【ゲームニュース一週間】iPodと携帯ゲーム機の住み分け、企業とユーザーのホンネ

今週はダウンロードゲームの立ち位置に関する発言が話題となりました。

任天堂 Wii
今週はダウンロードゲームの立ち位置に関する発言が話題となりました。

Wedbush Morgan証券のアナリストであるMichael Pachter氏は、iPod Touchを「パブリッシャーにとっては、これまでで最も危険なもの」と警告。
『マッデン』や『テトリス』など既存シリーズのiPod版を出すことで、これまでに出た他機種版との価格差が発生、これがタイトルの価値を落とすとの考えを明らかにしました。

Pachter氏が警告するポイントは2つ。
1:他機種と同一シリーズのゲームがiPod Touchに出ると、価格差からユーザーの側に不公平感が生じる

2:ローティーン層に対し、アップルが低価格のゲームなどで囲い込みを行うと、iPod Touchから他のゲーム機に人が移行しない
では、価格差はどこから生まれるのでしょうか。
iPod TouchやiPhoneのダウンロードゲームは低予算でスタートでき、実験的なアイデアを盛り込め、在庫も流通コストもかかりません。Pachter氏が警告する価格差はこうした事情から実現できます。ダウンロードゲームは作り手にとって大きなメリットを持っているのです。

現在は一つのブランドを他機種・多方面に展開して育てて行く手法がメイン。
プレイステーション3やXbox360からWiiへと展開する『デッドスペース』シリーズやPSPでブレイクしWiiで新作が出た『モンスターハンター』シリーズなど枚挙に暇がありません。iPod TouchやiPhoneでの展開はゲーム会社にとって魅力的なものであり、既にバンダイナムコゲームス、カプコン、コーエー、スクウェア・エニックスなどが取り組みをスタートさせています。しかし、この手法が危険であるとPachter氏は警告します。では、指をくわえて有望な市場をみているしかないのでしょうか。それとも、iPod Touchのゲームと同程度に全てのゲームを値下げすれば良いのでしょうか。

有望な市場を手にしつつ、自社ブランドに影響を与えない方法が一つあります。
それはiPod TouchやiPhoneで独占ブランドを立ち上げることです。
独占であれば価格差は発生しませんが、立ち上げにはリスクもありますしアイデアも必要になります。価格差によるブランドへの影響を取るか、独占ブランドを作るリスクを見るか。どちらのリスクを取るかはメーカー次第ということになります。

iPod TouchやiPhoneで独占ブランドのアイデアを出す事自体は可能と思われます。
タッチ操作、傾きの検知、カメラやネットワークとの連動など独自の機能が多いためで、これらの機能を複合的にフィーチャーしたゲームを作ることで自然と独占ブランドになるのではないでしょうか。

一つのタイトルを繰り返しリリースすることでローリスクに利益を上げる。これは企業としての理想の一つですが、ユーザー側の理想とは合致しない場合もあります。折角ハードウェアに投資したのですから、独自のもので遊びたいというのがユーザー側の本音です。では、クリエイター側の本音はどこにあるのでしょうか。企業に近いものなのか、ユーザーよりなのか。Pachter氏の警告はクリエイターの姿勢をも問うているのではないでしょうか。

《水口真》

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