またサウンドにおいても、「無限に楽しめる音楽」というコンセプトのもと、プロシージャルなBGM制作が行われました。それを支えたのがセガ内製ツール「Sympathy(シンパシー)」と、CRI・ミドルウェアの製品群です。内製ツールとミドルウェアの組み合わせ方なども含めて、たっぷりと伺いました。
![]() | ![]() | ![]() |
![]() | ![]() | ![]() |
■参加者
酒井智史 『PSO2』プロデューサー。初代『PSO』からシリーズに参加。
小川卓哉 プランナー。『PSO2』ではアシスタントディレクター・サウンド企画担当で、サーバ周りの担当も務める。
小林秀聡 サウンドクリエイター。初代『PSO』以降、すべてのタイトルでサウンドを担当している。
今別府デニス幸生 プログラマー。『PSO2』ではサウンド、UIなどのシステムのプログラムを担当。
増田亮 プログラマー。『PSO2』ではUI、サウンドおよび関連ツールの作成を担当。
■聞き手
土本 学 インサイド編集長
CRI・ミドルウェア
■もっとオンラインに向き合ってみたかった
―――今日はよろしくお願いします。『PSO2』のプロシージャルサウンド表現については、CEDEC2012の講演「Phantasy Star Online 2におけるプロシージャルBGMシステム」でも発表されましたが、本日はその内容をふまえて、ミドルウェアとのかかわりなど、周辺領域についても、いろいろとお話をお伺いしていきたいと思います。
(※1)プロシージャルBGM:ゲームの状況に応じて自動生成されるBGM。決まったフレーズでBGMが変化するのではなく、フレーズの組み合わせ自体が変わるため、ダイナミックに変化する。
―――はじめに『POS2』開発の経緯について、改めてお願いします。
![]() |
酒井氏 |
―――オンラインに向き合うとは?
酒井: 最初からオンライン専用のゲームとして息の長いゲームにする、という意味です。それと共にPCをメインのプラットフォームとしました。セガはこれまでコンシューマ中心で、パッケージゲームを作ってきたため、かなり挑戦的なプロジェクトだったと思います。経営陣に企画のプレゼンをする時も、その点を意識しました。
―――『2』の「推しポイント」について教えてください。
酒井: 「飽きのこない無限の冒険を提供する」「オンラインRPGとして最高峰のアクションを目指す」「究極のキャラクタークリエーションで、自分だけのキャラクターが作る」という3点です。 僕らは「3つの革命」といっているんですが、最初からこの3点はぶれないように注意しました。
―――「飽きが来ない」というのは、どういうことでしょうか?
酒井: オンラインゲームは運営が重要だと言われますよね。もちろん、それはその通りで、『PSO2』でもさまざまなイベントや仕掛けを用意しています。ただ、昔と違って今はいろいろなオンラインのタイトルがありますし、ユーザの「消費」の速度も上がっています。それなのに運営の工夫だけでいいんだろうか。もっとシステム面でできることはないだろうか。そんな思いがあって、マップや敵がランダムに自動生成される、という仕組みを大胆に取り入れました。
また『PSO2』は、コンピュータRPGの元となった、テーブルトークRPG(※2)をモチーフにしています。テーブルトークRPGではゲームマスターが事前にシナリオを用意してセッションを開催するのですが、モンスターが強すぎてパーティが全滅したり、プレイヤーのダイス目が良すぎて強敵があっさり倒されたり、後々まで語りぐさになるような「伝説のセッション」がありました。そういうところも含めて、RPGの面白だと思うんです。
特にオンラインのコンピュータRPGでは、「あのゲームで、こんなことがあった」という体験を、友達と共有することが面白かったりします。そういう「仲間内で盛り上がるネタ」を常に提供できるゲームシステムって何だろうと。それが「インタラプトイベント」や「ランダムフィールド」といったシステムに繋がっています。
(※2)「テーブルトークRPG」…コンピュータを用いずに、会話とルールブックに記載されたルールに従って遊ぶゲームのこと。(例:「Dungeons&Dragons」など)
![]() |
公式ウェブサイト。「終わりなき冒険」がテーマ |
―――ユーザの「消費」のスピード、といいますと・・・?
酒井: 上がっていると思います。一方で作るスピードは落ちているんですよ。昔と比べて2~3倍くらいの労力がかかっています。開発チームの規模も拡大していますが、なかなか「消費」のスピードに追いつけないのが、悩ましいところです。僕も『PSO』ではデザイナーとして参加していましたが、当時は一人でモンスターをデザインして、モデリングして、テクスチャーを書いて、アニメーションしてエフェクトを作って、それが普通だったんですよ。でも今はみんな分業化されています。その結果、『2』では開発スタッフも前作に比べて2~3倍になっていますね。
■PS Vita版のことは考えずに作った
―――開発スタートはいつくらいですか?
![]() |
酒井氏 |
―――基本プレイ無料という点に驚きました。
酒井: できるだけ多くの人に遊んでほしかったんです。また月額課金だと登録ユーザ数の増減が運営側に与えるインパクトが少なからずありますが、アイテム課金はその辺がコントロールしやすい側面があります。だったら、最初から基本プレイ無料が良いだろうと。
―――会員数は増えましたか?
酒井: おかげさまで、滑り出しは順調です。これまで『PSO』シリーズはPSPでの60万本が上限でしたが、もうすぐ100万IDに届きそうです(※3)。アクティブユーザーも相当な数になっています。これだけ多くの会員数を抱えたオンラインゲームは、日本では珍しいと思います。もっとも、順風満帆というわけにはいかず、さまざまなトラブルの連続でした。こちらも日々対応しているんですが、サーバが繋がりにくいなど、まだまだ改善をしていかなければいけません。
(※3)インタビュー時点(2012年9月)。現在は100万ID突破。
―――PCだけでなく、Vita、スマホでの発売も決まりましたね。
酒井: 『PS』シリーズはPSPで大ヒットしましたし、ちょうどPS Vitaが登場しました。PCとPS Vitaの両方で遊べるタイトルは新しいし、オンラインRPGを広める上でも良いだろうと思いました。
またスマートフォンやソーシャルゲームのユーザにも、本格的なオンラインRPGをプレイしてほしいという思いもありました。『ファンタシースターユニバース』では「PSU Mobile」というモバイル専用サイトを作りましたが、アクティブユーザのほぼ半分が利用するくらい、人気があったんですよ。
大前提として、PCオンラインRPGを遊ぶプレイヤーって、今はかなり固定化しているんですよ。これ以上増えないんじゃないかという人もいるくらいです。こうした現状を、なんとか変えられないかと思いました。スマートフォン版は今冬、PS Vita版は来春発売予定です。東京ゲームショウで出展したところ、どちらも評判が良かったので、楽しみですね。
■トランステクノの感じをゲームでも出したかった