いので、オフライン対戦とは別物です。だから日本のプレイヤーのレベルも上がらない。アメリカとの差は開くばかりです。今年WCGの日本代表となった活忍犬選手も強い選手なんですが、日本に強いライバルがいないと強くなれません。個人では限界がありますね。オフラインでライバルの戦いぶりを見て研究するという機会が必要です。たぶん、今までの『カウンターストライク』の選手たちも同じ思いではないかと。
杉山:確かにそうです。
餅A:格闘ゲームは対戦時間が短くて、一発勝負だと思われがちですが、実は戦術の研究や経験の差が出ます。オフライン戦の経験が少ない。これが日本代表の弱さだと思います。海外で試合をすると、日本では見たことのない戦術がたくさんあるんですよ。
杉山:たとえばどんなことですか? 僕はいままで格闘ゲームについて、蹴るボタン・殴るボタンを押すタイミングの勝負、複数のボタンを組み合わせる大技の覚え方で差が付くと思っていました。でも観戦してみると、引き際や誘いの動作など、常に小さな駆け引きを繰り返していますよね。
餅A:相手が受け身を取る動作がありますね。ここである技をかけたあとでダウンさせて、次の技を仕掛けると受け身ができない、というパターンがあるんです。もしかしたらゲーム開発者も気づいていなかった現象かもしれませんが、現実にそういう事象が起こる。
杉山:アメリカの選手はそういう事例をたくさん見つけ出しているというわけですね。
餅A:知らなければ対応できないですね。ガードができない、ホールドができない。起き上がる前にそういう瞬間が一瞬ある。そこに技をぶつけていく。
杉山:それはキャラクターによって違うし、組み合わせでも違う。あれだけのキャラクターがいたら、組み合わせは膨大ですよね。
餅A:いま日本でそれに気づいているプレイヤーは3、4人くらいです。つまり、アメリカで互角に戦えるプレイヤーはそれくらいしかいない。
杉山:あれ? 餅Aさんはそれだけ詳しく知っているのに、どうして先日のWCG日本予選では負けちゃったんですか?
餅A:あれは…単なる練習不足(苦笑)。
杉山:そうか。理屈も大事だけど、練習も大事ですね。
餅A:でも、結果的には活忍犬選手が行って良かったと思います。
杉山:それはなぜでしょう?
餅A:2005年のWCGで活忍犬選手が優勝したときと今では、世界のレベルが違う。それを活忍犬選手も感じてくれると思うから。僕1人がWCGで負けて、「日本のレベルは低い、世界と差が付いている」と言っても、日本のプレイヤーは解らないんです。
杉山:餅Aが言ってるだけだろう、という感じでピンと来ないでしょうね。
餅A:だけど、他の人も僕と同じ経験をして、同じように感じて発言してくれたら、信頼性が増すと思います。2005年の優勝者である活忍犬が今年は勝てなかった。これは彼1人の問題ではないんです。日本のレベルの問題です。俺が行って優勝できなかった。彼もダメだった。その事実から日本の実情を感じ取ってもらいたいです。
■『バーチャ』と『DoA』の勢力は日米で逆転している